馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

カザフスタンのファストフード

Привет!

いつもバザールに行くと大根を買って帰るのですが、ついに今日顔なじみの店員さんに「いつも大根買っていくけど、これ何に使うん?」と聞かれました。「煮たり焼いたり」というロシア語がぱっと出てこずに頭の中で必死に辞書をめくっていると、彼女は続けて「食べるん?」と聞いてくるではありませんか。あ、そのレベルから疑問に思っていたの。そもそもあなたは野菜を売っているのではないのか。確かにほかの人が大根を買っているのを見かけたことはありませんし、そういえばモスクワのスーパーでもおばあちゃんに「これどうやって食べるの?」と聞かれました。店員さんには「もちろん食べるよ。日本の食卓には冬になると大根をよく使うの」と返しました。すると彼女は「ああ、韓国や日本ではよく食べるって聞いたことがあるわ。なるほどね」と納得した様子。ちなみに大根はロシア語でもДайкон(ダイコン)と呼ばれています。最近スーパーやバザールにも並ぶようになったのかな。韓国語でなんというかご存知の方がいらっしゃったら、コメントで教えてくださるとうれしいです。

さて、今日はアスタナでのファストフード事情のお話。カザフスタンに来てすぐの記事で「マクドナルドが初めてこの国に上陸したのは2016年で全国で10店舗」だという話を書きましたが、ケンタッキーは国全体で9都市44店舗、モスクワで人気のバーガーキングも9都市40店舗あるのでマクドナルドが特別少ないようです。それでも全国で40店舗というのは多くはありませんが。私が日本のケンタッキーで一番好きなメニューはビスケットなのですが、それはロシアにもカザフスタンにもメニューに載っておらず、バーガーとツイスター、鶏肉がたくさん入ったバスケットが中心となります。ランチセット(ビジネスランチと呼ばれています)が安くてお得です。バーガーキングについては日本であまり見かけなかったので違いが思いつかないのですが、ロシアとの違いは全くありません。

一方でマクドナルドはロシアとも日本とも少し違います。まず豚肉は基本使われないので、バーガーのパテも牛か鶏か魚です。そしてロシアではセットが全くなかったのですが、カザフスタンのマクドナルドにはありました。日本のセットは基本的にバーガーとポテトとドリンクですが、なんとカザフスタンのセットにはナゲットとポテトとドリンクのセットがあるのです。ナゲットの量も選べるので、マクドナルドで一番好きなメニューがナゲットの私は大喜びしています(誰も聞いていない)。ただ、いつも頼んでしまってから出てきたものを見て「健康に悪そうだなあ」と思います。揚げ物ばっかりで、色合いが全体的に茶色いのです。

ところで、せっかくカザフスタンの話をしているのだから外国から入ってきたファストフードのお店ではなく、カザフスタン独自のお店が知りたいという声が聞こえた気がするのでご紹介します。 このHardee'sです(真冬になるとお店の前で立ち止まって外観をとるという発想がなくなってしまいます。袋の写真でご了承ください)。全国で14店舗しかないのですが、アスタナは街が小さいからかよく目にします。ほとんどがガソリンスタンドにくっついいるのですが、アルマトイの山間にあるスケートリンク、メデウでも見かけました。リンクわきにお店があるのでスケート靴のままハンバーガーが食べられます。 先日、初めて行くことになりました。その時はお持ち帰りにして友達のお家で一緒に食べるという計画を立ててお店に入ろうとすると、なんと店員さんが内側からドアを開けて迎え入れてくれたのです。確かに外気温が氷点下20度なので外側のドアの取っ手は凍り付く冷たさです。その取っ手に触れる直前という絶妙なタイミングでドアを開けてくれ、笑顔で迎え入れてくれました。ここは本当に旧ソ連の国か、と疑ってしまうサービスの良さ。注文してからカバンの中で行方不明になった財布を探している間も笑顔で待っていてくれるし、持って帰るためにビニール袋をお願いするとなんとこちらに渡す前に袋の口を開いてくれました。この店員さんが特別気が利くのかと思っていると、よく来る友達によれば「基本的にサービスがいいよ」とのこと。 ちなみにソフトドリンクを頼むと紙コップを渡されて自分でジュースを入れるよう言われました。この方法であれば氷やジュースの量を調整できるので良いですね。

