馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

クリスマスチャリティーバザール

Привет!

先週の日曜日、ラディソンホテルで「ディプロマティック・クリスマス・チャリティーバザー」が開かれました。ラディソンホテルの冬のバザーといえば!モスクワでも毎年行っていました。私がおととし行った時の記事はこちらです。 mickymm.hatenablog.com アスタナでもモスクワでも会場がラディソンホテルなのはただの偶然なのでしょうか。チャリティーに力を入れているのかな。ちなみにアスタナでのバザーは今年で11回目です。

モスクワでのバザーの主催はIWC(International women's club)でしたが、ここアスタナでは大使夫人の会が主催しているそうです。そのため「ディプロマティック」を冠しています。基本的には大使館の夫人会がブースに立つのですが、ここアスタナは日本人がそもそも少ないのに日本ブースは毎年盛況なので、日本人の夫を持つ人たちも手伝っています。私はモスクワでは各国のブースを回るだけでしたが、今回は売る側に立ったことでまた違う面白さを感じたのでここに書いていこうと思います。 日本ブースの様子。ここで寿司セットを売ります。ほかの国が(おそらくクリスマスなので)モールでかなり派手にブースを飾り付けている中、この屋台はとても目立っていました。会場をぶらぶらしているときに何人かから「日本の人だよね!今年も寿司は売ってる?カザフの寿司は美味しくないから、ここで食べる日本のお寿司が楽しみなんだ」と声をかけられるくらい人気でした。まだアスタナで寿司を食べたことはないのですが、ほかの国の人が食べてわかるくらいひどいのか。ついでに酒も説明をつけて売られていました。「日本の米から作られた伝統的なアルコール」という説明だったのですが、お客さんに「日本のワインはある?」と聞かれたときに返事に困ります。ワイン…ではないような。でもロシアには米から作られた「ビール」が売られているしなあ。

もちろん寿司以外にも、食器や、扇子、 それに小物などを売りました。 私はこの小物コーナーに立っていたのですが、便利グッズなど説明するのが大変でした。何語で話し始めたらいいのかから迷うのです。とりあえずカザフスタンの人かな、と思えばロシア語で、わからない、という顔をされたら英語で。向こうもこちらがロシア語を理解するかわからないので英語で質問してくるときもあるのですが、私の脳内の言語スイッチがうまく働かなくてロシア語で返してしまったり、知らない単語は英語にしてしまったり、かなりひどい接客だったような気がします。時々日本語を勉強しているカザフ人が突然日本語で話しかけてくれたり、小さい子供が買いに来て、最後にご両親に「『ありがとう』っていうんだよ」と言われて一生懸命日本語で話そうとしてくれたり、とても嬉しいこともありました。「日本語を習いたいんだけど、どこに行けばいいですか」や「日本にいる私の友達にメッセージを言って!ビデオに録るから」などの要求もありました。少し戸惑ったのは「Merry Christmas!」は日本語でなんて言うんですか、と聞かれたときです。「…メリークリスマス」と答えたのですがこれでよかったのでしょうか。

日本のものがほとんど手に入らないアスタナでだれが何を欲しがるのかが疑問だったのですが、多くの人が「日本の化粧品はないの?」と聞いてきたのが興味深かったです。化粧水は売っていたのですが、やはり乾燥するからかクリームを欲しがる人も後を絶ちませんでした。あとやはり「着物が欲しい」という人も多かったです。またユニクロのウルトラライトダウンジャケットを置いていたのですが、いくらこちらが「暖かいですよ」と言っても「‐30度まで耐えられる?」と聞かれたらぐうの音もでません。「友達へのお土産にしたいのですが、Tシャツはありますか?」という要望もありました。残念ながら「侍」と書かれたものしかなかったのですが、彼女はその場にあった侍Tシャツを買い占めていきました。どこのお土産だというのかしら。食器のほうでは、木製なのかプラスチック製なのか、念入りに確かめる人が多かったそうです。旧ソ連ではプラスチックに対する信用がなく、例えば熱いものをプラスチックの皿の上に置いたら悪い成分がしみだしてくると信じている人が多いからだとか。

いろんな人と会話するのも楽しかったのですが、ちょっとした間を見つけて周りのブースを見て回りました。モスクワよりも規模が小さかったのですが、みんな気合を入れて売っていました。結局食事以外で買ったのはこちら。 ウズベキスタンのカバンとジョージアの靴下です。どっちもこの一年で行った国やないか…。ウズベキスタンのはデザインがかわいかったから、ジョージアのハチャプリ靴下は現地で買ったものに穴が開いてしまったからです。それくらい気に入っていました。もう一つの伝統的な衣装がデザインされた靴下は気が付いたら手に取っていました。モロッコで試飲させてもらったミルクティーがとてもおいしかったので、バザー終盤で友達が買いに行ってくれたのですが、もう売り切れていて残念でした。近いうちにモロッコも行きたいです。

