馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

アスタナ万博2017②

Привет!

前回の記事の続きです。 mickymm.hatenablog.com

8階あるパビリオンのうち、まだ上から二階分しか紹介できていないので、すぐ本題に入りたいと思います。6階のテーマは「太陽エネルギー」だということは、フロアに入った瞬間に分かりました。 半球でもかなり大きな太陽の模型が鎮座していたのです。横には世界各国の太陽にまつわる神話の紹介が。エジプトやギリシャなどの有名どころと共にもちろんカザフスタンについても説明が書かれていました。アルマトイから150㎞の場所で、世界で最も古いと思われる太陽神のようなものが岩に描かれているのが見つかっているそうです。 写真の一番手前に書かれている絵がそれです。 太陽の模型の中には入れるようになっており、中では太陽の表面の温度や太陽が地球に与える影響などの情報が映像とともに流れていました。太陽の中を通り抜ける形で外に出ると、地球の模型が出迎えてくれます。地球儀は自転をし続けていて、太陽の光が当たらない裏側(夜になるところ)は街の明かりが点くので、都市部が一目でわかるその技術力の高さに感心してしまいます。 ソーラー電池で車を動かそうのコーナー。上からの光を、鏡の反射をうまく使って車の模型に当てると車が動くのですが、動き方があまりにも単調なので誰もいないときに鏡を触らず見ていると自動で車が前後していました。下にモーターがついているのかもしれません。発想は面白いのに。

5階のテーマは「風のエネルギー」です。フロアに入ると先ほどの太陽の下半球が出迎えてくれました。 下から見ても大きいな。風は目に見えないので、今のところ視覚的には太陽の存在感が最も大きいです。少し先へ進むと何やら数字が書かれたコーナーが作られていました。7の前にだけ鉄の棒が立っています。とりあえず3の前に立つと強い風が吹いてきました。ああ、そういえばここは風エネルギーのコーナーだった。この数字は風の強さか。5の前に立つと「暴風」という言葉が頭の中を流れていきました。ということは、7はもっと強いのか…もしかしてあの棒は飛ばされないようにつかまるためのもの!? 7の前に立つと風の音で何も聞こえなくなり、どうやってここから出られるのかも分からなくなりました。必死の思いで外へ出ると、それぞれの風の強さが票にまとまっていました。3は風速12-19㎞/時、5は29-38㎞/時、7はなんと50-61㎞/時だそうです。髪型を崩したくない人はここに入るのをお勧めしませんが、TMレボリューションごっこを安全にするにはぴったりの場所です。

4階は「バイオエネルギー」。理科が苦手だった私にはあまりピンときませんでしたが、ここもフロアに足を踏み入れた瞬間にだいたい分かりました。 床は区切りごとに様々な種類の穀物が敷き詰められています。ほかには研究室や実験室風のスペースが作られており、たくさんのフラスコや植物が並んでいました。またこの階にはカフェがあるので疲れた人にはお勧めです。

3階は「運動エネルギー」がテーマ。実は3,4階が吹き抜けになっているところに大きな器具が設置されていて、二人のお兄さんが丸の中で歩いたり、丸の上で走ったりすることでこの巨大な器具を動かしているのが4階から見えていたのでとても気になっていました。 1時間に一回なのか、それともお兄さんたちの気まぐれなのか、いつこのショーが開催されているのかはわかりませんが、丸の上で縄跳びをしようとして失敗するなど何度かヒヤッとさせられました。ほかにもこの階には自転車を漕いで発電量を競ったり、振り子の原理を紹介されていたり、体重移動によってボールを動かすようなゲームがあったり、参加型の展示が多くとても楽しかったです。

2階は「水エネルギー」。入ってすぐの水車が目を引きます。 世界各地の水力発電のダムが映像で紹介されていたり(日本の黒部ダムもありました)、海上で作られるエネルギーの紹介があったり、できるだけ多く水を汲んでエネルギーを作り出すコーナーなどもあり、このフロアも楽しかったです。ところどころ去年の万博開催時には使われていたんだろうな、というような道具やカウンターなども散見されましたが、十分楽しめました。