さあ、食べてみましょう。 このポテトの量に、ケチャップは二つもつけてくれました。実際このいいサービスを受けるまではロゴマークに書かれている星の笑顔が胡散臭いと思っていたのですが、いまなら心からの笑顔だと信じられます。バーガー自体はパンが柔らかくポイントが高かったのですが、この日のパテは焦げていてかなり香ばしかったです。さすがに毎回焦げているということはないと思うので、またチャレンジしてみようと思います。

ガソリンスタンドについているのでドライブスルーも充実しており、車で行くと寒い思いもせず、ガソリンも入れられて一石二鳥のようです。カザフスタンに来られた際はぜひ!

Пока!

街中のカザフ文様

Привет!

今日はまた日中も氷点下30度近くまで気温が下がり、外は晴れ渡っていました。外に出る気がしなかったので家の中で用事を済ましていたのですが、ふっと改めてリビングを見ると、クリスマスツリーがまだそこに立っているではありませんか。二か月以上飾っていたのでほとんど壁紙に溶け込んでいるかのように思っていたのです。気が付けばあれほど街中のあちこちに飾られていたクリスマスツリーも先週から徐々に片付けられていき、今はもう見かけなくなってしまいました。それにしても私は毎年2月が目の前に迫ってくる頃までクリスマスツリーを片付け忘れます。来年こそ1月7日が終われば片付けたいものです。

日本にいる友達から「Netflixでカザフスタン見たよ!アスタナって近未来都市なんだね」というメッセージが来ました。こうやって多くの人にカザフスタンやアスタナの知名度があがるのは素敵なことだなあと思います。黒川紀章さんが設計したこの町は「近未来的だ」といわれることが多く、確かに新市街地を通ると自分がどこにいるのかわからなくなりますが、この街の素敵なところは、よく見るとそんな近未来都市のあちこちに伝統的なカザフ文様が潜んでいることだと思います。私はそんなエスニックな模様がとても好きなので見つけると思わず写真を撮ってしまいます。今日はこの4か月弱で撮りためたカザフ文様を写真と共に紹介したいと思います。

まずはこちら。 先日の日本文化祭が行われた青少年宮殿のドアです。木製だということもポイントが高いですね。ただせっかくの模様を隠してしまう「飲食禁止」の張り紙があるのでマイナス10点。

こちらはアスタナのナザルバエフ空港で見つけたもの。透明なところに描かれているので見つけにくいのですが、その分見つけた時に嬉しくなりました。デザインとしてはシンプルなので周りの風景にも溶け込んでいますね。

そしてこちらはアスタナ・オペラのバルコニー部分に描かれていたカザフ文様。大きな模様と細かい模様が組み合わされていて、メリハリがあっていいですね。建物の外観はボリショイ劇場のようなのですが、この模様によって「カザフスタンの劇場だ」ということを知らしめているので30点加点。ちなみに舞台の幕にも小さくカザフ文様が描かれています。

新市街地の中でも不思議な形の建物が集まっているバイテレクとハン=シャティール間の道にあるショッピングセンター「ケルエン」はほかのショッピングセンターに比べるとカザフ文様が多いのでお気に入りの場所です。 特にフードコートの天井には草原と砂漠、そしてラクダの隊商が描かれていて異国気分を味わえますし、そのフードコートへと伸びているエスカレーター横につられている謎のオブジェと柱はカザフ文様の宝庫です。それが上の写真。別に光るわけではないのですが、この形と色合いが模様を引き立てています。一方で銀色の柱に描かれた文様は目立ちませんが、よく見ると描かれているのは一種類ではないところにこだわりを感じます。

先述したバイテレクとハン=シャティールを結ぶ遊歩道にもカザフ文様がありました。 ベンチも横の壁も違う種類のものが描かれているのに統一感があり、見事の一言です。ここを歩くと夏で15分、冬は20分ほどかかるのですが、この模様のおかげで幸せな気分で散歩できます。冬は下が凍っているのであまり模様を見る余裕はありませんが。