バザーのもう一つの目玉である「ラッフル」という宝くじの発表は午後3時から始まりました。各国の大使館が出した様々な商品(車や航空券からヨガなどのレッスンチケットまで)が当たるというもので、前日までに一枚1000テンゲで購入できました。発表を聞いていると260ほど商品があったようで、チャンスは多いようです。今年は私は当たりませんでしたが、来年は何か当たればいいな。

日本ブースの隣はキューバのブースで、テンガロンハットをかぶった女性がカラオケで呼び込みをしたり、売っているモヒートをおそらくキューバ大使が試飲して「アルコールが足りない!」とダメ出ししたかと思うとフロアで踊りだしたり、とても賑やかでした。このモヒートを作るのに、あの1リットルのレモン汁を使っていて、私はひそかに「業務用やんか」と我が家の冷蔵庫に眠るレモン汁に突っ込みを入れていました。

ロシア語と英語で売るのはとても大変でしたが、いい経験になりました。来年までにもっと勉強しなければ。

Пока!

クリスマスツリー

Привет!

ついに12月に入りましたね!もう今年も残すところ30日足らずかと思うと、時が経つ速さに驚きます。12月は色々とイベントがあるので忙しくなりそうですが、寒さに負けず頑張りたいです。

12月に入った瞬間に街中でもツリーが飾られ始めました。 これはケルエンのフードコート。かなり巨大でしたが、下に小さなお家が飾ってあって可愛かったです。ケルエンの前にもツリーが置かれていて、バイテレクとコラボしていました。

我が家もそろそろツリーを出したくなってきました。各地で集めたクリスマスツリーの飾りはモスクワから持ってきたのですが、ツリーは重くて置いてきたので、お店でツリーを探します。豚肉もスーパーにないようなイスラム教の国です。モスクワでさえちょうどいいツリーを見つけるのに苦労したんだから、カザフではもっと大変かな、早めに探し始めないと、と思いながら11月後半におもちゃ屋さんに入ると、これでもかというくらいツリーが並んでいました。

イスラム教の国であると同時に、旧ソ連圏でした。ツリーは新年の象徴です。ツリーなくして年は越せない、とモスクワにいるときに聞きましたが、カザフでもそうなのか。とりあえず友達と旦那とスーパーに行った時に、ツリーを購入することにしました。

スーパーでは陳列棚の間を縫うように、ツリーが並んでいました。 いつもの通路がちょっと狭くなって邪魔…ではないのですが、ツリーを探しにきた私たちにとっては少し不便です。あっちのツリーとこっちのツリー、どっちがいいか比べられないのです。時には、陳列棚の陰に隠れて 小さなツリーも立っていたりして(友達は「はぐれツリー」と名付けていました)、文字通りスーパーの端から端まで歩き回ってツリーを見ました。いざ買うものを決めると、店員さんにお願いして包んでもらい、私たちはその値札だけレジに持っていってお会計します。他にも買うものがあったので、全てをレジに持っていくと「ツリーのお客さんがきた」「ツリーの人だって」「ツリーは用意できてる?」「ツリーの人が会計終わった」とにわかに店員さんたちがざわざわし始めました。

やってきたのはビニールでぐるぐる巻きにされた組み立て式ツリー。分解されて長さは80cmくらいでしたが、それでも大きかったです。

家に帰って早速飾り付けてみました。どうやらモールや電飾に加えて、上の星までモスクワに置いてきてしまったことに気づきます。仕方がないので一昨年の年末に買った、酉年用の鶏人形を置いておきました。

そのスーパーにももちろん飾りはあったのですが、次の日に通ったおもちゃ屋さんで足りない飾りを買います。 なぜかそのお店には星は置いておらず、ロシア式の上の飾りしかなかったのでそちらを買いました。これはロシアにいる時から見かけた飾りなのですが、なにを象徴しているかなど調べても、これの名前が「ピカ」だということしかわかりませんでした。ちなみに1916年、第一次世界大戦の時にロシアにとって敵国だったドイツの真似はいけないとクリスマスツリーは禁止になったそうです。翌年、1917年に起こったロシア革命ではボリシェビキ党が「無神論」を唱えたため、そのままツリーは禁止。1928年に「新年の飾りとして」復活しますが、宗教禁止は続いていたために、ツリーの上の星はベツレへムの星としてではなく、共産党の象徴の星として飾られたそうです。 ピカの起源や何のためかは分かりませんでしたが、ロシアの有名人に「ツリーになにを飾りますか?」と聞いたインタビュー記事に多くの人が「ピカは必要不可欠!」と答えていました。

アスタナにいる間は、毎年このツリーと年をこそうと思います。

Пока!

