馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

レストラン「ЛавкаЛавка (ラフカラフカ)」

Привет!

最近青空が続いているので、学校から赤の広場まで40分ほどの道を歩いて帰るのがマイブームです。街角で次のイベントに向けて準備している様子や、アイスクリームを食べながら歩く強面のおじさんなど、毎日同じ道を通っていても飽きません。

日本でロシア語に触れる機会は少ないのですが、勉強したい!と思えばラジオとテレビでロシア語講座が開かれています。そのうちの一つ、テレビの「ロシアゴスキー」という番組で紹介されていたから行ってみてほしいと母に教えてもらったレストランへ、先日友達と行ってみました。 トベルスカヤ通りを二本奥に入ったところにあります。大通りに出ている標識は写真にあるようにかなり小さく、知らなければ気づかなかったかもしれません。

行く前に下調べとして、グルメ好きのロシア語の先生にこのお店を知ってるか聞いたところ「これ、クラスメイトのWさんが言ってた組織がやってるレストランよ、私は行ったことないけど」と言われました。その組織とは、農家と消費者を、スーパーなどの小売店を通さずに直接繋げるというシステムを作り上げたところです。Wさんは月に1度、個人的に契約している農家から野菜や乳製品などを送ってもらっており、時々私や先生にもおすそ分けしてくれます。スーパーには置いていないような珍しい野菜を作っているところもあるし、そもそも味が良く、Wさんはかなり満足していると言っていました。彼には小さい子供もいるのですが、お子さんを連れてモスクワ郊外のその農家を訪ねて実際作っているところも見せているらしく、聞いていると羨ましくなってきます。 そんな組織に登録している農家さんの自慢の食材を味わえるのがこのレストランです。先ほどの大通りに出ている看板を見つけ、中に入ってもこんな感じであまり目を引くような店構えではありません。ちなみにこのレストランの横にある食材屋さんで買ったレシートをレストランの方で見せると10パーセント(だったと思います)割り引いてくれるそうです。

目立たない店構えだからか店内に人はほとんどおらず(平日の昼間だということもあったので)、かなり落ち着いて食事ができました。店員さんは英語ができる人で、メニューも英語があるので敷居はそんなに高くありません。私たちのテーブルについてくれたお姉さんは愛想がとても良く、英語の発音も綺麗で好印象でした。

ここはビジネスランチがあり、サラダとスープ450p(900円)、サラダorスープとメインの二品なら590p(1180円)サラダとスープとメインの三品なら790p(1580円)でした。どれでもパンとドリンク(選べます)がついてきます。

番組ではボルシチを紹介していたような記憶があったので友人はボルシチを、私は同じビーツでもペースト状にしたサラダを注文しました。 このペーストが想像以上で、かぼちゃのような甘みとビーツ独特のコクが味わえる一品でした。横についてくるパン(ランチのセットとは違うもの)にこのペーストをつける手が止まりません。

メインは、友人がミートボールと書かれたものを注文。運ばれてきたものを見た私たちは一瞬目を疑いました。 確かに中は肉団子なのですが、餃子の皮のような、ロシア料理でいうとペリメニのような見た目をしています。下のかぼちゃソースがこの料理の味を引き立てていて、一口もらっただけでもその美味しさが分かりました。

私はロールキャベツを注文。 (この切って中を見せる撮り方は友人が提案してくれました)

やっぱりロールキャベツにはトマトソースだよね、と思いながら一口食べてみると…なんだか懐かしい味がします。もしかしてこのキャベツの上にかかっている緑の粉は抹茶!?ロールキャベツに抹茶をかけるという発想はこれまで日本人として脳裏をよぎったこともなかったので目から鱗でした。しかも、これが案外合うのです。抹茶の苦味がこんなにいいアクセントになるとは思いませんでした。興味を持った方はおためしあれ。

デザートでも食べようか、という話になり、メニューを眺めていると「Chocolate pancake cake」というのが目につきました(店員さんが持ってきてくれたのが英語メニューだったのです)。いやパンケーキなのかケーキなのか。気になったので注文してみました。 初めは「チョコレートケーキか」と思ったのですが、よくみるとブリヌイを何枚も重ねたものを半分に切って立てているのだと分かりました。そういえばブリヌイは英語でパンケーキって訳されるんだった…。ブリヌイケーキはロシアのカフェでよく見るので、これ自体は珍しいメニューではありませんが立てているのは初めて見ました。写真の状態のまま切って食べようとするとすぐ崩壊しましたが、味は美味しかったです。

少し分かりにくいところにありますが、コンセプトも面白く味は保証されているのでお近くの方は是非!