そして実はハン=シャティールの入り口に掲げられている文字の横にもカザフ文様が潜んでいます。夜になると光るのですこし模様がぼやけてしまうのが残念ですが、昼間ははっきり見えます。ちなみにこの写真を撮ったのは秋だったので雪は全くありませんが、今はこのテント型の建物には雪が積もっています。雪の重みでこの優美な曲線が壊れてしまわないのか心配になりながらいつも見ていますが、そんなに柔らかくは作られていないようです。

そういえばいつかこのショッピングセンターの真ん中に大きな国旗が飾られていたことがあったのですが 国旗の左端にもちゃんと文様が描かれています。それにしてもこの国旗のデザインといい、色合いといい、何度見てもほれぼれしてしまいます。

さて、カザフ文様の魅力に気が付いたあなたに朗報です。ユーラシアバザールなどのバザールでは、裁縫道具を売っているお店があるのですが、そこのショーウィンドウにカザフ文様のリボンが並んでいました。ここでこのリボンを購入すれば好きなだけお家でカザフ文様を眺めていられます!お店によって色合いや模様が違うので、自分の好みのリボンをぜひ見つけてくださいね。 趣味全開の記事でしたがここまでお付き合いいただきありがとうございます。また第二弾もどこかでしたいです!

Пока!

お絵描きの時間

Привет!

最近は気温を見て外出する服を決めるのも面倒で、外が曇っていて霧が出ていたら暖かい、外が晴れ渡っていて見晴らしがよかったら寒い、など勝手に決めて防寒着を用意するのですが、先日家を出るときは霧が出ていたのに、エレベーターに乗っている間に霧が晴れて青空まで出てきたのでとても寒かったです。でも雪の後に気温が下がると樹氷がたくさんできるので散歩が楽しく、思わず長時間外にいてしまいます。おかげで今少しのどが痛いです。

お友達から「絵を描きに行きませんか?」とお誘いをいただきました。何を隠そう、私は絵の才能が皆無です。できれば日常で簡単な絵も描くことを避けて生きてきました。美術の成績は悪すぎて記憶から消してしまいましたが、高校で選択しなかったのは確かです。ということで、筆を持つのはおそらく中学生以来になります。そこまで考えたところで、久しぶりに絵をかいてみたくなりました。しかも聞くところによると、手本をまねて書くということです。これなら何とか形になりそう。

アスタナの中心を通るイシム川沿いに、マンション群「ハイビル」があります。外国人が多く住むこのマンション群は、それぞれの建物の一階がスーパーやレストラン、その他いろいろなお店になっているのですが、このハイビルの一角に「コミュニティーセンター」があり、そこではジムやスイミングプール、ヨガ教室などが入っています。そしてそのコミュニティセンターの中に小さなアトリエがありました。 左手直ぐのところにドアがあり、右手にはあと3人ほど並べるスペースが広がっているだけの本当に小さな場所でしたが、居心地はとてもよかったです。壁にかかっている絵は買えるそうで、下に置いてある絵がお手本として使うもの。かなりの種類がありました。先生が一人で一度に教えてくれるので、一緒に受講するメンバーでどの絵にするか前もって決めておきます。今回私たちが描く絵はこちら。 鯉ですね。これは見本です。インスタグラムにどんな絵があるか載っているので、その中から選びます。アスタナはインスタグラム文化で、お店の情報やイベントの情報もすべてインスタグラムで情報収集することが多いです。ここのアカウントは「artspace.astana」で検索!facebookもあるようです。