ローストビーフカフェ

Привет!

今私が使っているタクシーのアプリは、運転手からメッセージが来た時にスマートフォンの設定言語に合わせて自動翻訳しています。そのおかげで車に乗った瞬間に「日本人なんですか!?」と聞かれることも多々あります。たいていが「~(場所)で待っています」というものなので変な翻訳になることは珍しいのですが、昨日来たメッセージは「入り口の前に立っている、ガソリンスタンドの遊牧民で」となっていました。突然出てきた遊牧民にカザフにいることをまざまざと思い知らされます。とりあえずガソリンスタンドの入り口にいることはわかったので無事に合流できたのですが、遊牧民が気になります。メッセージの下にロシア語の原文が書かれていたので見てみると、どうやらНомад(ノマッド)というガソリンスタンドだったようです。この単語を辞書で調べてみると「遊牧民」。ビンゴです。そういえばこの国に来るのに「遊牧民」というロシア語を知りませんでした。そういう目で見てみると街中でNomadやらНомадやら、そんな名前が付いた会社やお店を多く見かけます。これ全部遊牧民だったのか。

先日、お友達と気になっていたレストランへ行きました。その名も「ローストビーフ・カフェ」。聞くところによると去年夏に開店したときはローストビーフがメニューに存在しなかったそうです。叶うならば、タイムマシンにのってその時の店員さんになんで店名にローストビーフとつけたのか聞きたいです。上の写真でもわかるように店内はとてもお洒落。週末の12時過ぎでこのお客の入りは少し心配になりますが、アスタナではレストランが込み合うのは13時以降なのです。そしておそらくお客さんが少ないもう一つの理由はこのレストランが入っているビルの外観によるところもあると思います。 一見するとただのオフィスビルです。中にレストランがあるといわれても、社員食堂のようなものを想像してしまいました。実はこの写真の中に店名が書かれた看板があるのですが、見つけられますか?答えはビルの左下にある小さな茶色い四角のものです。もう少し自己主張するべきではないでしょうか。
案の定、別の場所で用事を終えて合流しようとした旦那が道に迷いました。タクシーで来たにも関わらず、看板が見つけられずに反対方向に歩いてしまったそうです。私も始めてくる地域だったので、彼からレストランの場所を尋ねる電話がかかってきても上手く説明できず、ついにはお水を入れに来てくれた店員さんに電話を替わってもらいました。突然説明がロシア語になって驚く旦那と、彼がどこにいるかわからず戸惑う店員さん。横で二人の会話を聞きながら、申し訳ないことをしたと思う私。旦那がついに店内に入ってきたときは、二人は昔からの知り合いのような顔で握手を交わしていました。

メニューを開いてとりあえずローストビーフと名の付くものを全部頼みます。 こちらローストビーフサラダ。ソースが甘酸っぱくておいしかったです。 ローストビーフピザ。マルガリータピザにローストビーフを乗せただけのように見えますか?私にもそう見えます。でも相性は抜群でした。

…以上です。ローストビーフは二種類ですが、ステーキの種類が多くておいしいそうです。お腹がすいている旦那は、メニューに「うどん(удон)」という文字を見つけて嬉々として頼んでいました。ローストビーフカフェなのに。 運ばれてきたものは、どちらかというと「うどん」というより「そば」です。しかも焼きそば。味はおいしかったのですが、うどんではありませんでした。

しかしとにかく店員さんのサービスが良く、突然電話を押し付けても最善を尽くしてくれるし、運ばれてきてすぐに写真を撮ろうとすると「最後の仕上げがあるからちょっと待って」と言ってくれるし、お水は無料でコップが空になったらすぐに注いでくれるし、好感度がとても高かったです。なのでデザートもそこで食べました。

メニューで気になった「チーズケーキ〈アイス〉」。店員さんに「これは何が出てくるんですか?チーズケーキ?アイスクリーム?」と聞くと「冷たいチーズケーキです」とのこと。 確かに。ほとんど凍ったチーズケーキでした。これ以外のデザートの種類も豊富で、ちょっとお茶をするだけでもとてもいいと思います。心配していたお客さんも13時30分を過ぎるとどんどん増えてきて、最終的にはほとんどのテーブルが埋まっていました。

おすすめのレストランです!