Пока!

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アーケードゲーム博物館

Привет!

雪が溶けて、街中では柵などのペンキを塗り直している真っ最中です。春ですね。今日は日中でも4、5度でしたが。昨日は雪も降っていました。これらも全部、去年5月中旬に雪が積もったことを思うとなんら不思議ではありません。

先日、行ってみたかった博物館にやっと訪れることができました。その名も「★ソビエト★アーケードゲーム博物館」です。名称としては似つかわしくない記号が入っていますが、このまま博物館の壁に書いてあったのです。 しかも日本語で。

ツム(цум)百貨店の脇にあるこの博物館には、その名の通りソ連時代のアーケードゲームが集まっています。その時代のアーケードゲームといえば、その昔カザンのソビエト博物館でトライしたことがありました。その時の体験がとても楽しかったので、旦那も私も入ることに躊躇いはありません。

ハンバーガー屋さんが併設されています。入ってすぐのところにクロークがあり、その端にチケット売り場がありました。450p(900円)を払い、可愛いチケットを受け取ります。2人なので何の疑いもなくチケットは2枚購入。博物館の入り口でチケットを見せると、50コペイカのコインが15枚入ったマッチ箱を渡してくれました。

このコインで、館内に置かれたゲームで15回遊べるそうです。狭い敷地ながらも、二階建てなので台数は思ったよりありました。 館内はたくさんの人で賑わっています。多かったのは小学生くらいの子を連れた家族か、中高生の友達同士でした。私たちも含め、ソ連崩壊時にはまだ生まれていないか、生まれてすぐか、という人たちばかりなのが意外…だと一瞬思ったものの、娯楽は世代を超えるのだなあ、となんだか微笑ましくなりました。

さて、よく見てみると同じゲームが2台別々の場所にあったりしたので、一度館内を見てからどのゲームで遊ぶか決めることに。何しろ15回しかできないのです。コインは一枚も無駄にできません。 それぞれのゲームの上にロシア語で説明が書かれていましたが、百聞は一見にしかず、と旦那が止めるのも聞かずにコインを入れてしまったのがこちら。アクセルペダルとハンドルを操作してテレビ画面上にある自分の車を動かし、旗を集めて行くものです。途中にある障害物の上を通ると速度が落ちたりハンドルが言うことを聞かなくなったりします。シンプルなゲームですが、対戦もできてかなり熱狂しました。

こちらはシンプルなシューティングゲーム…のはずですが、驚くほど銃を撃っている感覚がなく、目の前を獲物が通り過ぎるのをなすすべもなく見守っているうちにタイムアウトになりました。壊れていたのかもしれません。ここはオープンスペースでしたが、もっと閉鎖的なシューティングゲームもありました。そちらは銃の標準を的に合わせると、なぜか3つほど下の的に命中して戸惑いました。

よくバーにあるようなサッカーゲーム(選手が並んでいる棒を操ってボールを動かすもの)や、バスケットボールのゲーム、かつてのwindowsに入っていたようなピンボールなど懐かしいゲームもたくさんありました。

難易度が高かったのはこちら。 どこかの惑星についた宇宙飛行士を動かして障害物を避けるというなんともソ連的なテーマのゲームですが、これが思ったよりジャンプ力がなかったり(写真は力が及ばず落下していく宇宙飛行士)、やっとの思いで一面をクリアした瞬間に火の粉が飛んできて命を落としたり、クリアできる人がいるのか甚だ疑問でした。私たちがここを離れたのを待っていたかのように走ってきた男の子に忠告するか一瞬迷いました。

