馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

地下都市で迷子

Привет!

これまでも3時間ほど車に乗って目的地へ向かう、ということはありましたが(直近では5月のアルマティ→チャリンキャニオンでしょうか)、やはりカザフスタンの風景とトルコの風景は全く違いました。ヌルスルタンの周りは本当に見渡す限り山どころか丘、むしろ起伏すらなく、遊びに来た友人曰く「感動するレベル」ですしアルマティの周りは遠くの方に山がそびえており、そこまで平らな草原が続いています。

アンカラを出る時から少し下り坂になっていて、遠くの方まで緩やかな起伏が続いているのが新鮮でした。アンカラを出てすぐは「アルマティに近いなあ」とぼんやり考えながら窓の外を眺めていましたが、しばらくするとやはり起伏が始まるのです。さまざまな濃さの緑で織られたパッチワークのようでした。 見ていて飽きません。

ナビ役の旦那が言ったように、「94km道なりに進んで、左折、70km進む」の左折のところまで来ました。この左折の手前になって、それまで1時間ほどだんまりを決め込んでいた携帯電話のナビアプリが突然「500m先、左折です」と喋ったのには車内全員が心底驚きました。誰も音声ナビ機能を切っていたと思っていたからです。 ちょうどこのオブジェの周りを回るように左折。よくみると、模様が全てカッパドキアの奇岩の形でできているんですね。奇岩の形なんて何通りもあるはずなのに、カッパドキアの文脈でこの形をみると「ああ、奇岩の形か」とわかるデザインは流石です。

最後の70km。車の数が少し減って、道の状態が少し悪くなり、それでも景色は雄大なままでした。カッパドキアまであと10kmというところまで来ても、緑の風景はあまり変わりません。よく写真で見ていた奇岩が並ぶ茶色い風景にそんなにすぐに変わるのだろうか、と不安になりながら進んでいくと、突然景色が拓けました。 塩湖を出てから早2時間ほどです。ようやくたどり着けました。

とりあえずホテルにチェックインして遅めのお昼ご飯を食べます。この日の宿に関してはちょっと奮発したのでまた別の記事で詳しく書く予定です。お楽しみに。あまりにも良いところだったのでここでゆっくりしていると、気がつけば17:30になっていました。ほとんどの観光地は19:00にしまるそうで、慌てて車に飛び乗ります。向かった先は車で30分ほどのところにある地下都市「カイマクル」です。

のどかな田舎道を爆走する車。幸運なことに対向車も後続車もいなかったので、とても気持ちよく走れました。途中から奇岩もない、日本の田舎の村のようなところにどんどん車が入っていくので少し不安になってきました。本当にここにあるのかな? 最後の角を曲がると、小さなロータリーのような広場の前に二、三軒のお土産物屋さんがあったかと思えばその奥に博物館らしき建物が目に飛びこんできました。 車を広場に停めると、近くを歩いていたおじさんに「今何時?」と聞かれました。「18:15だよ」と返すと「博物館に来たんだろう?19:00までだから早く入りなさい!ほら、走って!」と突然アドバイスされ、びっくりしながらもとりあえずみんなで走ります。お土産物屋さんでは10人くらいの観光客がそれぞれ楽しそうに商品を選んでいました。楽しそうだなあ、混ざりたい。

チケット売り場でチケットを受け取った瞬間、窓口が閉められました。ほんまにギリギリや。 カッパドキアで公開されている地下都市はここ「カイマクル」と「デリンクユ」の二つだそうです。火山灰でできたカッパドキアの岩質は柔らかいため、紀元前にはすでに地下都市が作られていたと言いますが、詳しいことはまだまだわかっていません。4世紀ごろ、アラブ人たちがこの地域に入ってきたときにキリスト教徒がここや奇岩の中で暮らしていたそうです。そしてこの地下都市は4000人もの人が暮らしていたとか。

事前情報はそれくらいしか仕入れていなかったのですが、この地下都市に足を踏み入れた途端その知識を疑ってしまいました。ここに4000人?そんなことができるのか?行った時間がまずかったかもしれません。閉館間際のこの地下都市にはほとんど人がいなかったので、想像が全くできなかったのです。想像していたより空気は全く悪くなく、うまくどこかで排気できているのでしょう。

はじめこそ後世に作られたと思わしきしっかりしたコンクリートの階段がありました。その階段を降りるとこんな部屋にでます。 ここに立った時に確信しました。…気をぬくと迷子になる。写真にも写っていますが、申し訳程度に順路の矢印があります。しかしこの矢印をたどっていくと出口にたどり着く訳ではないことはしばらく従ったところで分かりました。途中で矢印がなくなった時には見捨てられた気分になりました。

壁画がある訳でもないので、各部屋の特徴は素人目には全くわかりません。ここから来たはずだ、と3人で相談しながら戻ったつもりでも大抵初めての部屋と出会えます。 また通路もこれほど細く、緩やかに下降したり上昇したりしているんのですが、かなり足を滑らしそうになります。写真に写っているのは身長157cmの、なぜか先行隊に選ばれた私ですが、それでも膝を折らないと頭をぶつけてしまいます(あとで旦那が撮ったこの写真を見て、彼にはそんな余裕があったのかと驚きました)。階段があるところも、真ん中がかなりすり減ってしまっていて滑り台のようになっていました。端的にいうととても歩きにくいので、スニーカーで行くのをお勧めします。あとスカートは本当にやめたほうがいいです。今回の旅行には写真映えを狙ってロングワンピースばかりを持ってきていたのですが、最後の最後でショートパンツを荷物に入れた自分に心から感謝しました。

アリの巣を体験したい人にはここは本当にオススメです。はじめは閉館時間までに45分もあれば十分だろうと思っていたのですが、20分ほど立ったところで「今日はここで一夜を過ごすことになるのではないか」という気になってきました。今はライトが点いていて明るいけれど、夜になったら真っ暗になるのかな。期せずして1700年前の生活を体験できるのか!それは絶対に嫌だ。

地上への執着心が勝ったのか、あと10分で閉館するという時になってようやく、この角を曲がれば出口への階段があるはず!というところまでたどり着けました。良かった。3人でお互いを称え合いながら角を曲がった瞬間、人にぶつかりそうになりました。「すみません!」と思わずロシア語で言うと、その人はびっくりしたようにこちらを見たあと、私たちの後ろを指さしました。…振り返っても元来た道があるだけです。えっと、出たいのですが…と英語で言っても、彼は後ろを示し続けます。「戻れってこと?」この狭い通路で、どちらかといえば体格のいいおじさんとすれ違うこともできず、私たちは後退しました。おじさんの後ろに階段が見えていたのに。

さて、無事に時間内にでられるのか!?そもそもこのおじさんは誰だ!?

長くなったのでこの辺りで。
Пока!