馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

ガラタ塔

旧市街から金角湾をはさんだ対岸の新市街を眺めると、ほかの建物より頭一つ分ほど飛び出ている塔を見つけることができます。ガラタ塔です。 塔自体の高さは67mとそんなに高いわけではありませんが、海抜は140mもあります。これだけで塔が立っている場所が少し高台になっていることが想像できるかと思います。さかのぼること1500年弱、528年にビザンツ帝国の皇帝アナスタシウスによって灯台として建築されたこのガラタ塔は、一度は第四回十字軍によって1204年に壊されてしまいました。第四回十字軍は一度ビザンツ帝国を滅亡に追い込むほど当時コンスタンチノープルの名前で通っていたこの街を破壊しつくしましたが、亡命政権によりその60年後の1261年にコンスタンチノープルを奪回、ビザンツ帝国を再建します。そんな再興したビザンツ帝国時代の1348年に、ガラタ塔もまた再建されました。今回は灯台としてではなく宗教的な目的で使用されます(キリストタワー)。しかし、そんなビザンツ帝国の治世も十字軍に攻め込まれてからはかつてのように盛り上がることもなく、長くは続きませんでした。1453年にはオスマン帝国に支配され、国教も変わってしまいます。次にガラタ塔が歴史に登場するのは30年後、バヤズィト2世の治世に起きた地震の時です。この地震でダメージを受けたガラタ塔は修復され、天文台に姿を変えました。そのあとは奴隷として働くキリスト教徒の囚人の住居としても使われるなど、この石造りの塔は長い歴史をずっと見守り続けてきたのです。入り口に長い列ができていたので登るのを諦めそうになりましたが、待っている間もストリートミュージシャンの人の演奏が楽しめたり、列の前後の人たちと交流したりしていると中に入るまであっという間でした。

チケット売り場の前には地下宮殿にもあった「みんなでアリ王子になりきろうコーナー」がありました。 mickymm.hatenablog.com そしてここのチケットがとてもかわいいのです! 裏に簡易的なガラタ塔の説明が載っているし、デザイン性が高いのでしおりとしても使えます。このチケットの表面に描かれている切手風の絵が新市街の風景なのですが、ガラタ塔の背の高さがよくわかると思います。そしてこの絵は一つのエピソードが元になっています。塔から飛び出しているのはヘザルフェン・アフメット・チェレビという男性。1638年のことです。彼は人工的な羽を作って、この塔の上から飛び立ち、ボスフォラス海峡を越え、6㎞近く離れているアジア側のウスキュダルに降り立ったというのです。当時のスルタン、ムラット4世は初めこのニュースに喜び、彼を表彰しようとしましたが、突然心変わりし、脅威と見なされた彼はアルジェリアに追放されたという逸話が残っているそうです。

チケット売り場からエレベーターで7階まであがると、ガラタ塔についての説明が書かれたホールに出ます。その説明の上にヘザルフェンと思われる像がひっそりと置かれ、来場者を見下ろしていました。 ここからは螺旋階段で上へと昇っていきます。8階はレストランになっていますが、予約をしないと利用できないとのことでした。夜などは(上っていませんが)絶対きれいな景色を見られると思うので、記念日や特別な日に是非。電話番号は先ほどのチケットの表に書かれています。9階は気軽に使えるカフェになっており、ここから展望台に出られます。 この展望台は背の高いガラタ塔をぐるっと一周するように作られているので、イスタンブールの街並みが360度楽しめます。ちょうど上の写真は旧市街を臨む方角です。真ん中に移っているミナレットを持つドームが左からアヤソフィアとスルタンアフメト・モスクです。その下に見えているのがガラタ橋。展望台となっているテラスはとても狭く、また人が多いのでかなり動きにくいのですが、みんなで譲り合ったり、待っている間に写真を撮り合ったりしてとても平和な時間が流れていました。 これはちょうど左に大きく横たわるボスフォラス海峡に合流する金角湾の部分ですね。となると、ヘザルフェンはあの左側に見えている陸まで飛んだことになります。確かに400年前ではそこまでの距離を「飛ぶ」となると脅威と見なされるのも不思議ではないような気がしてきました。いえ、今同じことをやれと言われてもできるとは到底思えません。

入場するために列に並んだのも無駄とは全く感じない、素晴らしい景色でした。お腹がすいたのでカフェに入りましたが、食べるものは全くなかったので旦那が頼んだトルココーヒーについてきたターキッシュディライト(粉砂糖をまとった甘いグミのようなもの)を一口もらうつもりが全部食べてしまい、いつもは温厚な彼に厳しめに怒られたのもいい思い出です。

ちなみにこの塔の足元にはとても素敵なトルコチャイカップ屋さんがあります。外観はこちら。 普段カフェで出てくるのはシンプルなカップが多いのですが、ここで扱っているのはとてもきれいな幾何学模様が描かれているものが多く、とても素敵でした。伝統的なチューリップ型のカップがほとんどですが、近代的な取っ手が点いているもの、チューリップ型でも下が大きめのものに上が大きめのもの、多種多様で店員さんもとても親切に相談に乗ってくれるので、しっかり選ぶことができます。 カップは割れるので買わないつもりだったのですが、こんな素敵なラインナップを見るとはじめの決心はいとも簡単にどこかへ行ってしまいました。素敵なティースプーンと共に伝統的な取っ手のない、綺麗な模様の描かれたセットを購入。塔に上りに行くというと預かってくれる親切なお店でした。お勧めです!