アトリエに入ると、用意されているエプロンをつけて、キャンパスの大きさを選びます。先ほどの写真のキャンパスは小さいサイズの35×45㎝で、大きいサイズは40×50㎝です。受講料も含めて小さいサイズで書く場合は5000テンゲ(1700円弱)、大きいサイズは6000テンゲ(2000円)ととてもリーズナブル。 夢が広がる真っ白なキャンパス。プラスチックのお皿にアクリル絵の具が乗せられたものが先生から手渡されます。そのあとは先生の指示に従って、筆を使い分けながら絵の具を混ぜて背景を塗り、魚の輪郭を描きました。先生は説明を終えると生徒である私たちのところに来て見回りながら「ここもっと丸くして」「これは細すぎる」など的確に指示を出してくれました。そしていよいよ体の色付けです。見本を見てもらえばわかるように様々な色が混ざり合っているので好きなようにやらしてくれるのかな、と思っていると順番があるようで「まず赤を作って、このあたりに筆をおいてー」と指示されました。途中「青と黄色で何色になるかな?」と聞かれたりもします。 途中経過。絵の具は途中でなくなってもたっぷりもらえるので安心して使えます。色むらがあるほうが「芸術」のようでかっこいいように思ったのでかなり自由に塗りました。何度か見に来た先生は、はじめのほうこそ「ここはもっと赤いほうがいいよ」や「この緑はもう少し濃いほうがよくない?」といっていたのですが、最後になってくると「うーん…好きにしていいよ」といわれました。お手上げだったのでしょうか。ただ、目の色とひげにはこだわりがあるようで「早く目を描いて!」といわれます。目を描いてしまうと表情が決まってしまうのでかなり緊張しましたが、結局私の魚の種類を決定付けたのはひげでした。どう頑張っても細くならなかったひげを持つ私の魚はどこか鯉というよりどじょうに近くなってしまいました。 特に下の魚が。色合いも黒っぽくしすぎたのがいけなかったのかもしれません。それでもやはり自分で描くとかなり愛着がわきます。そんなに悪くないやん。

上手に書けないとストレスがたまるのではないかと心配していたのですが、そんなに変なことにはならず、また周りの人と笑い合いながらかけるので良いリフレッシュになりました。またほかの絵にも挑戦してみようかな。ワインのお店で、ワインを飲みながら絵を描くイベントもやっているそうで、それにも参加してみたいです。

Пока!

日本文化祭

Привет!

先週末はアスタナにしては珍しく気温が高い二日間でした。最高でマイナス1度、最低でもマイナス4、5度ととても暖かく、普段の上着を着ていると熱いくらいでした。今週もそこまで寒くないようですが、木曜日の最低気温がマイナス28度なので覚悟したいと思います。それにしても寒暖差で風邪をひきそうです。

そんな暖かい日曜日、アスタナでは「日本文化祭」と名付けられた日本の文化を紹介するイベントが開かれました。 場所はДворец»Жастар»(日本語に訳すと「青少年宮殿」だそうです)。これまでは「日本文化デー」という同じテーマのイベントをアルマトイで行っていたそうですが、今年からアスタナでも開催されるようになりました。

青少年宮殿に入ってすぐのスペースでは蜂蜜市が開かれており、本当にここで合っているのか少し不安になりながらも、幅と高さと角度が均一でない階段を上って二階へ行くと、ロビーのような場所ではありましたが本当に学校の文化祭に迷い込んだような雰囲気が広がっていました。

事前の案内では、この文化祭でできることとして「日本語の体験講座」「折り紙体験講座」「アニメ/漫画の描き方講座」「本物の忍者による忍術講座」「日本のボードゲーム体験ゾーン」「最新ゲームとレトロゲームの体験ゾーン」「踊りや歌」とありました。え、私も本物の忍者に忍術を習いたい。 強そうな人はいました。日本のゲームやアニメの登場人物なのかな?会場に入るとちょうど舞台ではバンドがクイーンの『We will rock you』を演奏していて、会場は大盛り上がりしていました。私もひとしきりのった後、冷静になって「確かに『ボヘミアン・ラプソディー』は日本でも大ヒットしたけれど、別に日本の歌というわけではないよな」と思いましたが野暮なことは言いません。これ以外の曲はどこかで聞いたことはあるけど名前が思い出せない日本の歌だったり、全く知らない歌だったりしました。日本とカザフではやっているものが違うのかな。

会場のどこを見渡してもお目当てだった忍術講座どころか忍者はいませんでしたが、どのブースもかなりにぎわっていました。日本語講座に関してはアスタナで日本語が学べる施設の紹介のみでしたが、折り紙講座は大人も子供もみんな思い思いの形を作っていました。 やはり鶴や手裏剣が人気のようです。ここに忍術講座ってもしかして手裏剣の折り方だったのでしょうか…?

