馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

まさかの事態

Hi!

イギリスに来るまで全くサッカーに興味がなかったので(だからこそこの時期に開催国を離れたのですが)、イングランドが勝ち進んでいることもありどこもワールドカップの話題で持ちきりなので、見始めると見事にはまってしまいました。毎晩ホストファミリーとテレビの前で大騒ぎしています。

ロンドン二日目を書く前に、今のわたしの状況について少し書こうかと思います。実は、こちらに来て足を骨折してしまいました。

旦那の英語研修についてきた私はホームステイだけ一緒にさせてもらっている状態なのですが、学校に付いているジムを無料で使わせてもらえることになりました。イギリスに来て完全に浮かれていたのか、一年半ぶりのジムで一生懸命ペダルを漕いだ結果、足が滑ってペダルと器具の間に足を挟んでしまったのです。完全に自業自得。初めは打撲かと思いましたが、痛みが引くどころか歩けなくなって来たので、学校の先生に近くの病院まで連れて行ってもらいました。

イギリスには二種類の病院があります。公共病院(National Health Service、通称NHS)と私立病院なのですが、ロンドン郊外のこの街には私立病院がないのか、先生が連れて行ってくれたのはNHSの方でした。病院に着いたのが夕方5時過ぎ。受付で事故の状況と、名前や誕生日、イギリスでの住所など順番に答えていきます。全ての登録が終わると、受付の人が言いました。「あなたの前に十人待っているので、おそらく2時間後にお呼びできると思います。規約により、4時間以上お待たせすることはありません」と。まあ予約していないし、とロビーの待合スペースに座って待ちました。総合病院の中でも「外傷と軽い病気」部門だったらしく、私の後ろの人は「妊娠したみたいなんですが…(産婦人科の方がいいんじゃないか)」と言っていたり、包帯を手に巻いた子供にご両親が付き添っていたり、冷えピタをした子が走り回っていたり(大丈夫?)様々な光景が繰り広げられています。壁にかかっているテレビでは救急車の呼び方や、診察中の子供預かりサービスなど病院にまつわる情報を流し続けていました。中でもびっくりしたのは病院の職員に対する暴力が増えているのでやめてください、という注意喚起。そんな問題もあるのか。

周りにいた人がどんどん呼ばれていき、私たちも待ちくたびれた午後9時ごろ、ようやく名前を呼ばれました。2時間じゃなかった、ほんまに4時間やん。診察室に入ってもう一度経緯を説明すると、先生は患部を触診し、レントゲン室へ向かうよう言いました。

レントゲン室にも受付があり、そこに座っていた若いお姉さんは「基本的にNHSは無料で、レントゲンも一度目は無料なのですが、2回目からはレントゲンにお金がかかります。いいですか?」Noとは言えません。というか外国人も無料でいいの?お姉さんは続けます。「どちらにしろ、レントゲン用の登録が必要です。日本での住所と電話番号、イギリスでの住所と電話番号をここに書いてください」…仕方がないので実家の住所を借りました。それを見たお姉さんは「日本って…アジアですよね?」そこから!この時は痛みも忘れて笑ってしまいました。

足首の付近だったので、ベッドに足だけ乗せて4方向から撮影されます。足首が曲がらない状態だったのですが、足の裏から撮影しないといけない、ということでお姉さんが申し訳なさそうに土踏まずの上あたりに渡した紐を私に引っ張るように言いました。強制的に足の裏がカメラの方に向くようにするためです。もし将来何かの拍子に誰かを拷問しなければいけなくなったらこの方法を使おうと思います。

半泣きで診察室に戻った私に、お医者さんは「骨折ですね」という診断をしました。どうやら踵と足首の間にある骨が綺麗に二つに割れており、そこで体重を支えるので歩けなくなったそうです。やっぱり骨折だったか、とうなだれていると、追い討ちをかけられました。「ここは血管も通っている大事な場所。このままだと血が上って来ない可能性があります。とりあえず夜寝るときはクッション二つ分以上の高さに足を上げることと、血液の流れを良くするためにこの注射を1日一本、おへその周りを一周するように5回打ちなさい」と私に5本の注射を手渡しました。今なんて?どうやってですか、と聞くと「だから、このキャップを外して針を出して、お腹をつまんでそこにさせばいいのよ」とのことです。本気ですか?

戸惑っている私を「さあ次はギブスよ」と言って鉄製の車椅子に乗せ、ギブス室まで連れて行ってくれます。慣れた手つきでギブスをつけられ、また車椅子に乗せられて診察室に戻ってきました。

ここでずっと横にいた旦那が思わず「流石に素人に注射は怖いです。今お手本を見せてくれませんか」と言ってくれました。お医者さんはそうね、と注射の一つを取ると、キャップを外して私に手渡してきました。そしておへその右上あたりを消毒すると「さあここをつまんで、刺して」と言うではありませんか。見本って!お医者さんがするのではないんですか!血管がどこにあるか知らないのですが、どこでもいいの?私が観念して、天を仰いだ拍子に頭が鉄製の車椅子を強打しました。するとすかさずお医者さんは「頭も手術したいの?」…イギリスのブラックユーモア、笑うに笑えません。「虫が刺すくらいの痛みだから」というお医者さんの言葉でやっと打つ気になり、ひと思いに注射を打ちました。実際にはそこまで痛くはなかったのですが、それから五日間、やはり針を見ると打つまでにかなりの勇気を要しました。

二日以内に担当の病院が決まるので、そこから電話します、というお医者さんの最後の言葉通り、二日後に電話がきました。この時に見てもらった病院とは違うところですが、今度は予約が取れているので4時間も待たないと思います。次お医者さんに見てもらうのはこの日の2週間後。こんなに間が空くものなのでしょうか。

そしてこの日の診察は、注射やギブス、松葉杖も含め全く費用がかかりませんでした。イギリスの高度な医療システムの恩恵に預かり、感謝してもしきれません。また、旦那だけでなく学校の先生方や生徒さんたち、ホストファミリーや道ですれ違う人たち、みんなが気にかけてくれ、一人では生きていけないことを実感する毎日です。

出来るだけ早く治るように祈りながら、次回からは怪我の前に出かけた場所について書いていこうと思います。足以外はめちゃくちゃ元気です!

Пока!
Bye!

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