馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

リストビャンカの博物館

Привет!

[前回のあらすじ]
イルクーツクについて十分な装備もしないまま早速野外博物館へ行くことになった私たち。これからどうなる!?

ツアーなのでチケットを買う手間などは省け、ガイドさんが案内してくれました。それはすごく有難いんですが、できればどこかの建物の中でこの博物館の歴史とかは説明してくれないでしょうか。まずロシア語だし、ガイドさんも寒いのかめちゃくちゃ早口で途中から脳内の処理能力が追いつかなくなって、ひたすら「寒いというか痛い…暖かいところで眠りたい…」という日本語が頭の中をぐるぐるしていました。 完全防備で案内してくれているガイドさん。足元暖かそうですね…そのブーツどこで売っていますか…。

そろそろ意識が飛ぶかと思ったところでみんなが動き始めました。屋内に入るようです!中は暖房がついていて、いくつかの展示がある広い部屋になっていました。…初めからここで説明始めたら良かったんじゃないのか。ガイドさんも聞いている方もみんな幸せになるやん。

かつてこの村ではガラス細工を作っていたそうで、当時の作品が多く飾られていました。 ソビエト時代にもここで作られていたガラス製品が使われていたそうです。か弱い日本人3人は暖房の前でぼーっとしながら説明を聞いていたのですが、突然ガイドさんの口から「日本」という言葉が聞こえてきてはっと顔をあげました。なんと、あの大黒屋光太夫についての映画「おろしや国酔夢譚」のロケ地に使われたそうなのです。光太夫さんこんな寒いところにいたの…!彼の苦労を身に染みて感じました。

当時の学校が再現されているところを見たり(先生としてここに来た人は、年300ルーブルをもらえる他に、家事をしてくれる女性がついたそうです)、見張り台を見学したり、バーニャ(ロシア式サウナ)を覗いたり、モンゴルのすぐ上なのでゲルに当時の生活が再現されているところを見たり、楽しみました。一通り見終わると、ユーリャさんが「では、1時間後あそこのレストランでお昼ご飯です。それまでは自由時間」と案内します。野外博物館で1時間、生き延びなければなりません。とりあえず目の前に見えているゲル型のお土産物屋さんに入ってみることに。 なんと中には、靴下が大量に売られているではありませんか!!商売上手すぎる。まんまと思惑にはまっていると思いつつも、一足600円もする暖かそうな羊毛の靴下を買ってすぐに履きました。友人に至っては靴の中敷を買っています。なぜかいつもの装備できている旦那だけ何も買わず、平気な顔をしていました。ツアーの他の人たちも続々とこのゲルに入ってきます。時間つぶしに怪しげな占いを受けている人たちもいて、みんな屋外は寒かったようです。しかしゲル自体も暖房があるわけではなく、そんなに暖は取れません。

さあ、あと45分ほどあります。外に出るとユーリャさんがいたので「寒いんですが、暖かいところはないですか?」と聞いてみました。「あそこに綱があるの見えます?」「ありますね」「みんなで綱引きをして体を温めましょう!」…なんですと。綱引きは手袋で滑ってうまくいかなかったので、4、5人で履くスキー板のようなもので一体感を高めたり、 氷の滑り台を登ったり滑ったりしながら、体を動かすという原始的な方法で暖をとりました。なんだか大事なことを忘れていたようです。

滑り台の横に馬がいました。ユーリャさんに聞くと、一人400円程で馬ゾリに乗れるとのこと。面白そうだったので馬番のおじさんに声をかけて乗せてもらいました。まあまあ広いこの野外博物館を一周します。 思っていたより速くて、ビュンビュン風を切り…冷気が肌を刺すようです。図らずも日本に帰るためにエカテリーナ2世に謁見しようとシベリアをそりで駆け抜けた大黒屋光太夫の気持ちを味わうことになりました。しかも彼は別に望んだわけではないのにこんな思いをしたのかと思うと泣けてきます。

そうこうしているうちにやっとレストランに入れてもらえる時間になりました。お昼の席で他の人に聞いてみたら犬ゾリをした人、ブランコをした人、などみんな想い想いの方法で過ごしていました。 こんな雪像がいたるところにありました。願わくばこの火が本物だったら…。

お昼を食べると次の博物館へ向けて出発です。予定表通りのバイカル湖博物館へ!

恥ずかしながら、ここに来るまでバイカル湖の形を知りませんでした。こんな三日月形をしており、今いるリストビャンカは三日月の下にあります。そして真ん中に並ぶ二つの島のうち、左側にあるのが翌日から行くオリホン島。 博物館の展示は、地球の誕生から始まっており、この湖の長い歴史が感じられます。実際にはインド亜大陸がユーラシア大陸に激突して食い込んだときに、プレートが陥没した部分だそうです。今でも一年に2mmずつ幅が広がっているのだとか。というわけで、今は広さこそ世界第7位ですが(一位はカスピ海…って海やん)、歴史の長さ、そして湖の深さ、透明度は世界一位です。世界の20パーセントの淡水はここにあるという話でした。

こんな湖なので、固有の生物も多く生息しています。この博物館ではそんな生物を集めた水族館が併設されていました。 バイカルアザラシです(旦那曰く「エビフライみたい」)。この博物館でも専属のガイドさんが案内してくれて、色々お話を聞けたのですが、チョウザメの前では「この魚の卵が、あの有名なキャビアですね。海外から来たお客さんには英語でガイドするんですが、その時に『ロシアの伝統的な朝食には欠かせないキャビア』というとめっちゃ受けがいいです。そんなわけないのに」と言っていました。バイカル湖にしか住んでいない淡水魚といえばオームリが有名なのですが、最近では乱獲されてかなり数が減っているそうです。 こっちを向いて口を開けているのが、ガイドさん曰く「開館当初からの同僚です」

このガイドさん、途中から魚についての説明が「これは美味しいです。こっちはそこまで美味しくないです」みたいな感じでかなり雑になっていました。

水族館部分が終わると、2階にあがって微生物の見学です。 顕微鏡で。めっちゃ本格的です。バイカル湖の透明度を保ってくれている微生物の写真も撮れたのですが、ちょっとお見せできる感じではないので気になる人はぜひ博物館へ。

微生物はもう一生いいかな、というほど堪能した後、地下にある「潜水艦」へ。ここでは潜水艦型の部屋に入って、バイカル湖に実際に潜ったかのような映像を窓から見ることができます。前にあるモニターで今の水深が表示されていました。実際に潜ったわけではないのに、あまりにリアルで耳の中の気圧が変わった感覚に陥りました。 ここが最深部、1637m。水圧で押しつぶされそうです。バイカルアザラシも窓から覗いてくれたり、サービス精神が旺盛でした。

このバイカル湖博物館はためになる上に展示方法もユニークで面白いので、ぜひ!本当に暖まることができます。そしてここで気を緩めた私たちは、これから今日一番寒いところに行くことになろうとは夢にも思っていないのでした…。

Пока!

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