ようやく1階に戻ってきました。前回書いた通り、この階だけはエネルギーの紹介ではなく国の紹介です。ユルタの中に入ると、壁に草原を馬が走っている映像が映し出され、民族的な楽器や衣装が展示されていました。一番奥にあるのは、なんとバイテレク。 そう、あの町の中心地にあるタワーのもとになった神話上の「生命の樹」です。この木は世界の上部と、真ん中と、下部をつないで人間の長い歴史を普遍的なものにするものだそうで(北欧神話のユグドラシルのようなものでしょうか)、世界の上部に住む「サムルーク」という魔法の鳥が毎年木の上に黄金の卵を産み落とし、それを食べるために下部に住む「アイダハール」という悪いドラゴンが上にやってくるそうです。ここで真ん中にいる人は「サムルーク」つまり善か「アイダハール」悪かを選ばなければならない、という神話だそうです。ちなみに説明書きには最後に「善か悪を選ばなければなりません。正義をとって悪いドラゴンを倒すのです」と選択の答えまで書いてありました。

パビリオンは堪能したのでそろそろ帰途につきましょう。お土産売り場ではあれだけ探した絵葉書が置いてありましたが、15枚入りで2000テンゲ(660円ほど)と少し高めでした。お土産物屋さんは有人と無人(自動販売機)があります。

過去、現在、未来のアスタナを体験できるパビリオンはとても面白かったです。疲れてきたので後半は駆け足になってしまいましたが、願わくば去年来たかった…。

Пока!

アスタナ万博2017①

Привет!

実は去年(2017年)アスタナで万博が行われていたことはご存知ですか?私はカザフスタンに来ることになって初めて知りました。当時はモスクワにいたので来ようと思ったら数時間ですぐ来られたのに。

現在はメインのカザフスタン館だけ残されて、あとのパビリオンは解体されてしまっています。アスタナはあまり背の高い建物がなく意外なほど遠くまで見わたせるので、我が家からもこのカザフ館が見えるのですが、はじめは「何あの球体」という印象でした。その上、夜になるとその球体は光るのです。ある時は緑色に光って地球を表し、ある時は白く光って表面に「アスタナ」の文字を浮かび上がらせ、ある時は赤く光って太陽を表し、窓から眺めていても飽きません。ある時、その球体のそばを通ったのでおもむろに旦那に尋ねたところ「アスタナ万博のメインパビリオンだよ」と教えてもらいました。ずっと球体の内部に入ってみたかったので、見学できると知ってすぐの週末に二人で遊びに行きました。 これが件の球体です。2017年万博全体のテーマは「未来のエネルギー」でした。なのでこのパビリオンも全体的にエネルギーにまつわる展示になります。パビリオン近くにあるチケット売り場で一人1500テンゲのチケット代を払います。え、一人500円で入れるの!?夜にあれだけ光っているのに!?

内部は8階建てになっており、それぞれ階ごとにテーマが決まっています。裏口から入ってしまったのか、コートを預けるところまで球体の中をぐるっと回る羽目になりました。一階の主なテーマは「国の展示」とのことで、ユルタ(移動式住居)のようなテントが2,3個あります。中ではそれぞれ展示があるようなのですが、たまたま私たちがのぞいたユルタの中では今話題のVRを体験できるスペースになっていました。様子を見ながら二人でのぞいていると、係りの人が「今ならジェットコースターが空いていますよ」と言って私たちの希望も聞かずにVR眼鏡を手渡してきます。初めてVRを体験したのですが、ヒトの視覚は凄いですね。実際はなにも動いていないのに、ジェットコースターのアップダウンする感覚がかなりリアルに味わえました。このユルタ内の他のコーナーでは特別な靴を履いてウォーキングマシーンの上に乗りながら何かと戦うゲームも体験できるようでした。 少し酔ったので、その場を離れます。とりあえず違う階も見てみよう、ということで向かったエレベーター(写真右の人がいるあたりです)では、そこの係の人に問答無用で8階のボタンを押されました。ここの人は少し押しが強いようです。せめて説明をください。