Пока!

D10 World

Привет!

気が付けば今週末はもう12月なんですね。10月1日にこちらに来たので、11月の初めのほうは「アスタナに来てどれくらい?」と聞かれたときに「一か月です」と答えていたのですが、そろそろ通用しないということに気が付いたので昨日から「二か月くらいです」に変更しました。

先週のことになりますが、MEGA Silkway(ショッピングセンター)で開催されていた「D10 World」に行ってきました。 カザフスタンに赴任が決まった日、それはもうインターネットで「カザフスタン」について調べました。とりあえずウィキペディアで国の基本情報を押さえて、アスタナを画像検索してはその近未来感に驚き、ロシアでよく見ていた旅番組のアスタナ編を見て「人が少ない!」という情報にすこし安堵しつつ…というところで「エンターテイメントは?」ということが気になりました。調べている中でわかったのが、カザフスタン出身で2014年のソチオリンピックで銅メダルを取ったデニス・テン選手が毎年「Denis Ten & His Friends (Денис Тен и Его Друзья)」というアイスショーをアスタナで行っている、ということでした。デニス・テン選手といえば、去年モスクワで行ったロステレコム杯のエキシビションで見た選手です。「カザフスタンからもスケート選手が来ているのか!」と驚いたのをよく覚えています。 mickymm.hatenablog.com モスクワでアイスショーの楽しさに気づき、しかもこのショーではデニスと交流の深い浅田真央選手や高橋大輔選手、織田信成選手もよく参加していると聞いたので来年が楽しみで仕方ありませんでした。

そんな中、7月19日、イギリスのホームステイ先で晩御飯を待っている間にふと携帯電話を見ると、デニスが亡くなったというニュースが飛び込んできました。アルマトイで彼の車のミラーを盗もうとした暴漢に抵抗して刺されたそうです。突然の訃報に少し呆然としてしまいました。それから事件について調べれば調べるほど、彼がどれほどカザフスタンを盛り上げようと頑張っているか、いろんな人からの人望が厚いか、そしてどれほど才能にあふれていたかがうかがい知れて、もっと早く注目しておくべきだった後悔しています。先述したアイスショーも、カザフではプロのフィギュアスケートを見る機会がほとんどないから企画されたものだそうです。

しかし今私がいるのはカザフスタン。何かイベントがあれば行こうと思っていたところにD10 worldの開催のニュースが舞い込んできました。カメラの才能もある彼は、自分の公式アカウントとは別にD10 worldというアカウントで自分で撮った写真を公開していました。この展覧会では彼の演技の映像や写真、歌(自分で曲を作っていたのです)、そして彼が撮った写真などが展示されています。入場料は無料でした。

会場に入るとすぐに聞こえてきたのが映画『グレイテスト・ショーマン』のオープニング曲。今年のアイスショーのオープニングでゲストスケーターと共に披露したのがグレイテストショーマンだと聞いていたので、これか!とうれしくなりました。今回の会場の真ん中にもその時に彼が着用した衣装が展示されています。 バーナムさんそのままだ…。会場奥のスクリーンに、このアイスショーの様子といくつかの大会での演技、ファンと触れ合う様子(日本からのファンもたくさん写っていました)やインタビューなどがずっと流れていました。前に椅子が置いてあるのでずっと見られます。演技は本当に素晴らしいものでした。かなりのジャンプ力と、優美な動き、そして高い表現力。

入り口すぐのところにはこの展覧会の説明と彼の経歴が英語、ロシア語、カザフ語で書かれたパネルが置かれています。そのパネルの横に椅子とマジックペンが置かれていたので何だろうと後ろに回ってみると、 ファンからのメッセージが。一部は重ねて書かれているので読めなくなっています。人のメッセージを読むのもいかがなものかと思ったのですが、すこし目を向けただけで英語、ロシア語、カザフ語はもちろん、中国語や韓国語なども見えました。そして「Sorry us, bro(私たちを許して)」という文字も目に入ってきます。今回の事件は、カザフの警察の腐敗など(車の部品が盗まれる事件が多発しているのに放置していた)も明るみに出しました。彼は亡くなってからも国を変えていく力を持っているのかもしれません。 入って左手の壁には彼の写真と、著名人や友人からのメッセージが貼られていました。写真で民族模様の入った衣装を着ているように、韓国系カザフ人である彼はカザフスタンという国を背負っていました。ソチオリンピックでは唯一のカザフのメダルだったこともあり「カザフスタンの英雄」と呼ばれています。