面白かったのは書道で自分の名前を書いてもらうコーナーです。案内には載っていなかったブースなのですが、どうやら日本語をかけるカザフの人がブースに座っており、訪れた人の名前を聞いては漢字を当てたりカタカナにしたりして、半紙に書いて渡すということをしているよう。 ただでさえ筆で書くのは難しいのに、この人はとてもきれいに書いていました。会場内ですれ違った人たちの多くが自分の名前の書かれた半紙を手にしており、やはりこのようなパフォーマンスは人気が高いことを改めて実感しました。

そういえばアニメの書き方講座も見当たらなかったのですが、浴衣を着て写真を撮れるブースもとても人気がありました。これも案内には載っていないのですが、あの案内を見てきた人はあまりの内容の違いに怒りださないのでしょうか。 ロシアにいるときも思ったのですが、カザフの人も写真を撮るのが好きですね。時間制限がなかったこともあり、一度着せてもらった人たちは携帯電話のカメラロールがほとんど自分の姿で埋まってしまうのではないかというほど写真を撮っていました。私自身は着なかったのですが、その場にいるともちろん写真を撮るのを頼まれます。ワンポーズで何度かシャッターを切り、確認してもらうと「もっとこっちを写してくれ」だの「光はこっちから入るほうがいいからこちらから撮って」だの、注文も多かったです。何度か「もしかして日本人ですか?」と聞かれました。やはりわざわざここに足を運ぶ人なので「こんにちは」「ありがとう」などは知っている人が多く、中には「さようなら」という人もいました。一度は「私は中国語を習っているのですが、あなたに中国語で話しかけたら理解できますか?」と聞かれました。そのほかにもテレビ取材が来ていて、着付けの様子を至近距離で撮影していたり、着ている人にインタビューをしていたり、関心の高さがうかがえます。 ステージの様子。ちょうどバンドが出ていないときに撮ってしまいました。ゲームコーナーも人が多く、近づけないほどでした。歴代プレイステーションは全部あったのかな。そういえば街中で見かけるインターネットカフェの看板には時々「PS4」と書かれています。入ったことはありませんが、ゲームをしにインターネットカフェに行く人も多いのかもしれません。 かろうじて撮れたゲームコーナーの入り口。

日本人が少ないアスタナでもこうやって日本に対する関心が高いのはうれしいですね。これからもどんどん相互理解が深まるように願ってやみません。

Пока!

ワンランク上のお土産が買えるお店

Привет!

この間ふらっと入ったカフェで注文を終えると、店員さんに「どこの方ですか?」と聞かれました。「日本人ですよ」という答えを聞いた彼はとてもいい笑顔で「こんばんは!」と店中に響くような声で日本語の挨拶をしてくれました。午後1時だったのですが、日本語を知っていることに驚きました。「どこでその日本語を…?」「アニメで覚えたんです」と彼。その後も注文した料理を運んできたかと思うと「いただきます!」といいながら私のテーブルに料理を置きました。…うーん、どれも絶妙に惜しい。こういう時に訂正すべきかどうか、どう訂正すればいいか、いつも迷います。日本語を知っているよと披露してくれる気持ちだけでとても嬉しいのに、せっかくなら正しく使ってほしいというのはエゴなのでしょうか。でも私のロシア語が間違っているときには直してほしいのです。そんなことを考えているうちに、この時も結局訂正はできませんでした。

帰ろうとすると先ほどの店員さんに「あの、日本人ということは○○さんご存知ですか?」と尋ねられました。この手の質問はモスクワでもよく受けていたのですが、あちらでは毎回「モスクワにも意外とたくさん日本人が住んでいるので、全員は知らないのです」と答えていたのですが、アスタナではこれまで2回聞かれて、どちらも知り合いの方の名前が出てきたので驚きました。この街では日本人が少ないので、自分の国籍を言うと目立ちます。悪いことはできません。

さて、先日この記事でカザフスタンで買えるお土産を紹介しました。 mickymm.hatenablog.com 例えばカザフスタンを旅行した後、自分のための旅のちょっとした思い出としてのお土産や、周りの人に配るためのお土産は上の記事のお店でも買えるのですが、ちょっと高級感があるものが欲しい時にぴったりのお店を教えてもらったので紹介します。

そのお店がこちら、"The Empire"。リンク先のホームページからはカタログも見ることができます。アスタナには店舗が三つあり、下の写真はそのうちの一つ、ショッピングセンター「ケルエン」に入っているお店の入り口です。 扱っている商品も多岐にわたり、ネクタイやスカーフ、ノートにカードケース、食器やアクセサリー、壁掛け時計からチェスまで気に入るものが一つはあると思います。デザインは一目でカザフのものだとわかるものもそうでないものもありますが、ここではせっかくなのでカザフっぽいものをご紹介しましょう。