到着した8階のテーマは「アスタナ-賢い街」ということで、未来のアスタナのモデルを展示していました。説明によると今から30年後、2050年頃の想定だそうです。街の模型の上に想定される都市の様々な問題の解決方法が映し出されます。写真では少し伝わりにくいですが、上の銀色のUFOみたいなものに映し出されるのを読む形になっています。たしかにこんな街に住みたいなあと思わせてくれるような、理想的な街の模型でした。しかしそこからふっと視線を窓の外に向けると 結構近いところに見える草原。この万博会場は街の端にあるので、すぐそこまでステップが迫っているのです。ここが30年後に本当にこうなるのかなあ。

8階まで上がる方法こそエレベーターでしたが、降りるのは階段一択のようです。おそらく車いすの人などは特別にエレベーターを使えると思いますが、基本的には順路に沿ってみていくと階段へ導かれます。ここは人間のエネルギーを使うのね。 7階のテーマは「宇宙エネルギー」。ロケットを打ち上げているバイコヌール基地もあるカザフスタンにとってはお得意の分野でしょう。人と宇宙の歴史が書かれた廊下を宇宙飛行士に見守れながら通って進むと、宇宙ステーションでの生活などが展示されていました。モスクワでも宇宙飛行士博物館によく行っていましたが、アスタナのほうが最新版を展示してあります。モスクワも刷新していくのをお勧めしたいです。 宇宙でコーヒーを飲むための研究がどれほど大変だったか、という説明とともにコーヒーメーカーが展示されていました。地上でも使えそう。

そこから先へ進むとなんと月面を歩いているような気分になる(重力は地球のものですが)ジオラマが作られていました。月面歩行ができてテンションが上がっている旦那。 思ったより楽しかったので、紹介は後編へ続きます!

Пока!

中華料理「プリンセス」

Привет!

最近タクシーの運転手さん達や劇場で横に座った人など、初対面のカザフ人と雑談をする機会が増えています。初めての会話の流れはおおよそ決まっていますが、こちらが外国人だと余計に毎回同じ会話になります。まず初めに私の国籍の確認。カザフには韓国人がたくさん住んでいるので8割ほど「韓国人?」と聞かれます。そしてアスタナに来てどれくらいか、という質問が続き、私が1ヶ月ほどだと答えると皆が皆判で押したようにこう聞くのです。「アスタナの天気はどう?」と。

モスクワではここで来る質問は「モスクワはどう?」でした。アスタナでも同じだと思っていたので、街自体についての感想を用意しているところに「天気はどう?」です。しかも気温が氷点下に入ってからこの質問が増えたところを考慮すると、彼らがこちらに期待する言葉は自然と分かりました。わざわざ彼らを落胆させることもないので毎回「寒いですね。大阪ではありえない寒さです」と答えています。それにしても「寒い町」だということが彼らのアイデンティティの一部になっているのでしょうか。

寒くてもずっと家にいると息が詰まるので、週末にお友達から来た晩御飯のお誘いに、これ幸いと旦那と二人で快諾の返事を出しました。この日のレストランは中華です。以前、二人でこのレストランに行った方から「すべての量が多くてあまり品数が食べられなかった」「スープを頼もうとしたら、二人には多いから、と断られた」と聞いていたので、総勢5名で挑むことになりました。 お店の名前は「Принцесса(プリンツェッサ、お姫様の意)」…前評判とイメージがかけ離れた名前に少し驚きます。少しお店の中に入り込んだところに電話ボックスくらいのサイズのガルデロープ(コートを預ける場所)があり、その中にたくさんのコートと管理しているおばあさんが入っていたので、彼女の精神状態が少し心配になりました。

中華らしい、回転式のテーブルが乗った円形の机に案内されます。私たちを誘ってくれた人がここには何度か来たことがあったそうなので料理はお任せしました。麻婆豆腐に焼き餃子と水餃子(イスラムの国にいるので中身はそれぞれ羊とエビです)、チャーハンと山芋のスープ、そして北京ダックを注文。量が多いという噂なのにそんなに頼んで大丈夫なのでしょうか。 次々にスープ以外の料理が運ばれてきて、テーブルの上はすぐにいっぱいになりました。この時のためにお腹を空かせていたので、すぐに食べ始めます。北京ダックは特に美味しく、ダックを皮で包む手が止まりませんでした。麻婆豆腐も適度な辛さでちょうどよかったです。むしろ辛いものがお好きな人には少し物足りないかもしれません。そんな時、スープ以外は注文したものがそろっていると思われたテーブルに何かのから揚げらしきものが置かれました。思わず店員さんに「これ注文してないです」と伝えると、店員さんは笑顔で「北京ダックに使ったカモの骨を揚げたものです」と答えてくれます。注文してくれた人が「ああ、そういえば今日はカモの残りをどんなふうに調理するか聞かれなかったなあ」と言っていました。もし聞かれたときはチャーハンにしてもらうと美味しいそうです。