また、入って右手奥には、彼のインスタグラムの動画を見られるコーナーも。そして右手手前には、彼が撮った写真の展示コーナーが。 「自分をどのように表現するか、どんなふうに夢を追うか、そういうものが今後数年どんな世界で生きていくかに影響する(意訳)」
左上に高橋大輔選手もいますね。

スケートシューズも飾られていました。かなり使いこんでいるのがすぐにわかります。

出口のところで、寄付をお願いされました。5000テンゲを寄付するとTシャツが、50000テンゲでパーカーをプレゼントしているそうです。心ばかりを寄付の箱に入れると「ここに記帳してくださいね、そしてよかったらお菓子をどうぞ」とお姉さんに言われます。少し冷めているけれどふわふわな揚げパンの味はしばらく忘れないだろうな、と思いながら帰途につきました。まとまらない考えをしながら、バス停まで歩きます。あまり広くないスペースだと思ったのですが、気が付けば1時間も展覧会の中で過ごしていました。会場の中は、彼の温かい人柄に包まれているようでした。もう少し早く知っていればなあ。

Пока!

カザフスタンのお土産

Привет!

時々私のスマートフォンにアルファベットで書かれた、でも英語ではないメッセージが送られてくるのですが、迷惑メールだと判断して読んでいませんでした。しかし先日、あまりにも毎日来るので解読を試みてみると、文中に「20m/s」という文字が。そのほかの部分も声に出してみると聞きなれた単語があります。もしやこれはロシア語?そしておそらく「明日は秒速20メートルの強い風が吹くよ」という当局からの警報だったようです。

そんな強い風が頻繁に吹くアスタナでは、近頃ずっと雪が降っています。気温自体はそんなに低くないのですが、風と雪のコンボはかなり体に堪えます。ある時そんな吹雪の中タクシーにのって運転手と他愛のない話をしていたのですが、彼がぽろっとこぼした「でもまあ雪が降るってことは暖かいからまだ秋だね」という言葉に衝撃を受けました。目の前に広がっている真っ白の世界を見ながら「秋」と言いますか!

さて、ここは遊牧民の国です。「土地のもの」というものがあまりないことは絵葉書を見つけるのに苦労したことからも察しが付くのですが、

mickymm.hatenablog.com

同じ理由でお土産物屋さんもほとんど見かけません。同じ中央アジアの国であるウズベキスタンに行ったときは至る所にお土産物屋さんがあり、またそこには多種多様な特産品が置かれていたので、カザフスタンも同じだと思っていました。そのため、ユーラシア・バザールやアルチョムバザールでお土産を扱っているお店を見つけた時には少し驚きました。 ユーラシアバザールのお土産物屋さん外観。

しかし、中はほとんどアスタナの写真や絵が描かれたお皿か、民族衣装、あるいはフェルトのスリッパやカバンなどばかりで、カザフスタンに来たことがない人にお土産として渡しても喜ばれるかは甚だ疑問です。挙句の果てにマトリョーシカやホフロマ塗り、グジェリ焼きなどロシアでよく見かけたものが並んでいて「そういえば昔はソ連の一部だった。ロシア語で話してるし」ということに思い至ります。お土産屋さんで持って帰りたくなったのはフェルトでできたユルタの模型か、民族模様が印刷されたひざ掛けくらいでしょうか。

一方でバラまきができるようなチョコレートの種類は豊富で、スーパーに行くとカザフスタンの地形や国旗が印刷されたチョコレートは様々なサイズが並んでいます。やはりこの目が覚めるような青色は綺麗ですね。最近晴れていないのでこんな空が見たいなあと思う日々です。

変わり種でいけば、馬乳チョコレートもあります。 食べたときは苦いと思いましたが、それはこのチョコレートがカカオ70%のビターだったからで、おそらくもう少しミルク分が強いものもあるはずなので探してみます。馬の乳は思ったより癖が強くはありませんでした。

馬といえば、私はこの馬の凛とした立ち姿が好きなので馬グッズも集めたいのですが、あまり見かけません。そんな中、どこかでスターバックスのカザフ限定カップに馬が描かれているという情報を見て、さっそく探しに行きました。しかしどれほど探しても、 こんな風に「カザフスタン」が大きく書かれているものしか見つけられません。ある日出来心でこのカップの裏側を見てみたところ 全く違う世界が広がっていました。まるでアスタナのようです。都会のすぐそばに草原が広がっている感じが。スターバックスのカップを集める趣味はなかったのですが、これには一目ぼれして購入。サイズはとても大きいので、4500テンゲ(1500円ほど)くらい払っても惜しくないと個人的には感じます。ちなみにYOU ARE HEREコレクションはもっとかわいらしいタッチでビルと馬が描かれていました。