ゲームをするたびにコインの入ったマッチ箱が邪魔なのでゲーム機の上に置いておいたのですが、ある時女の子に「これはあなたのものですか?」と聞かれます。大人気ない私たちは「そうですよ、だから持って行かないで」と咄嗟に言ってしまいました。しかし10コインほど消費したところでだんだん疲れてきたではありませんか。「2人で15コインでも良かったね…あるいはさっきの子にあげても良かったね」と言いながらも勿体ない精神から使い切りました。

面白かったゲームはこちら。 左下の①の形になるように、画面に表示されている②に足りない部分を③から選ぶ、というもの。写真は切れていますが、③の選択肢は4列ありました。探すだけで一苦労なのに時間制限があります。最後にこのゲームで頭をつかって、ふらふらになりながら博物館を出ました。

昔懐かしいゲームも、初めてみるゲームも、理不尽なゲームも、さまざまな種類のものがあって本当に楽しかったです。何人かで行ってもワイワイと遊べそうです。

Пока!

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郵便局の進化

Привет!

昨晩は激しい雨が窓を叩きつけるのを、文字通り春の嵐だなあとぼんやり考えながら眺めていました。一度窓の外で眩しいほど光ったので、大きい雷の音が来るかと覚悟しましたが、何も音はしませんでした。ただ雷が落ちなかっただけなのか、それとも別の光だったのか。謎が残ります。

最近、事あるごとにモスクワの進化を感じますが、サービス業に関しては日進月歩で変わっています。ペレクレストック(スーパー)のレジ脇にはタッチパネルが置かれ、3人以上並んでいないか、乳製品や野菜の質はどうか、などのアンケートに応えられるようになっています。店員のおばちゃんは相変わらず無愛想な人もいますが、レジの待ち時間にこういうアンケートがあると暇も潰せていいなと思いました。

ロシアのでの悪いサービスの代表格、郵便局も去年末から突然システムが向上しました。まず、列があるかないかも定かではなかった窓口に整理券の機械が置かれたのです。 驚きすぎて思わず写真に収める私。ここは本当にロシアなのかとあたりを見回してしまいました。

「送る」「受け取る」などのボタンを順番に押すと、客の目的ごとにちゃんと整理してくれます。感動しながらも、油断はまだ禁物と気を引き締めます。このようなシステムがあっても機能していない場面に何度も遭遇しているからです。 無事に発券を終え、順番を待ちます。なんと、周りにいた人もちゃんと手に整理券を持って大人しく座っていました。高齢者もよく来ているのか、あまり戸惑う事なく機械を扱っており、システムがちゃんと浸透していることを証明していました。

順番が来ると奥のスクリーンに大きく番号と行くべき窓口の番号が表示され、音声でも教えてくれます。安心。常々、ロシア人(特にモスクワ)は大阪の人と同じくらいせっかちだと感じて親近感を覚えているのですが、この整理番号呼び出しに1秒でも反応が遅れたら、その場にいないとみなされてすぐに順番を飛ばされます。窓口の人の判断の速さをみていると、整理番号があるからと安心してちょっと外で用事を済ます為にこの場を離れようとは思えなくなりました。

ちなみに上の写真でスクリーンの左にある人の絵が描かれている表示は「5人以上並んでいるようなら下記の番号におしらせください」と書いてあります。流石に5人くらい並んでいたところで誰も文句を言わないと思うのですが、突然の過剰なサービスについていけません。

3月末ごろ、日本の友人から「2週間前に物を送ったよ!」と連絡が来ました。物?と尋ねても「着いてからのお楽しみ」と回答を避けられてしまいます。普段、実家からの荷物は旦那の勤務先に送ってもらっているので、自宅宛に荷物が届くのは初めてです。ロシアは郵便事情が日本ほど発達していないため、個人宅に荷物が無事に届くか確かではありません。届いても航空便なのに何ヶ月もかかるということもたまにあるようです。