ついにスープが来ました。テーブルの近くにあった作業台のようなところに店員さんが置いたスープ皿を見てびっくり。 私の頭が丸々入ってしまいそうな大きさです。スープのサイズはこれ一種類とのこと。これは二人では食べきれないな…。作業台の上で、人数分の小さなお椀にスープをよそってくれます。山芋のスープは本当にほっぺたが落ちそうなおいしさでした。私が山芋に目がないというのもあるかもしれませんが、優しい味がほかの中華料理にもよく合います。スープに舌鼓を打っていると、その作業台にもう一つスープが置かれました。え…。 また人数分よそわれたスープ。
頼んだスープは一品だけですが、とすこし非難めいた口調でいう私たちに店員さんは「北京ダックの骨からとれた出しで作ったスープです」と告げます。北京ダックのポテンシャルが想像以上でした。もうお腹に入るスペースがない、と思いながらもおいしかったからかぺろりと食べてしまいました。ちなみにどちらのスープも5人がそれぞれお替りできるくらいの量がありました。なぜもっと小さなサイズを作らないのか少し理解に苦しみますが、大人数で食べるご飯というのもおいしいものです。また人数を集めて来たいなあと思えるレストランでした。

Пока!

カラオケ@アスタナ

Привет!

昨日、バザールで新鮮な卵8個と、その他諸々を買ってホクホクでバスに乗ろうとした瞬間に氷の上で滑って転んでしまいました。ご丁寧に荷物を下敷きにする形だったので、体の下でなにかが潰れた感覚をおぼえます。バスの中にいた人と外でバスを待っていた人たちがみんなで助け起こしてくれ、荷物も拾ってくれ、バスの座席まで譲ってくれました。周りの人の優しさと卵への心配で少し泣きそうになりました。家に帰ってすぐに荷物を解くと、私の目に飛び込んできたのは1つだけ割れた卵と粉々になった洋梨。ほかの7つの卵は無傷でした。倒れ込んだ場所が良かったようです。あるいは梨が弱かったのか。

さて、先日旦那の職場の人から「カラオケをするけど来る?」と誘ってもらいました。アスタナにもカラオケがあるんですか!二つ返事で行きます、と答え、当日を楽しみにしていました。 場所はここ、コリアンハウス。ここでなら個室のカラオケが楽しめるというのです。

お店に入ってすぐのところにスタンドマイクが置かれた写真スペースがあり、否が応でもカラオケの気分をかきたてられます。中には個室が5、6室あり、この日予約してもらっていたのは一番大きな部屋でした。 ここは上の階がレストランになっているので、料理を注文したらそこから持ってきてもらえます。名前の通り韓国料理がメインですが、寿司などもありました。私はミートボールと冷麺を気に入ってずっと食べていました。

韓国系ということで、カラオケの形式はモスクワで慣れ親しんだものと全く一緒です。

mickymm.hatenablog.com 入っている曲も同じだったので私も旦那もある程度どれを歌うか決まっていました。それにしても相変わらず珍しい曲が入っているのに有名な曲がなかったりして、日本で行くのと少し勝手が違います。

大人数で、飲んで食べて歌って楽しんでいると暑くなってきました。すると何度かここに来ているという人がおもむろに立ち上がって、部屋にかけられた絵に近づくではありませんか。 彼が絵の後ろに手を入れて何かを調節しているのを見ていると、次第に絵から冷たい風が出てくるのを感じました。これ空調だったの…。

