馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

コクトベ

Привет!

朝から携帯の通知が多いので何事かとのぞいてみたら、当局から「今日は‐30度まで下がるので厳戒態勢を!」というお知らせでした。朝は実際に‐30度だったそうなのですが、私がお昼に天気アプリを見たときは‐28度でした。そのままお買い物をしに外へ出ると、鼻で呼吸をするだけで体の内側が凍る感覚を久しぶりに味わいます。この空気がこちらに刃を向けてくるような気温は「寒い」を通り越して「痛い」のですが、きりりと身が引き締まる感じがするので一度体験すると癖になります。

さて、こんな気温が嘘のようなアルマトイ旅行のお話です。今回アルマトイで宿泊した「ホテル・カザフスタン」の近くに丘へと続くロープウェイ乗り場がありました。 行きつく先は標高1070mの丘、コクトベ。聞くところによると上には展望台だけでなく遊園地や動物園もあるとか。楽しみになってきました。ロープウェイは往復で2000テンゲ(660円ほど)でした。登りに使ったチケットを下りにも使うので、なくさないようにしてくださいね。 到着!山を背にしているので、こう見ると平地が広がっていますね。それにしても結構上りました。丘の上は空気がとても綺麗で、こんなに違うものかと少し驚くほどでした。ロープウェイを降りたところは広場になっていて、そこには気になるものがいろいろとあるのですが、とりあえず奥へと進みます。お土産屋さんを通り過ぎ、しばらく歩くと突然どこからともなくビートルズの歌が聞こえてきました。音が大きくなるほうへ歩いていくと、少しだけ大きめに作られたメンバーの銅像が! カザフ人の大家族がこの像と写真を撮り終えるのを待って、私たちも撮影。横の看板にはビートルズの軌跡が書かれていたので読んだのですが、別にアルマトイに来たことがあるわけじゃないんですね。ビートルズのファンの会(?)がここを「待ち合わせ場所にできるように」作ったそうです。え、こんな丘の奥まったところで待ち合わせる人いる?

ビートルズに別れを告げて、奥へと進みます。「鏡の部屋」と書かれた小屋や、的あての屋台、「バイキング」という小さめのアトラクション(船型の乗り物が前後に揺れるもの)などが森の中に点在しており、どことなくさびれた遊園地が想起されます。一昔前のひらかたパークのような。「コクトベ兄さん」とか作って宣伝したほうがいいんじゃないかな。中でも白鳥の形をした乗り物が音楽に合わせてメリーゴーランドのように回る、というアトラクションがあったのですが、子供がロシア語で歌うマイナー調の曲を流しながら誰も乗っていないのに回り続けているのが不気味でした。サスペンスのにおいがするね、という旦那と足早にそこを離れます。その遊園地の右手には小さな動物園がありました。入り口のあたりで紙コップに入った生野菜が200テンゲ(66円ほど)で売られていますが、別に餌付けをしに来たわけではないし、と何も持たずに園内に入りました。入ってすぐはアルパカです。 カメラ目線をいただきました。なんだ、野菜を買わなくても自分の敷地内に草があるのか、と安心して次へと足を進めた時です。ロバと目が合いました。 このつぶらな瞳とかわいさに思わず野菜を買わなければ、という使命感にかられます。入り口まで戻るか、と顔を上げると、そこには狙ったかのように野菜が販売されているではありませんか。ああ、私たちは運営側の思惑通りの良いカモなんだろうな。 ロバが思ったよりも勢いよくニンジンを食むのを見届け、つぎの鹿へと足を進めます。鹿にも野菜を差し出すと、取り合いが始まってしまいました。争いの種をまいてごめん。そこからは怒涛の鳥コーナーです。いろんな種類の鶏に雉、クジャクや鷹、アヒルまで多種多様な鳥を観察することができます。モスクワ動物園も鳥ばっかりでしたが旧ソ連圏は鳥が好きなのかな。