今回も例に漏れず、友人は「ロシアは今遅れてて、2週間ほどかかるって言われたけれどまだ届いていないか」という連絡でした。連絡をもらってから慌てて調べてみると、EMSは直接家まで持って来てくれるけれど普通小包(ゆうパックのようなもの)なら郵便局からの通知がポストに入るから、それを持って自分で取りに行くシステムだということがわかりました。私たちのマンションは、この記事でも書いた通りポストを開けるためには一階に常駐している管理人さんにお願いしなければいけません。

友人から連絡をもらってしばらくは2日に一回管理人さんにお願いしていましたが、毎回何も入っていないので気まずくなってきました。1週間に一度くらいにすることにし、昨日16日に久し振りに開けてもらうと一枚の紙が! これです!!嬉しくてこの通知の紙を眺めていると下に「ご注意!荷物の保管は7日です」と書いてありました。慌ててスタンプの日付をみると…肝心の日付が掠れてよく見えませんが9日となっている気がします。慌てて家を飛び出しました。ちょうど7日目ではありませんか。幸いお昼に行けましたが、郵便局に着くと長蛇の列。初めて「5人以上並んでいたらー」と書いてある番号に電話しそうになりました。

せっかく日本から送ってもらった荷物です。間に合ってくれ、と祈るように通知の紙と整理券を握りしめていると、後ろに並んでいたおばあちゃんに肩を叩かれました。「あなた、もし支払いがなくて受け取りだけなんだったらあっちの小さい窓口見える?あそこでできるわよ」と教えてもらいました(もちろんその窓口には表示がありません)。そうなんですか!ありがとうございます、と声をかけ、小さい窓口に走り寄りました。通知書を出しながら「あの、これ今日気づいて…まだありますか…?」と聞くと「おそらく」という不安になるような言葉を残して探しに行ってくれました。

戻って来た彼女の手には小さなダンボール箱が抱えられています。間に合いました。走るように家まで帰り、開けてみるとそこにはマトリョーシカのチョコレートが。 4週間ほどはるばる日本から旅して来たチョコリャーシカをロシアで無事受け取ることができました。嬉しいなあ。

Пока!

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バー「Практика」

Привет!

昨日久しぶりに服屋さんに行くと、ほとんどが春夏物でした。お気に入りの半袖シャツとスカートを買えたのですが、17度の今日、その服を着て学校へ行って先生に驚かれるのも気まずいので、いつもの服で登校すると先生はなんとノースリーブ。しかも天気予報によると今週は最高気温が14度以上にはならないようです。新しい服の出番はしばらく来ないでしょう。

不定期開催の「バー経験値を積もう」の会、第2回目を開催しました(前回のMitzvaはこちらから)。先生からもらったメモには「ワインが安い」「人が少ない」とのこと。場所はプーシキン広場にある映画館「ロシア」から歩いて4、5分のところにある「レンコム劇場」の地下にあります。

持論である「地下にあるレストラン・バーは良い」の第1条件を満たしています。ドアを開けると、2フロアの店内は3分の1ほど埋まっていました。先生の言う通り隠れ家のバーのようです。しかし、案内係のお兄さんに「ご予約されていますか?されていないとなると…空いてるのはこのお席かあちらですね」と言われました。先生に心の中で「人が少なくないやん」と突っ込みつつ、土日のバーは予約した方が良いという教訓を得ました。オススメされるような人気のバーは特にです。

通常のメニューの他に、ランチョンマット代わりのような紙が一枚おかれました。 ワインのメニューのようです。表のようになっていて、横軸は値段ごとに、縦軸はワインの種類ごとに書かれています。なんと一番安いワインは150p(300円)!また、一番上に描かれているワインの種類を表すマークもデザイン性が高く、一目で見て白か赤かスパークリングかが分かるようになっていました。イタリア、フランス、アフリカ、チリ、ニュージーランドなどのワインが揃っています。

裏を返すと同じような表にお食事が。 こちらがマークの意味が一目でわかるのは魚とデザートくらいですが、はじめのは前菜、三つ目はお肉だと思います。 こちらのホームページにもこれと同じ表が載っているので、見てみたい方はどうぞ(менюのところです)。