開始から数時間、宴もたけなわになってきた頃のことです。突然ドアが開いて店員さんが入ってきました。驚く私たち。すると店員さんは「いつもご利用ありがとうございます。この曲が終わったら、お店からのサービスでプロの歌手に一曲歌ってもらいますね」と高らかに宣言しました。

約束通り、その時に歌っていた人がマイクを置くと、その店員さんはカラオケの機械に持参したパソコンをつなげ、回線を確認すると外で待機していたらしいプロの歌手を部屋の中に招き入れました。カザフの女性は美人が多いのですが、この時入ってきた女性二人組もとても綺麗で、一人の手にはマイクが、もう一人の手にはアルトサックスが握られていました。ここで先ほどの店員さんがなぜか突然英語で「いつもあなた方が来てくださるときはとてもうれしいです。感謝の気持ちを込めて、店からのプレゼントをお贈りします。それではお楽しみください」と口上を述べました。言い終わるなりミュージックスタート。どこかで聞いたことはあるけれど曲名はわからない、英語のロックです。サックスに合わせて圧倒的な声量と安定感のある音程で歌手が歌いあげます。 これまで身内でワイワイとしていたところに知らない本物の歌手が来ると、盛り上がればいいのか聞き入ればいいのか少し迷います。周りの人たちも同じだったようで、音に合わせて乗っているけれど微妙な空気が流れたまま、一曲を終えた彼女たちは一礼をして出ていきました。するとまた店員さんが入ってきて、カラオケの機械を元通りにします。たまたま次に曲を入れていた人は「歌いにくい」と嘆いていました。彼には悪いですが、おそらくみんな自分じゃなくてよかったと思っていたことでしょう。

予約した人が常連だったからか、それとも大人数だったからか、はたまたお店の気まぐれか、真相は闇の中ですが、貴重な体験ができました。そしてやっぱり大声で歌うのはストレス発散にぴったりです。

Пока!

Metroで大量に買い出し

Привет!

今週初めは最高気温が1度だったのに、明日の最高気温はー11度だそうです。一週間の中で12度も差があるなんて。どんな格好をしていたか忘れてしまったので、できれば家にこもっていたいのですが、-11度くらいで引きこもってしまったら真冬は外に出られなくなります。体を慣らすためにもどこかへ行こうかな。

先日、少し町はずれにある大型スーパーに連れて行ってもらいました。 地下鉄がないこの町に唯一存在する「メトロ」です。実はモスクワにも全く同じお店があります。モスクワには地下鉄もあるので「メトロ」といったときにどちらを指すのかややこしいことも何度かありました。 mickymm.hatenablog.com この記事では名前を出していませんが、マグロやサンマを買ったのがこのお店でした。

アスタナでは街中から10分も車で走るとすぐ草原に出ます。このスーパーはそんな草原のなかに突然現れるので、周りの風景と明らかにミスマッチでした。この街だったら別に郊外に作らなくても、街中に土地はあるのになあ…と思いながらお店に入りました。モスクワでは会員制だったので、ここでも入り口すぐのサービスカウンターで入会手続きをしましたが、連れて行ってくださった方々によると最近入り口のゲートが撤去されたので誰でも入れるようになったとのこと。レジでも会員証を見せたりしないので、実質会員制ではなくなったようです。制度は変わるもの。でもいつまた「やっぱり会員制にします」とゲートが設置されるかわからないので、とりあえず今は役に立たない会員証を作りました。

ここは食料品だけではなく、生活に必要なものは大体なんでもあります。家電に小さめの家具、キッチン用品に洗濯用品、スキンケアに掃除道具までなんでもござれです。最後、レジでお支払い途中に覗いていないエリアがあることに気が付いたのでもしかしたら服などもあるかもしれません。 お店の真ん中あたりに立って撮った写真です。とりあえず面積が広く、カートもお店の面積に比例して大きいので小回りが利かなくて少し苦労しました。ほとんど業務スーパーなので、置かれている食料品も街中のスーパーに比べると大きいサイズが多いです。大体800g入りしか手に入らないお米も、ここなら4.5kgのものが買えます。質も全く街中で手に入るものに引けを取りません。小さいサイズの怪しいお米を買うくらいなら、こちらで買ったもののほうがおいしく感じました。 オリーブオイルだってこのサイズです。一見ガソリンかと思いました。