小さい動物園の上に種類が偏っていましたが、かなり癒されました。さらに奥に進むと山側の展望台になっています。 さあ、広場まで戻りましょう。広場では民族衣装を着て写真を撮らせてくれる(そしておそらく高い値段をとられる)コーナーがありました。この後ほかの観光地でもこのようなコーナーを見かけるのですが、そのすべてで狩猟用の鷹(本物)を肩に置かれるのです。時々羽ばたいていてものすごい迫力でした。

広場にもアトラクションが3つほど並んでいます。一つは観覧車。各地の観覧車に乗るのが趣味なのでチケットを買おうかと思ったのですが、よく見たら観覧車の一つ一つの箱がさっき乗ってきたロープウェイの箱と同じものだったので今回は見送りました。もうすでに高いところにいることですし。観覧車の真横にはひっくり返った家があるので一瞬びっくりします。 これはトリックアートのような写真が中の各部屋でも撮れるようで、この丘で一番の人気でした。行列があったので私たちは入っていませんが「カザフスタンで初めて!」という看板がチケット売り場に貼られています。

私たちが一番気になったのはジェットコースター。先にコースを見せますね。 丘の斜面を利用してコースが作られているようで、頼りない線路がうねうねと木々の間を縫って設置されているのが見えます。写真で見るとあんまりですが、実際見ると結構な傾斜がある上に一歩間違えると丘から放り出されそうで結構怖いのです。同じ不安はその場にいた全員が持っていたのか、みんな遠巻きにして乗り場を見つめています。と、その時勇気ある二人組の女性がその乗り場へ一歩踏み出しました。乗り場で待機していた係員のおじいさんに説明を受けながらシートベルト(車についているもの)を締めます。 これがその乗り物。一つに二人乗りで、一台ずつ発進します。彼女たちが叫び声をあげながらも無事に帰還したのを見て、勇気が足りなかった人たちが一斉にチケット売り場へ向かいました。私たちもそれに倣います。

少し並んで、私たちの番が来ました。二人のうち体が大きい方が自動的に後ろに座らされ、私は旦那の前に座って乗り物の前についている取っ手を握るように指示されます。係り員のおじいさんは旦那に「英語がいい?ロシア語分かるん!それはよかった。じゃあこのレバーを握って。前に倒したらアクセル、後ろに倒したらブレーキ。自分で速さは調整してな。コース見える?あのあたり(といってコースの終わりのほうのカーブを指さす)でブレーキを引いてスピードを落とすんやで。分かった?じゃあ行ってらっしゃい!」といって勢いよく押されました。え、アクセルがあるジェットコースターなの!私たちの命は全てレバーを握っている彼に一任されています。これ相当信頼関係がないと危険なのでは。実際走り出してみるとかなりのスピードが出て、カーブのたびに目の前にアルマトイの街が広がります。そして何度かカーブを曲がっていると、先ほどおじいさんがどこでスピードを落とせといったのか分からなくなりました。そういえばさっき列に並んでいるときに後ろの男の子が「もし僕たちが死んだら」とか言ってたな、と思っていると「スピードを落として!」という看板がありました。確かにあの説明を受けていなかったら見逃していたかもしれないような看板です。ああ、助かった。

無事丘の上まで引き上げられ、なんとか帰ってこられました。スリル満点で面白かったです。降り口のところで、いつ撮られたのかジェットコースターを楽しんでいる私たちを正面からとらえた写真を展示していました。私が恐怖と興奮でひどい顔をしていたので笑って通り過ぎようとしたのですが、旦那が「いくらですか?1000テンゲ(330円ほど)?買います」といって買っていました。こういうところで写真を買わない人だと思っていたので理由を尋ねると「俺がいい顔をしてたから」とのこと。そうですか。

園内に流れている音楽や、アトラクションの雰囲気が2000年代前半を思い出させるような、良い遊園地でした。晴れた日に是非どうぞ!

Пока!