この表を見ながらどれにしようかと悩んでいたら、突然机の上に(私たちはカウンター席でした)黒板に書かれたメニューが置かれて驚きました。 あまり字が綺麗じゃないから読めないものがあれば言ってくださいね、と声をかけてくれる優しい店員さん。私が「あ、じゃあピザをお願いしようかな…ピザ…」とピザの具が何かわからずに口ごもっていると「брезаолаは牛肉の種類です。これになさいますか?」と気を回してくれて感動したので思わず注文してしまいました。優しくされたら壺でも買ってしまいそうです。

そのピザが来ました。 お姉さんが教えてくれた牛肉が見えないくらいルッコラが乗っています。基本的に夫婦揃って好き嫌いはほとんどありませんが、旦那が何も言わずにずっとルッコラを頬張っているので「流石にこの量は多すぎるよね」というと「いや、黙ってたけどルッコラは大好物だからすごく嬉しい」とだけ答えてまた頬張りはじめました。突然のカミングアウトに驚きを隠せません。

他にもツナのブルスケッタ(飴色の玉ねぎがいいアクセントになっていました)やフムス(ひよこ豆のペースト)なども頼みましたが、中でもクリスピーウィング付きサラダは格別でした。 少しビールが欲しくなりましたが、赤ワインにもしっかり合います。

そうこうしているうちに気がつけばワインは2人で六杯、上記の食事と締めにパンナコッタまで頼んでしまっていました。全てお腹に入れてしまってから請求が怖くなってきましたが、後の祭りです。緊張しながらお会計を頼むと、やってきたレシートには「3500p(7000円)」の文字。モスクワの中心地にしては安くて驚きました。繰り返しますが、ワインを六杯飲んでいるのです。

店内はワイナリー(行ったことはありませんが)のようで、カウンターはワインの木箱でできています。テーブルのいくつかは樽でした。 食事をしたい人にはこの樽テーブルはお勧めしませんが(上が狭いので)、雰囲気はあります。

今日学校で先生に「教えてくれたバーに行ってきたよ」と報告しました。すると先生は「食事は美味しかった?私あそこでは飲んだことしかなくて。あと休日は人多いの?」と聞いてきます。知らなかったのか。先生は樽席に座るんだろうな、と想像できました。

バーと聞いて想像するより広くて明るく、静かな場所でしたが、誰かとじっくり話しながら飲むには最適の場所でした。

Пока!

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マリインスキーの白鳥

Привет!

サンクトペテルブルクを、そしてひいてはロシアを代表するバレエ劇場であるマリインスキーで「白鳥の湖」をみる機会を得た私たち。この際、本館だろうが新館だろうが関係ありません。期待に胸を膨らませ、席に着くとしばらくして幕が上がりました。

…そこには白鳥がいました。女性が「踊っている」ようには見えません。白鳥が文字通り羽ばたいていました。白鳥といえば、優雅な見た目に対し池の中ではかなりがっしりとした下半身が水を掻いていると言われますが、羽に見立てて羽ばたく振り付けをしているバレリーナの腕はその力強さを感じると同時に全身で優雅さを表現しているのです。人間の体にこんな動きが可能なのかと目を見張っているうちに、第1幕が終わりました。 なぜか毎回カーテンコールをします(カーテンコール中は撮影可能)。全力で拍手を送った後、軽食コーナーへ向かう私はなぜか爪先立ちになっていました。さすが、本物の白鳥は影響力が違います。

いつもの如く軽食コーナーに殺到している人たちの流れに乗って、でも精一杯優雅に歩きながら、列に並びます。レジに近づくにつれてどんな軽食があるのか見えてきました。 中でも目を引いたのはパンのイクラ載せでした。こういう劇場の軽食コーナーにあるイクラ載せといえば、パンに少しイクラが乗っていて、あとはレモンやサーモンやチーズのどれかが乗っている、という感じなのですが、この圧倒的な輝くイクラの量。ここがサンクトペテルブルクだから(海が近い)か、はたまた国内随一のバレエ劇場の余裕か。イクラに目がない旦那は迷う様子もなくこれを頼んでいました。私は食べにくいナポレオンケーキ(ミルフィーユです)を、妹さんは可愛いマカロンを。こういうところでも個性が出ます。食べながら、そういえば…と旦那に「第1幕は寝なかったの?」と聞いてみました。すると「全く眠くならなかった!」とのこと。初めてのことに驚きを隠せません。しかし、この値段を出さないと眠くなってしまうとは、なかなか高くつく目を持っているようです。