モスクワではメトロといえば巨大な水槽があり、新鮮な魚が置いてあるので有名でしたが、ここのメトロはどちらかというとお肉のほうに力を入れていました。店の奥にあるお肉コーナーの入り口には分厚いゴムでできたのれんのようなものがかけてあり、それを押して中に入るとそこは真冬の世界です。 ここではカズビーフというカザフスタンで育った牛のブランドを扱っており、真空パックされたお肉たちはバザールで野ざらしにされたお肉より安全そうです。真空パックなので賞味期限は1か月近く先という優れもの。2010年にできたばかりの会社で、カザフスタンで育てた質のいいブラックアンガスビーフというのが売りのようです。なんと個々のお肉を扱っているのはメトロだけ!それにしてもこのお肉コーナーは気温を相当低く設定しているので、中でどのお肉にしようか迷っていると命の危険を感じるときがあります。お店の中だからとコートの前を開けていましたが、ここに入る前はしっかり着直すことをお勧めします。カズビーフではありませんがシチュー用に切られた牛肉なども売られていて、主婦に親切なお店です。

たくさん買ってしまって袋に入りきらなくても大丈夫です。出口近くに段ボールが置かれているので、欲しい大きさのものをもらうことができました。自家用車があればかなり便利ですが、バス停もお店の前にあったのでバスでも来られるようです。

後日家でカズビーフのステーキを焼いてみましたが、とてもおいしかったです!この量でお腹がはち切れそうなほどの満足感が得られました。そして小さめの塊肉を選んだつもりが、4人前のステーキが作れそうなくらいありました。しばらく牛肉は買わずにすみそうです。

Пока!

絵葉書を探して

Привет!

少し高い建物に上ると遠くのほうに見える草原や、町のところどころに突然現れる馬のオブジェなどに毎日触れていると、ああここには騎馬民族が暮らしているんだな、と実感します。ですが、日本に住む人たちも稲作が入ってくるまでは狩猟民族で移動して暮らしていたはずです。大陸顔だといわれる私ですが、新しい土地に行きたいという気持ちが強いのでどちらかというと騎馬民族の人たちに精神は近いのかなあと思っていました。

…思っていた私が甘かったのはこちらに来てすぐ分かりました。

小学生のころから、どこかへ旅行に行くと実家に絵葉書を送るのが習慣です。時々その土地で郵便局やポストが見つけられず、ホテルから出したり家に帰ってから出したりするのですが、とりあえず現地でポストカードはすぐに買うようにしています。アスタナに来た時もすぐに送ろうと絵葉書を探しました。絵葉書といえば、おみやげ物屋さんのレジ横に必ず置いているものだというイメージが強かったのですが、アスタナではそもそもおみやげ物屋さんが見つけられませんでした。モスクワでは路上のキオスクにもおみやげ物屋さんがあったのに。

アルチョムバザールの靴屋さんコーナーの横におみやげ物屋さんが2軒あったので、入ってみましたが民族衣装やユルタの模型、そしてマグネットなどはかなりの種類があるものの、絵葉書はありません。お店の人に聞いてみても「残念ながら置いていませんね」と言われるばかりです。郵便局にも足を運んでみましたが、局員は「絵葉書はありませんが、切手ならありますよ。買いますか?」と少しずれた答えを返してくるだけでした。その買った切手をどこに貼れというのでしょう。

ほかの郵便局では「置いていませんね」と言われただけだったので、思い切って「どこで買えますか」と聞いてみました。少し面食らった様子の局員さんは「…お花屋さん?」と少し疑問形で答えてくれました。その日以降、私はお花屋さんを見つけるとドアを開けるなり「絵葉書ありますか」と尋ねる変なお客と化します。ただ、どこも置いているのは「誕生日おめでとう!」という文字が入ったメッセージカードばかりで「もっとこう、町の写真が載っている感じの…」という追加注文をするとお店の人は黙って横に首を振るだけでした。