ほかにもバザールのお茶屋さんでみかけたのがこのユルタに入ったお茶の葉。実際のユルタにはないほどカラフルで目にも楽しく、そんなに大きくないので数もたくさん買えそうです。 お酒好きの人には、カザフスタンで作っている「アルバワイン」をどうぞ。甘くてとてもおいしいです。これはスーパーに並んでいたものですが、専門店もあるそうなので今度行ってみたいと思います。 いまのところ見つけられたお土産はこのくらいでしょうか。来年友達が来てくれたり、私たちも一時帰国したりするので、それまでにお土産をたくさん見つけておかないと…!

Пока!

蛍光灯を探して

Привет!

昨日からしっかり雪が降ってしっかり積もっています。ちょっと人が通っていないところを歩こうと思うとくるぶしくらいまで足が沈んでびっくりしました。こんなふわふわの雪が降るんだ。

洗面所の鏡の上についている電気が切れました。モスクワにいるときから電気が切れるといいことがなかったので(詳しくは下の記事をどうぞ)、 mickymm.hatenablog.com mickymm.hatenablog.com

一瞬そのままにしておこうかと思いましたがとりあえず慌てず騒がずマンションの管理人さんを呼びます。うちのマンションは幸運なことに専用のサービス会社が入っているので、家に関する困ったことはそこへ電話すればとりあえずなんとかなるそうです。実際、この時も電話してから1時間足らずという速さで駆けつけてくれました。これは期待できそうです。

私は家にあった換えの電球を用意して、来てくれたお兄さんを出迎えましたが、彼がかなり身軽なことに疑問を覚えます。問題の洗面所に通すと、彼は天井を見上げるなり「これはその電球ではダメですね。合うものを買ってからもう一回電話をください」と言い放ちました。

帰ろうとするのを押しとどめて「どんなのを買えばいいんですか」「長いのです。36を買ってください」「わ、分かりました。36ですね」「それでは」…そんな会話を最後に彼はドアから出て行ってしまいました。今思い返せば、ここで見本となる蛍光灯を外してもらうべきでしたが、後悔先に立たず。

かくして、私の蛍光灯を探す旅が始まりました。先日絵葉書を探したり手袋を探した時と同じように、スーパーや日用品店など、とりあえず置いてありそうなお店に突撃しては「蛍光灯ありますか?いや、電球じゃなくて長いやつです」という日々が3日ほど続きました。だいたいのお店の照明は蛍光灯を使っているので、指差しながら「あれみたいなのってどこで売っていますか?」と聞いても「さあ…?」という答えしか返ってきません。みんなその電気が切れたらどこで買うの?

ある家電屋さんはとても優しく、近くで取り扱っているお店を調べてくれました。携帯電話の地図アプリを起動するよう私に言うと、そのお店をアプリ上で表示してくれます。その店員さんには丁寧にお礼をいい、その場所へ行ってみることに。 …え、ここ?騙されたのではないか、と思いつつテナントの一つに小型の家電屋さんを見つけたので入りました。先ほどのアプリを見せると「たしかにここだけど、蛍光灯は置いてないね」とのお返事。

もう私一人でできることは全部しました。お手上げです。アスタナ在住のグループに救難信号を出すと、お友達の一人が照明屋さんに連れて行ってくれることに。持つべきものは友です。バスに小一時間ほど揺られて旧市街にあるお店に着きました。 照明がたくさん並んでいます。実際にはこの倍くらいの広さの店内でした。ここなら確かにありそう。電球や蛍光灯は壁に見本が展示されているので、その中から欲しいものを店員さんに出してもらいます。 長い蛍光灯もあります!ただ、問題は必要な蛍光灯の形がわからないということ。私が持っているヒントは「36」という数字だけです。そもそも単位がわかりません。私は36cmかと思ったのですが、お友達と店員さんは36ワットだろうということで一致しました。36ワットの蛍光灯は1m近くの長さがあるものだけしかありませんでした。どう見ても長すぎるのですが、60円ほどだったのでとりあえず買ってみました。もしかしたら合ってるかもしれないし。

家に帰るとやっぱり長さが合いませんでした。次の日、たまたま新市街の方を歩いていると「電球屋」という看板が目に入って、吸い込まれるように店内に入ります。店員さんに状況を説明すると、確かに36ワットの蛍光灯は長いものだけだからとりあえず36cmのものはどうかと提案されました。120円だったので、物は試しと買ってみました。 長さ比較でスリッパを置いてみました。長い方が1回目に買ったものです。