第二幕。
いよいよ黒鳥が出てきます。映画「ブラック・スワン」をみてから、白鳥と黒鳥は同じ人が演じていると知ったのですが、それでもこれまでは「全く別の人が演じている」ようにしか見えませんでした。衣装も違い、踊り方も白鳥より激しく、なんで王子はあれで気がつかないんだろう、と疑問に思うほどでした。

今回の白鳥は第1幕の時からほかのバレリーナの追随を許さない優雅さを出していて、すぐにどこにいるか踊りだけでわかります。これがプリマドンナか。そんな彼女が黒鳥をどんな風に踊るのかとても楽しみでした。

満を持して登場した黒鳥は、紛れもなくあの白鳥の優雅さを持っていました。ただ、ちょっとした手首の曲げ具合、足の上げ具合だけでガラッと印象を変えてきたのです。でも根底にあるあの白鳥だけが持っていた優雅さは失われていないーこれでは王子も「あ、あの白鳥が来たんだ!ちょっと服も違うし羽ばたき方も違うけどこれはこれで美しいな」と騙されるのも納得でした。

ただ何回見ても、そしてどれだけ素晴らしいダンサーが演じていても、騙されていたと知った王子が、王妃にすがりつくのを見ると「悪いフクロウの方が素敵かもしれない」と思ってしまいます。 幕が降ります。舞台美術の素晴らしさと衣装の美しさもこれまで見た中でダントツでした。

また休憩です。3階のロビーに展示されている衣装を見に行きました。 多くの劇場がこのように休憩時間も楽しめるようになっていて嬉しいです。

さあ、最終幕です。第2幕で私の心はかなり悪役のはずのフクロウに傾いていたので、最後の王子との戦闘シーンは思わずフクロウを応援していました。

この秋にこのマリインスキーバレエで「白鳥の湖」が東京と大阪で公演をすると聞いたので、どんな結末になるかは言及を避けますが、第三幕はスピード感がありました。 この演目の中で王子よりも存在感のあったフクロウ(写真真ん中の黒い人)。個人的には第2幕でマントを纏った姿がとても良かったです。このフクロウも、第1幕と第3幕では踊っているというよりフクロウとして舞っているという印象でした。鳥の動きって人間の体で再現できるのですね。

大興奮のまま劇場を後にします。サンクトペテルブルクでの初観劇は大成功でした。後日、友人がミハイロフスキー劇場の写真を送ってくれました。 あの綺麗な街並みに合わせた、素敵な外観の劇場が多いですね。またほかの劇場にも行ってみたくなりました。

Пока!

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マリインスキー劇場

Привет!

だいたい長期休暇を取れる時期はかぶるようで、旦那の妹さんがロシアに来ているのと全く同じタイミングで私の高校の友人もロシアに来てくれることになりました。家に泊めたり案内したりはできないかもしれないけど、と言う私に「一日でも会えるだけで嬉しい」と優しい言葉をくれます。お互い、いつどこにいるかを確認するとサンクトペテルブルクで会うのが一番良さそうでした。ちなみにその夜はマリインスキー劇場で「白鳥の湖」を見るの、と彼女。