こちら、馬の蹄鉄の柄が入ったネクタイ。 かつて旦那がもらってきたものなのですが、こんなカザフっぽいネクタイがどこで手に入るんだろうと思っていたらここにありました。

また、私は文房具が好きなのですが、一目惚れしてすぐに買ってしまったノートがこちら。 どこか壁画を思わせるような細かな模様が描かれており、目立たないような場所に「カザフスタン」とカザフ語で書かれているのも気に入っています。こちらで売っているノートはカバーが綺麗でも中は真っ白のことが多いのですが、このノートは中の紙にも上下に表紙と同じような馬や人が描かれているので、文字を書く時でも目に楽しいのです。

食器も通常の形のものからユニークなものまで様々な種類があります。カザフ文様がついている食器は思わず買ってしまいそうでした。中でも面白かったのはこちら。 写真は公式ホームページからお借りしました。「アスタナ」という名前がついた茶器セットなのですが、国旗の色が使われていることだけでなく、アスタナでよく見かける不思議な形の建物を象徴するような造形が、まさに「アスタナ」の名にふさわしい一品です。

カザフ文様が使われている商品は他にもあります。 左奥に見えているカードケースも素敵です。スマホケースからノート、USBに至るまで、お洒落な文房具もたくさん売られていました。それにしても、このお店は様々な形のUSBを作っています。上の写真のような正方形のもの、キーホルダー状になって丸いものに三角のもの…そして単体でも買えるのですが、セットで置かれていることが多いのです。マウスパッドとのセットはまだ理解できるのですが、ノートとペンとUSBのセット、ペンとUSBだけのセット、そしてブレスレットとセットで売られているUSBを見たときには自分の目を疑いました。…そんなにUSB使う…?(ちなみに容量は8Gバイトか16Gバイトです) 綺麗なんですけどね…なんでここをお揃いのデザインにしたのでしょう。

お店の中にはなぜかロシア連邦を構成するタタールスタン共和国の首都、カザンをデザインしたノートなども売られていて「紛らわしいな」と思ったりもしました。ツッコミ待ちなのでしょうか。

なんにせよ、デザインが洗練されているのでなにか欲しくなってしまう、そんなお店です。ケルエン以外にも万博跡地近くのショッピングセンター「メガ シルクウェイ」やマンション「ハイビル」などにも入っています。ちょっと良いカザフのものが欲しくなったらぜひ!

Пока!

氷点下20度の外遊び

Привет!

今日はロシア正教でのお正月です。ですが、クリスマスの時も今日も街中は通常営業で、ムードも全くありません。やはりイスラム教徒が多い国だからでしょうか。3月のイスラム教のお祭り、ナウルーズが今から楽しみです。

ということで、年末年始のアスタナをご紹介します。 先日の『ノートルダムの鐘』を上映したピラミッドの前の風景です。ここは「独立広場」という場所で、周りには大学や劇場、国立博物館などがあります。
アスタナは去年がちょうど20周年で、街中のいたるところに「20 ASTANA」というモニュメントがあるのですが、年末になって突然「20」と「ASTANA」の間に「19」が入ってきて(写真参照)、新年を祝うモニュメントに昇華しました。今年は21年目のはずですが、20周年のモニュメントを置き続けるか、乞うご期待。
写真のクリスマスツリーの足元は普段はがらんとした広場でも今は期間限定でスケートリンクができています。そばには小さな滑り台も。本当に土地はたくさんあるなあ。

ピラミッドの反対側にはとても長い滑り台もあります。 これは全て氷で作ってあるものの周りにブルーシートをつけているのです。この滑り台も夜になると光ります。さすがアスタナ。