モスクワでは本屋さんでも売ってたな、と思い出したのでありとあらゆる本屋さんや文房具屋さんにも聞いて回りました。ここもほとんどお花屋さんと変わらないラインナップです。一度、店員のおばあちゃんに「…絵葉書って何ですか」と聞かれたときは絶望に近いものを感じました。
「…誰かに送るものです。手紙みたいな。絵や写真が載っています」
「封筒のことですか?」
「いいえ、カードのような形でのものです。すみません、ありがとうございました」
…もしかして絵葉書という存在が消えた世界に来てしまったのでしょうか。ほかは私の知っている世界なのに、絵葉書だけ消されてしまっているような違和感を感じます。

それでも手掛かりが欲しくて、こちらで日本人に会うたびにアスタナにおける絵葉書の存在について尋ねてみました。すると皆さんは口をそろえて言うのです。  

「あー、騎馬民族の国だから仕方がない」と。  

そもそも、住所を持たない歴史が長かったから、手紙を書く習慣がほとんどないというのです。何かを送るとなると荷物が主流のようです。そういえば郵便局にいたお客さんも箱を抱えている人がほとんどでした。決まったところに人が住んでいるという考え方をしていた私はやはり農耕民族だったのです。

それでもまだあきらめられずに絵葉書を置いていそうなお店があれば探してしまう日々が続いていました。そんなある日、以前行ったときにはお昼休憩中で閉まっていたユーラシア・バザールの中にあるお土産物屋さんが開いていたのです。中に入っていつも通り「絵葉書っておいていますか?」と聞いてみました。するとお姉さんは「ありますよ!」と言って奥から出してくれたのです。 それがこちら。8枚入りの絵葉書セットです。やっぱりこの世界は私が知っている世界だった!探し物を見つけた以上に安心感がこみあげてきて思わず泣きそうになりますが、絵葉書を出しただけで客に泣かれたらこのお姉さんも不審に思うので、なんとか我慢して一言「ずっと探していたんです」とだけ言いました。しかし、思ったより細長かったので「これって外国に送れますよね?」と聞いてみました。お姉さんは当然だ、という顔をして「切手を貼れば送れますよ」と教えてくれます。切手は郵便局にあることが確認できているので、もう不安要素はありません。

家に帰ってとりあえず広げてみました。 その中の一枚を選んで、さあ書こうと裏返します。 …どこに文字を書けばいいの?慌てて裏返しますが、表面にはもちろん写真しかありません。え、写真の上に書けばいいの?これもしかして絵葉書じゃなかったの?

ほかの絵葉書も裏返してみました。 こちらはシンプルな説明で書くところがたくさんあります。結局8枚中絵葉書として使えそうなのは4枚しかありませんでした。打率の低さ。三言語で説明が必要だからでしょうか。

一枚仕上げて、きちんと住所を書き、やっと郵便局へ向かいます。 モスクワと同じように入り口に置かれているパネルを操作し、目的別に番号札が発行されます。私の番号は756番でした。電光掲示板に出ている現在の番号は…736番です。え、20人も待たなきゃいけないの…?と思っていたら、局員さんが「次、755番の方ー」と叫びました。どうやら私は2番目のようですが、あの電光掲示板の存在意義は何でしょう。

絵葉書は200テンゲ(66円ほど)で日本まで送ってくれるようです。ちなみにほかの国にも同じ値段で送ってくれました。  

そしてこちらから送ってから2週間と3日、ついに実家から「届いたよ!」という連絡が来ました。ちゃんと郵便が機能していることが確認できてよかったです。

さあ、次はうちのポストがどこにあるかを探すミッションです。健闘を祈ってください。

Пока!

国立博物館へ

Привет!