その日は、たまたま大家さんが来る日だったので、管理人さんには電話せずに大家さんに買ってきた蛍光灯を見せながら相談すると「明日電気屋さんを連れてくるね」と言ってくれました。…初めから大家さんに相談すればよかったのようです。

この時点で電気が切れてから1週間経っていました。洗面所の電気がつかない生活にも慣れてきたのですが、電気屋さんが来てくれたので見てもらいます。蛍光灯を外してみると 下の方です。そもそも二本が繋がっている、これまで買ったものとは全くの別物でした。写真の上に写っているものは二つ目に買ったものですが、それよりも実際短いし、表示を見ると55ワットです。管理人さんの言った36とはなんだったのか。

結局家になかったので、大家さんと電気屋さんは「蛍光灯買ってくるね」と出て行ったかと思うと30分で帰ってきました。私の一週間は30分で片付く話だったのか。自力でなんとかできることと出来ないことがあること、聞ける人がいる有り難さを身に染みて感じました。

今は無事に新しい蛍光灯が洗面所で煌々と光っています。文明の利器万歳。やっぱり明るい方がいいですね。

Пока!

ボヘミアン・ラプソディー

Привет!

ついにカザフスタンで映画デビューしました。私にとってロシアで初めて見た映画だった「ファンタスティックビースト」の二作目がちょうど今公開されていて、二年で映画に行くのもかなりハードルが下がったことを思うと感無量です。と、こう書くと見に行ったのはファンタスティックビーストのようですが、今回見たのはボヘミアンラプソディーでした。そしてこの国でクイーンの、というよりはフレディ・マーキュリーの物語を見たことで思うところがありましたが、それについて書こうと思うとどうしても内容に触れるので、これから見に行くから一切情報を入れたくない、という方は見終わった後にもう一度来てください。そしてまだ見ていない方はとりあえず映画館に行ってください。いい映画でした。 アスタナには映画館が8つあり、そのうちの2館がIMAX上映を行っています。いろんなレビューを見ていると「とりあえずいい音響で見て」という意見が多かったので、ハンシャティールの近くにある「サリヤルカ」というショッピングセンターの中の映画館へ行きました。カザフスタンでの公開が11月1日だったので、かなり日もたっているからか二館とも上映は夕方6時以降のみ。それでも日に3,4回は上演していました。ロシアと同じ料金設定で、曜日や公開からの期間によって値段は変わります。ここでは1200テンゲ(400円)でチケットが買えました。え、400円でIMAX見ていいの?本当に?チケットを買うときには「ロシア語ですがいいですか?」と聞かれます。この映画館は英語でも上演しているので(たぶんロシア語字幕で)確認されたのだと思いますが、これまで映画を見に行くときは問答無用でその国の公用語だったので、言語を選択できるのが新鮮に感じました。ちなみにモスクワにも英語上映をしている映画館があるそうです。

各シアターの扉には眼光鋭いカザフスタンの戦士がこちらを見て立っています。カザフ映画のワンシーンなのか、このために撮られた写真なのかはわかりませんでしたが、入場開始まで待っている間はあまり落ち着きませんでした。 この扉以外は日本やロシアの映画館と何ら変わりはありませんでした。公開から20日近くたっているのに1列目以外はほとんど満席。クイーンってカザフでも人気なんだ!映画の評判サイトを見ているとかねがね高評価なので、もしかしたら評判を聞きつけた人たちなのかもしれませんが。とりあえず期待している映画に観客がたくさん入っているのは喜ばしいことです。上映前の予告はほとんどロシア映画で、戦争映画やホラー映画、いつもこの時期に公開している「クリスマスツリー(ёлка)」の最新作などでした。カザフのコメディ映画もありました。

さあ、20世紀フォックスのファンファーレ…ではなく、かのクイーンのメンバーが奏でているという20世紀フォックスのテーマがなって、気分が高揚します。本編が始まって食い入るように見つめていると、突然目の前を人が通りました。それ自体は別にあることなのでいいのですが、その人はあろうことか私の横で立ち止まると、隣に座っていた人に「ご注文のドリンクをお届けに来ました」というではありませんか。声量を落とすこともなく。映画館のスタッフとしてもう少し映画に敬意を払ってほしいなあ…と思いつつも、また映画の世界に戻ります。それ以降も「ボヘミアンラプソディー」を収録しているシーンで立ち上がってドリンクを買いに行く人がいたり、メンバーが喧嘩しているシーンでポップコーンをもって戻ってくる人がいたり、みんな自由でした。確かにお腹がすく時間ではあるけれど。そういえば、映画の前に「マナーを守りましょう」みたいなCMって流れなかったな。