休日に行くとみなさん思い思いのソリやチューブと呼ばれる柔らかいタイヤのようなものを持って遊びに来ていました。周りではスノーモービルの後ろに4、5人が乗れるようなゴムボートを繋げて、ピラミッドの周りを走ってもらうアトラクションをしていたり、ロバが引くソリに乗れたり、外気温が氷点下20度前後でも大人も子供も一緒になって遊んでいます。私たちも滑り台を経験しようと思い、こういうところには必ずある道具を貸してくれるお店を探したのですが見つかりません。すると、滑り台の近くで人だかりができているところに遭遇しました。 その中心には蛍光の黄色いジャケットを着た人がたくさんチューブを持っています(写真で手前の子供が乗っているものがチューブです)。声をかけて借りようと思ったのですが、順番も何もないので、気が弱い私たちはチューブ競争に勝ち抜けませんでした。やっと人だかりがなくなったと思うと係りの人の手にはチューブが一つも残っていません。お店であれば身分証などを預けてきちんと返却してもらうシステムが確立していますが、彼一人でどうやって管理しているのか少し疑問でした。今回は滑り台を諦めて、遊んでいる子供達を眺めます。 楽しそうだなあ。こんなふうにコースが作られていないところでも、少しでも坂道があればみんな勝手にチューブなどを持ってきて滑っています。

こんなふうに街中にはまだたくさんクリスマスツリーと滑り台があります。 これはショッピングセンター「ケルエン」の前にあるツリー。この周りでは常に音楽が流れており、ツリーも実はゆっくりと回っています。ツリーにぶら下がっているブランコのような椅子に座って冬の寒さを楽しんでいる人たちもよく見かけました。それにしてもツリーの作り物感と対照的な手前のトナカイの顔。どうしてこんなにリアルに近づけたのか不思議です。

ユーラシアバザールでは年末年始限定で写真スポットができていました。 この国におけるサンタさんの立ち位置が気になります。彼は宗教的なものを背負っていないようです。これもソ連時代の名残でしょう。

この隣ではツリーを売っていたのですが、上につける星やピカがなかったのか、 なぜか全てのツリーがアイアンマンのお面をかぶっていました。可愛かったです。

さて、うちのツリーもそろそろ片付けなきゃなあ。

Пока!

ミュージカル『ノートルダムの鐘』

Привет!

今日は年がまだ明ける前の話です。ロシア語の先生から突然「ミュージカル見に行かない?演目は『ノートルダムの鐘』で、私の他の生徒も行くんだけど、もしよかったら」というメッセージが届きました。私はミュージカルが好きなので、二つ返事で「行きます」と返し、一緒に授業を受けている友達はミュージカルは苦手なようでしたが、挑戦するということで二人とも参加することになりました。旦那も初めは行くといっていたのですが、彼はあまり舞台が好きではない上に、事務のお姉さんも行きたいと言い出したので旦那の分の席を彼女に譲ることに。そこまで決まって、チケットを取ってくれた先生にお金を払うときになって衝撃の事実が明かされます。

「あ、これカザフ語だから」

…いやいや、先生ってロシア語の先生だよね?私たちにカザフ語を教えているわけじゃないよね?と問い詰めそうになる私たちに「あ、でもほらロシア語の字幕あると思うし」と先生。まあ、カザフ語のミュージカルなんてカザフでしか見ることができないし、いい経験になるかもしれない、と無理やり自分を納得させます。 会場はここ、アスタナにある奇妙な建物の一つ「平和と調和の宮殿」…通称「ピラミッド」(そのまま)。世界の宗教の指導者が会議をした時に使われたと聞いたことがあるのですが、今回はこの中の観光はできていないので、詳しいことはまた調べて書こうと思います。入ってすぐのロビーで先生と彼女の生徒さんたちと待ち合わせました。あってみるとその生徒さんたちはトルコ人だそうで、ロシア語は始めたばっかりなので通じないということでした。…そりゃトルコ人ならカザフ語のミュージカルでも見に来るよね、と少し不貞腐れた気分になります。カザフ語はロシア語よりもトルコ語に近いので、耳で聞くと大体理解できるのだそうです。現に彼らは先生とカザフ語で話していました。ロシア語と日本語しかわからない私たちにとっては圧倒的に不利な状況。 なぜか関係者入り口がある地下一階のみに置かれていた看板(を上からとったもの)。いよいよ開演時間になったので席に着きます。舞台の周りに字幕が出てきそうな機械が全くありません。先生、どうしろと…!もうこれは歌の世界に浸ろうと、ワクワクしながら待っていると会場が暗くな…らずに、舞台の上に司会者とスーツを着た男性が上がりました。そして司会者が「『ノートルダムの鐘』カザフスタンでの初演にようこそ!」とカザフ語→ロシア語の順で話してくれました。これ初回なのか。そして「これを記念しまして、カザフスタンの文化大臣からお言葉をいただきたいと思います」と続けるではありませんか。え、大臣!?ここ一般客入って大丈夫なの?大臣は「中央アジアで、初めて土地の言葉を用いた『ノートルダムの鐘』が上映されます!カザフ人のみで、カザフ語による、フランスの名作の上映は大変光栄なことです。フランスから作曲家や演出家にお越しいただき、尽力いただきました」というようなことをロシア語で話しています。そこはカザフ語ではないのか。カザフに住む人でもカザフ語のほうが得意な人、ロシア語のほうが得意な人、様々な人がいると聞きます。大臣は後者なのでしょう。そして次にフランス大使が通訳と共に登壇しました。いよいよ間違ったところに来てしまったのではないかと心配になります。フランス大使ははじめこそフランス語で、通訳がカザフ語に訳していましたが、スピーチのほとんどはカザフ語で行いました。所在なさげな通訳。一方で観客のカザフ人たちは大興奮。フランス大使が一文話すごとに歓声を上げます。やっぱりカザフ語も話せるほうがいいのかな。内容は全く分かりませんでした。