こちらに来て一か月、そろそろ生活リズムもできてきたので、日中の時間があるときに観光に出かけることにしました。以前お友達と前を通った時に「これはこう見えて博物館なんだよ」と教えてもらった建物がとても気になっていたので、観光第一弾はここに決定です。 おそらく夏は勢いよく水が出るのであろう噴水には、騎馬兵の銅像が並んでいました。壁の白い部分に掘られたカザフ文様も美しいです。ちなみにこの外壁は夜になるとライトアップされます。一定時間が経つと青や赤や黄色に色が変わるので、みていて飽きません。寒いので長時間は眺められませんが。

通常チケットは大人が700テンゲ(230円ほど)で、黄金の間や特別展に入るのには別料金がかかります。ちなみに2018年版の地球の歩き方には1500テンゲとなっていたので、つい最近値下がりしたようです。値上がりしているケースはよく遭遇しますが、実際がほとんど半額になっていることははじめてでした。200円ちょっとでカザフスタンの国立博物館が見学できるのはうれしい反面、経営状況が少し心配になります。チケットを買って入場するとすぐにカザフスタンの国旗そのままの太陽とタカが出迎えてくれました。 タカに誘われるままカザフスタンについて学びたくなりますが、昼食時だったのでまずは腹ごしらえのために地下にある食堂へ。手書きのロシア語のメニューを解読し、あまり期待しないで鶏肉のハンバーグ(ロシア語ではカツレツ:котлетと言います)を注文しましたが、このハンバーグが絶品でした。ちなみにハンバーグにライスをつけて紅茶とともに750テンゲ(250円)という破格の値段だったので、もし博物館でお腹がすいたらこちらをお勧めします。ラグマンやサムサなど中央アジア料理も楽しめるようです。そしてこの食堂の前には、なんの説明もなくおもむろにユルタと呼ばれる遊牧民族のテントが置かれていました。展示物なのかな…? さあ、気を取り直して見学開始です!ロシアの美術館や博物館も順路が分かりにくかったのですが、カザフの博物館も同じでした。おそらくここは順路はなく、「アスタナの間」「古代と中世の間」「民族の間」「歴史の間」「独立の間」「近代美術の間」そして「黄金の間」の部屋に展示物が分かれているので、興味のある所から見ていけばいいようです。 入り口に鎮座するナザルバエフ大統領の像。初代大統領であり現在もこの国のトップに立つ彼は、ソ連からカザフスタンを独立させ、この街を築いた人として国民から圧倒的な支持を得ています。もちろん博物館の展示を見ていると、彼の名前を目にしない時間はほとんどないのではないかというくらい至る所に名前が出てきます。もちろん写真も多いのですぐ顔も覚えられます。

私は漫画「乙嫁語り」に出てくるような刺繍や民族衣装、そして馬が好きなのでとりあえず「民族の間」へ行きました。 入った瞬間にユルタと馬が出迎えてくれました。今回はちゃんと展示物然としています。このユルタの後ろには羊もいました。そしてこのユルタを取り囲むように時代ごとの女性の民族衣装が飾られており、刺繍をしているところの写真や馬周りの道具の説明などが詳しく書かれてあります。この部屋にはずっといられそうです。 どの展示もカザフ語、ロシア語、英語で説明が書かれています。写真やパネルの展示だけではなく、映像などが見られる液晶画面があったり「中世の間」では当時のバザールが再現されていて、角を曲がるとアラジンでも出てきそうなところに迷い込んでしまったり、 本当に見せ方が上手だなあと一人で感心してしまいました。

「歴史の間」「独立の間」においては、騎馬民族の生活を営んでいるところに「ソ連」が入ってきた違和感を浮き彫りにするような展示方法でした。緑と茶色がメインだった展示に赤と黒が唐突に入ってくるので、視覚的にわかりやすくなっています。アスタナから15kmほどの場所に「アルジール」と呼ばれる、スターリン政権の時に使われた政治犯の家族の女性たちの強制収容所があったので、その場所についての証言や写真などの展示もありました。

そして「アスタナの間」。19世紀に少しだけ歴史に登場した後は1997年に遷都されるまで草原でしかなかったこの街については、展示のほとんどがこの20年の出来事です。街中に点在する奇抜な建物についても説明がありました。 今では整備されて綺麗なバイテレクの周りも、15年ほど前まではこんな状態だったのですね。それにしても写真が少し古すぎる気がします…。また、この写真の上にはある日本人の写真が飾ってあります。実は1998年に行われた国際コンペティションで選ばれた日本人建築家、黒川紀章さんの案がアスタナの都市計画に使われているのです。彼の案が完成するのは2030年の予定です。今もどんどん新しい建物が増えているアスタナがこれからどうなっていくかとても楽しみです。

Пока!