そして何より驚いたのは、笑うタイミングです。確かにどこで見ても自分と笑うタイミングが違う人はいます。ここは日本ではないし、明らかに画面の中で笑わせるようなことを言っているのに私は理解ができなかったということもよくあるので(そういうタイミングの違いも実際に何回かありました)、ある程度は覚悟をしていました。しかし、フレディ・マーキュリーを描く上で彼が同性愛者だったことを抜きにはできません。そして旧ソ連圏と一概には言えませんが、モスクワでもカザフでも同性愛はあまり受け入れられていません。そういえばディズニーの実写映画「美女と野獣」もちょっと同性愛に関連した表現があるというだけで、PG‐16のマークがついていました。 mickymm.hatenablog.com

今回の映画は、一度2010年に企画が持ち上がったのにもかかわらずつぶれています。製作者や役者やクイーンメンバーの意見が食い違ったためです。その中の一つの争点に「年齢制限がつくかどうか」というものがあったそうです。メンバーは全年齢対象を目指していました。今公開されているものは日本では年齢制限がついていませんが、カザフでもロシアでも18歳以上の年齢制限がついています。とはいっても、行為をしているシーンがあるわけではありません。男性同士のキスが二回あるだけです。そしてドラッグも吸っているシーンはなく、示唆されるにとどまっています。私が見た回では、このキスシーンで爆笑が起きたのです。それらのシーンはどちらも気持ちが高ぶって思わずキスしてしまった、というような状況で、決して面白おかしく描かれていたわけではありません。ここで笑うのか…というのが一番びっくりしたことでした。

さて、私自身はクイーンの熱狂的なファンではありません。中学生で初めて英語に触れた時たまたま両親が聞いていたDon't Stop Me Nowのあまりのリズムの良さに「歌えるようになりたい!」と思い、毎朝聞いていたら隣の部屋にいた弟まで覚えてしまった、というようなエピソードくらいしかありません。それ以降ずっとアルバムJewelsの曲しか知りませんでしたが、映画を見に行くことにしてからは予習を兼ねてYOUTUBEで聞いていました。なんとYOUTUBEにはクイーン公式が全曲アップしてくれているのです。
映画自体はとてもテンポが良く、なおかつそれぞれのキャラクターに感情移入しながら見ることができました。ほとんどのレビューで書かれていますが、俳優さんたちの演技の凄さ!とくにギターのブライアン・メイは本人がタイムマシーンでやってきて演じているのでは、というくらい予習で見ていた本人にそっくりで、全く違和感がなかったです。おそらくクイーンがもとから大好きで、いろんなエピソードを知っている人には物足りなかったり、時系列が違っているのであまり入り込めないかもしれませんが、一本の映画として私は大満足でした。そして周りの観客に邪魔されようが構わず、映画の世界にどっぷりつかっていたので、最後のライブシーンはいろんな感情がこみあげてきて、思わず涙していました。歌詞を知っていたので余計に物語とリンクし(その効果を上げるために時系列を変えたのだと思いますが)、周りの観客と一緒に「We are the Champions」に耳を傾けているときなどは周りからもすすり泣きが聞こえてきたりして、本当にクイーンのライブ会場にいるような一体感を味わえました。そこで幕がおり、そのあとのクイーンやフレディ・マーキュリーについての字幕が出た瞬間、劇場の照明が点きました。何事もなかったかのように立ち上がって帰り支度を始める人たち。え、いや、さっきまでみんなでライブで盛り上がってたやん。みんなで心の中でこぶし振り上げてたやん。一体感を感じてたのは私だけだったのだろうか…と思っているとエンドロールと一緒に本物のクイーンのDon't Stop Me Nowのミュージックビデオが流れてきました。余韻に浸りたかったので、掃除のお兄さんが入ってきて掃除を始めようが知らぬ顔で席に座ってみていると、やはり同じような考えの人がもう4,5組席から立てずに映像に見入っています。君たちこそチャンピオンだ!

あとやはり、歌詞はロシア語で字幕を出すべきだったのではないでしょうか。日本では出ているのかな。それでもほとんどクイーンを知らない旦那も「ライブシーンは感動した」と言っていたので、いろんな人に響く映画なのではないかと思います。

長くなってしまいましたが、このあたりで! Пока!