いよいよ会場が暗くなります。さて、これまでいろいろなミュージカルを見てきましたが、ノートルダムの鐘ははじめてだったので家を出る前に予習しました。もともとあるミュージカルなので、日本の劇団四季のように話の流れは変えずにカザフ語にしているのだろうという判断のもと、劇団四季のホームページにあるあらすじを読みました。 www.shiki.jp

幕が開くと青いコートを着た男性が朗々と歌い始めました。ステージの上には主人公カジモドの心の友だというガーゴイルの石像も置かれているので、彼がカジモドかな、と思いながら舞台を見つめます。もし彼がカジモドだったら全然醜くないけれど、むしろかっこいいのではないか、と思っていると一幕の中盤になってやっとあからさまに「醜い」人が出てきました。真っ赤なぼろを着て。ぼろ、という言葉のイメージを覆すような色合いなのですが、どう見ても彼がカジモドでしょう。じゃああの青いコートは誰だ…?と思っていると、カジモドを引き取った聖職者のフロローも、ジプシーのエメラルダも、警備隊長でエメラルダと恋に落ちるフィーバスも、なんならジプシーの人気者でフィーバスと対立してエメラルダを取り合う男性(おそらくオリジナルキャラ)まで出てくるではありませんか。言葉が分からないので青いコートの男性の立ち位置も分からないまま、休憩時間になりました。人物だけではありません。ストーリーも私が予習していったものを追っていくとどうしても話がつながらないのです。休憩時間になった瞬間友達と「今何がどうなっているの?」という話をしあいました。先生とは席が離れていたので聞きに行けなかったのです。 原作の「パリのノートルダム」のウィキペディアを見てみると、一番このストーリーが近いという結論になりました。ということは楽曲や衣装もすべてオリジナルか。そのためにフランスから人を呼んだのか。原作のストーリーに少し現代のデモのような要素を入れていたり、二人が心情を歌で吐露するところでは一人を影で表現していたりと工夫は見えるのですが、衣装の時代設定がバラバラなことと青コートの男性の存在意義に疑問を持ってしまったためにあまり入り込めませんでした。 そういえば現代的な解釈を入れてくるミュージカルはロシアでも見た気がします。 mickymm.hatenablog.com

普段であれば少々ストーリーが破綻していても、言語が全く分からなくても、歌の力で引き込まれるのですが、今回はあまりうまく作用してくれませんでした。今度は見たことがあるミュージカルのカザフ版に行ってみたいです。

後日、授業があったので先生に「あの青いコートは誰ですか」と聞いてみると、「私もよくわからなかったけれど、あなたたち原作は読んだことある?ビクトル・ユゴーの作品よ!名作だからぜひ読みなさい。私が若い頃はテレビも携帯電話もなかったからみんなの楽しみは本かダンスパーティーだったのよ」と強引にごまかされました。先生も分からなかったのか。

Пока!