馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

ハチャプリ屋さんでおしゃべり

Привет!

朝起きたら大雨が降っていて驚きました。こんなにしっかりした雨を見たのは久しぶりです。でもヌルスルタンでは通常夏はよく雨が降るらしく、8月はそれに加えてもう寒くなるのだとか。まだ未経験のこの地での夏、今から満喫する気でいないと一瞬で終わってしまいそうです。何より驚いたのは、草むらから虫の声が聞こえること!ここに住んでもう9ヶ月ですが、初めて聞いた気がします。草むらの真ん中で突然立ち止まった私を周りの人が怪訝な顔で追い抜かして行きました。

さて、友人と週2回ロシア語を習っている大学はヌルスルタンやや中心部、サーカスの向かいにあります。時々授業の後に二人でご飯に行くのですが、もっとも近いレストランは二つしかないので、あまりにも通いすぎてメニューを全制覇しそうです。というわけで、ある日はじめてのお店に挑戦してみました。その時参考にさせていただいたのが、この記事。サーカスのそばにハチャプリ屋さんの屋台のような小さなお店があるのは知っていたのですが、なかなか勇気が出なかったのです。 こちら。この季節になると、もう中の席が埋まっていてもテラスというか、外のテーブルで食べられるのでやっと行く決心がつきました。

店に近づくと、外のテーブルにはおばちゃん3人組が座って仲良くお話をしているところが目に入りました。人気のお店なのかな。彼女たちを横目に見ながら、お店の窓から中に声をかけます。中にはひとりの店員さんらしき女の子がいましたが、私たちが来たことに多少うろたえているようでした。すると外で座っていたおばちゃんのうちの一人が突然立ち上がって私たちに「どうしたの?」と声をかけてきます。いや、どうしたって…ただハチャプリを食べたいだけですが…と答えると「あらお客さんだったの!!どこでも座って!え、中?もちろん席あるよ。すぐ作り始めるね!チーズとアジャンスキーのどっちのハチャプリがいい?」と勢いよく話し始めました。ちなみにチーズハチャプリはピザのような見た目で、アジャンスキーは目玉のようなものです。よくハチャプリと聞いてイメージするのはこちら。私たちも例に漏れずアジャンスキーと、紅茶を注文しました。

このお店は生地の成形から目の前でハチャプリを作ってくれます。その作業の手を全く止めずに私たちに話かけてくれました。外のテーブルで話していたおばちゃんの一人はここの店長だったようです。先に店内にいたお姉さんは長くなると思ったのか紅茶を入れてくれます。「あなたたちはどこの人?中国?」「いいえ、日本ですよ」「日本!日本といえば一年ほど前、この店が出来たばかりの時に日本人のジャーナリストが来たわ。名前は確か…◯◯」先ほど言及した、私がここに来るきっかけになった記事を書いた人の名前です。一年前に聞いた日本人の名前を覚えているとは…さすが客商売。 私もブログをやっているんだけど、そこに載せていい?と許可をもらって撮影したそのおばちゃんの写真がこちら。いい笑顔です。後ろのオーブンではハチャプリが焼かれています。

彼女はアルメニア人で、アゼルバイジャンに住んでいたそうです。1988年に領土問題から二国間で戦争が勃発。1994年まで続きます。彼女はその時にアゼルバイジャンから逃げて、カザフスタンに移住してきたそうです。初めは違う仕事をしていましたが、去年ようやく自分の店を持てたのだ、と嬉しそうに話してくれました。

店内はザクロをモチーフとした置物をはじめ、コーカサスの雰囲気が味わえる小物で飾られています。 これらはアルメニアのものだよ、と教えてくれました。

アルメニアで地震があった時(おそらく1988年のマグニチュード6.8のものでしょう)に真っ先に日本が支援してくれたことは忘れない、だから日本のことはアルメニア人は好きなんだ、と語ってくれたことは忘れられません。そこから日本についての素朴な疑問や、日本語で何か歌ってくれと言ったリクエスト(おそらく彼女は歌が好きなのでしょう。話が途切れると鼻歌がすぐ始まりました)など、いろいろなことを話しました。何か日本語を教えて、というリクエストはよく受けるので色々と用意をしているのですが、歌はパッと思いつかなかったのでいくつかレパートリーを持っておく必要がありますね。この時はとっさに「まんが日本昔ばなし」の「にんげんっていいな」を歌いました。

いつもこういう話を振られると自国の文化がある程度世界に知られているのが嬉しくなるのと同時に、ある程度こちらからも質問ができるくらいには相手の国の文化について知っていれば…と自分が不甲斐なくなります。

そんなこんなで20分ほどたった頃、ハチャプリが焼きあがりました。アジャンスキーハチャプリです。 晩御飯のつもりだったので足りるか不安でしたが、一人では多いくらいでした。味は絶品!ハチャプリはやっぱり焼きたての熱々にかぎりますね。ただ、この店にはカテドラリーというものが無いようで、紅茶の砂糖をかき混ぜるのも、近くにあった調理に使うスプーンでしたし、ハチャプリも大きいのに「食べやすいように切るね!」と言ってピザカッターで切られた後は手づかみでした。そうなると真ん中のチーズ部分が結構食べにくいのです(熱いので)。でもそんな食べにくさを軽々と乗り越えられるくらい美味しかったので、またおしゃべりをしに訪れようと思います。

Пока!