マリインスキー劇場!ロシアにバレエが伝わった18世紀、首都はサンクトペテルブルクでした。時は帝政時代、エルミタージュに代表されるように芸術の都もサンクトペテルブルクです。そんな街にある皇室のために建てられたのがマリインスキー劇場なのでした。もちろん国内におけるバレエの中心にもなっています。ここで「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」が初演されました。「白鳥の湖」は初演こそモスクワのボリショイですが、あまり演出家にもバレリーナにも恵まれず評価は得られなかったので、「眠れる〜」と「くるみ割り人形」でチャイコフスキー作品の実績があった演出家プティパが再振り付けをして再演したのがこのマリインスキー劇場なのです。 興奮のあまり外観を撮り忘れたので公式ホームページの写真を。パステルカラーの水色でクラシックな雰囲気の漂う素敵な外観です。

ここで「白鳥の湖」を見るということの意味を熱く語ると妹さんも見たいと言ってくれ、いつもなら寝てしまうからと乗り気ではない旦那も行くと言ったので、すぐにチケットを購入することになりました。先ほどの公式ホームページから買うことができます。

1人9000p(18000円)。一階奥の、一段上がっている場所の最前列の値段です。上演日の4日ほど前だったので当然もうほとんど空いていませんでした。この時を逃したら多分もう見られないと思うと、購入ボタンを押してしまっていました。後から今これまでにない高額な買い物をしてしまったことに気がつき、旦那も私も手が震えていました。何事も勢いです。ついでにまさかこの2週間後にボリショイ劇場が待っていると私は夢にも思っていませんでしたが、旦那は知っていたので余計震えていたのだと思います。

サンクトペテルブルク2日目に見る予定でした。列車で街に着いてから、ずっと来るべきマリインスキーに、胸をバレリーナのごとく躍らせていました。だから思わず言ってしまったのです。1日目の夜にジョージア料理に連れて行ってくれた現地に住む友達に、自慢するように「明日マリインスキーで白鳥を見るんだよ」と。それを聞いた友達の反応は私の予想していないものでした。

ーえ、マリインスキー本館で今白鳥の湖やってたっけ?

彼は芸術通です。よくさまざまな劇場に足を運んでバレエやオペラを楽しんでいると聞いていました。そんな彼が間違えるはずがない。ただ私たちもちゃんと買った覚えがある。慌てて、でも怖々ホームページを確認すると「マリインスキー新館」と小さく書いてありました。

新館ってどこ!?ロシアバレエ130年の歴史は?と友人に尋ねると「本館のすぐ横にある…最近出来たすごく近代的な建物…」とのこと。 これも公式ホームページからです。わあ本当だ、ガラス張りで近代的というか近未来的。

バレエは基本、ダンサーは劇場に所属します。同じバレエダンサーと言えどもどの劇場に所属しているかが重要なのです。つまり、マリインスキーの本館であろうが新館であろうが、ダンサーはマリインスキー劇場のダンサーに変わりはない、外装なんて中に入って仕舞えば一緒だし、大事なのはバレエだから、と友人は慰めてくれました。

次の日、私は高校の友達と無事に再開して街を散策した後、劇場前で旦那と妹さんと合流。上演1時間前に開場しました。

歴史的な荘厳さはありませんが、洗練されたイメージです。階段はガラス張りでした。ここも美しいのですが、諦めきれず劇場内のスタッフに「本館の方、チラッと見せてもらえませんか?」と聞いて回るも、皆一様に黙って首を横に振ります。

気持ちを切り替えて、ここからはバレエに集中することにしました。
実は、私はちょうどこの1週間前にロシアに来てくれていた大学の友人を連れてモスクワで同じ「白鳥の湖」を100p(200円)で見ていました。思いがけず2週続けて白鳥が舞うのを見ることに。単純計算でも値段に90倍の差があるのですが、先週のバレエも子供向けとは思えないほどレベルの高いものだったので、今回は否が応でも余計に期待してしまいます。

ホールはこんなところでした。幕には羽根が描かれています。白鳥かな? 幕が上がりました。

続きは次回に。

Пока!

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国家と国民

Привет!

寒い日が続いていますが皆様お元気でしょうか。先週暖かかっただけに、なんだか騙された気分です。先週末散歩した時に、いくつかのレストランやカフェがテラス席を出していて驚きました。「寒の戻り」という言葉がロシア語にはないのでしょうか。

さて、そんな中ですが、昨日4月12日は かのユーリ・ガガーリンが108分間の宇宙飛行に成功した日なので「宇宙の日」になっています。例によってメトロでもらう新聞も宇宙の話題で持ちきりでした。中でも多かったのは「これからの宇宙の話」です。例えば、これからの100年のうちに起こりうるのはどれだと思いますか?というアンケートを道行く人に聞いていたり、宇宙旅行はいつになったら可能か、という記事が載っていたり。面白かったのは「とりあえずしばらくは人類は宇宙旅行を待たなければならない」という見出しの記事で、宇宙旅行の実現を目指しているいくつかの(多くはアメリカの)会社が紹介されていたのですが、彼らの計画についてカナダ人の宇宙研究者に質問しているところです。「リスクはありますか?」という質問に対して「死です。無事に出発できても帰って来られるかはわかりません。ロシアのロケットならこの37年間有人飛行は失敗していないので、そのリスクは下がりますが」という研究者の答えを載せていました。やはり、ロシアとしては宇宙に関して世界に、特にアメリカに負けたくないんだろうな、という印象を覚えます。

米露関係は、今冷戦時代と同じくらい悪化しているそうです。シリアの化学兵器使用や、イギリスでの神経剤使用などの疑惑の中で、アメリカだけでなくヨーロッパとも関係は悪化する一方です。今週はロシア・ルーブル安が進み、連日のようにニュースになっていました。普段なら1ドル57ルーブルほどですが、もっとも安い時で1ドル65ルーブルまでになったそうです。2週間ほど続くかもしれない、という当初の予想を裏切って事態はすぐに収束へ向かい、今では60ルーブルほどになりましたがそれでも前に比べるとルーブル安の状態です。 今朝のレート。

この件に関しては対露制裁が背景にあるとか、投資家がリスクを恐れたためだとか、色々と言われていますが、私自身は全く経済に明るくないので原因に関する言及は避けます。とにかく世界的に対露感情は悪くなる一方です。…ということを、日本からのニュースで知ってはいますが、正直にいうとロシアにいるとそんな実感がわかないというのが正直なところです。

日本のニュースで「ロシアにはこんな疑惑がある」という話を見かけても、すぐには「あ、このロシアって私が今いるロシアか」と思えないのです。以前、まさかロシアに住んでロシア語を使うことになろうとは夢にも思っていなかった頃は、ニュースで「ロシア」の文字を見ると「あのよく分からない怖いところ」と思っていました。ついでにロシア人についても「スパイが多そう」くらいに思っていました。

私が通っている語学学校にはヨーロッパから来ている人が多く所属しています。私はちょっとした好奇心から「あなたがロシアに来るっていったら、周りの人が止めたりしなかった?」と時々聞いてしまいます。すると大抵の人が「なんで?」と聞き返してきます。「たしかにロシアに対しては悪いイメージがあるかもしれないけど、それは政治の話であって、ロシア人がみんな争いを好んでいるとは誰も思ってないし、私がロシア語に興味があるんだったら現地で学ぶのが近道じゃない?」と言うのを聞いて、自分の見識の狭さを見せてしまったように感じて恥ずかしくなりました。

ロシアに、日本の国外に来てみてよかったと思うのは、国家とその国民を分けて見ることができるようになったことです。その国の政治は国民の総意で、国のリーダーは国民の平均的な考えをしているのだとどこかで思い込んでいました。日本でもそんなことはないのに。しかし色んなロシア人と関わったり、色々な国からきた人と会話をして、私の思い込みは違うと納得できるようになったのです。反露感情の強いジョージアで「ロシア語と使ってもあなた達の気分を害しませんか?」という質問に対しての、ジョージア人の「政治は政治、人は人。ロシア語は知ってるし、英語よりもこっちの方が通じるなら使わない手はないよ」という答えを聞いた時が決定的でした。この思い込みは早いうちに捨てた方がいいと直感的に思いました。

歴史や、現代の政治から、さまざまな国に持つ印象に囚われていると気がつかないうちに色んなチャンスを逃しているかもしれません。改めて気をつけようと思います。

Пока!

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