馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

バケツは大事

Привет!

四月ももうすぐ半ばに差し掛かろうとしていますね。ついこの前、年が明けたのに!この四月から新しく一人暮らしを始めた人や引っ越しをした人もいると思います。生活の基盤になる場所だからこそ、家探しは大事ですよね。うちは旦那が転勤族なので賃貸で暮らしていますが、家賃や間取りの次に大事なのは大家さんの人柄だと最近痛感しています。特に海外に住んでいると、家のトラブルに対処するために一体どこへ連絡すればいいかわからず途方に暮れそうですが、とりあえず大家さんに連絡すれば大丈夫、というのはかなり安心します。これで連絡しても対処してくれない大家さんはよくないですね。今思えばモスクワの大家さんはいい人だったのですが、あまり緊急性のないトラブルはメールをしてもしばらく未読無視されました。家賃を受け取りに来るときに「そういえばあれどうなった?」と聞いてくれるのですが、だいたいそのころには自分で対処して解決しているか気にならなくなっているので、毎回「もう大丈夫です」と答えていました。なぜかトラブル発生時には旦那が出張でいないので、私自身が強くなっているとさえ思っていました。

…でもそんな悠長なことを言ってられるのも緊急性がなかったからなのです。

日本への一時帰国を終えた翌日、旦那は仕事でいなかったので荷物を片付けながら友達と電話をしていました。すると突然、バサバサッという音がキッチンのほうから聞こえてきました。レシピ本や雑誌が床に落ちたのかな、と思いながら電話をもって見に行くと、床には見慣れないものが。 なにこれ?友達も電話の向こうで「なんやったん?」と聞いています。「何か分からん…どこから出てきたのかも分からん」と言いながら触ってみると、なんだか濡れた砂のような手触りです。もしかして、漆喰!?慌てて天井を見上げるとそこには ああ、確実にここから落ちてきたんだ。慌てふためく私に、友達が「落ち着いて、状況説明して」と言ってくれます。一生懸命説明するもむなしく、私の頭の上にぽとん、と水滴が落ちてきました。雨漏り?あるいは上の階の人の水道が爆発したのかな、というところまで考えて、ある事実に思い当たりました。ここは最上階で、最近晴天続きだった。

考えているうちにもぽとん、ぽとん、と水滴は落ちてきます。何から手を付けていいか分からない私に、まさかの雨漏り経験があった友達は「まず床の濡れているところを拭いて。そこに新聞紙かいらない紙や布をひいて、その上に洗面器やバケツをおいて」と的確な指示を飛ばしてくれました。「床に落ちた漆喰は乾く前にふき取って、ところでそれ何の水?」と聞かれてしばらく考え、やっと答えが分かりました。「あ、雪解け水だ」

とりあえず上の二枚の写真を大家さんに送ると、すぐに返事がきました。「今マンションのサービス会社に電話したよ。僕も今からすぐ行く」というメールの15分後には大家さんがやってきます。まずは大家さんに見てもらい、二人でサービス会社の人が来るのを待ちました。その30分後に業者の人が到着。問題の個所を見せると「雪解け水ですね。とりあえず屋根の上の水をすべて取り払います」とのこと。この時点で夜の9時でした。

大家さんも業者の人も出て行ったので、とりあえず旦那の帰りを待ちます。大騒ぎでご飯も作れていなかったので、とりあえず何か作るか、と鍋を出したところで、上からダーッと水が落ちてきました。先ほどとは違う場所です。友達の言葉を思い出しながら、何に使うのかとおもっていたバケツを取りに走り、同じような処置をしました。今度は水滴というより、滝のような量だったので、バケツの水を捨てながら水が止まるのを待ちます。雨漏り(雪解け水漏り)の下にバケツを置く経験なんてまさか人生でするとは…と感慨深く思っていると、突然警報が鳴り響きました。びっくりして上を見ると、なんと火災報知器のところから水が落ちてきていたのです。

慌てて大家さんに連絡します。「とりあえず危ないから電気はつけるな」と言われます。日が長くなっているとはいえ、日没は8時過ぎ。暗い、警報が鳴り響く部屋でどうしようかと悩みます。

ところで、我が家は外国人用のマンションで、セキュリティなどもしっかりしており、インターホンが鳴ると来訪者が映るスクリーンがあります。 警報がなるとこのスクリーンいっぱいに「火事です!」という文字が出ていました。その下に「ストップ」というボタンも。火を使ってないので火事でもないし、この恐ろしい警報音を止めるにはこれだ!とストップボタンを押そうとした途端、どこからか声が聞こえてきたのです。「どうしましたか?大丈夫ですか?」と。スクリーンの上にスピーカーがあることにこの時まで気が付きませんでした。とりあえず「火事じゃないです。水が火災報知器のところから落ちてきて、それに反応しているだけです」とスピーカーに向かって叫ぶと「そうなんですね。わかりました」と電話が切れました。警報音はなり続けています。切ってくれへんのかい。

何もしてくれなかったのでとりあえずストップボタンを押すと、「暗証番号を入れてください」と表示されました。4桁の数字のようです。暗証番号!?とりあえずこの家の部屋番号を入れてみましたが「違います」という非情な文字。そこへ大家さんがやってきました。「大丈夫!?」といいながら問題の個所を見に行きます。「とりあえずこの水が止まるのを待つしかない。え、暗証番号?なにそれ、そんなんがあるの?とりあえず今上で作業しているからもう少し待って」とのこと。え、なんで暗証番号知らんの?そのまま大家さんは出て行ってしまいました。

スクリーンをいろいろいじっていると、一時的に止める方法(また2分後に鳴り出す)と、警報音を変えるという無駄な機能は発見しましたが、鳴りやみません。変更した警報音が前のものより危険度が増しているような音だったので、必死で暗証番号を考えました。とりあえず、基本の「1234」を入れてみます。
…「正解です!」の文字が出てきた後、警報音が止まりました。え?そんな数字でいいの?それ一番暗証番号にしたらいけないって言われている数字じゃない?

警報音も止まって、天井からの水も止まったころ、計ったかのようなタイミングで旦那が帰ってきました。さあ、ここからどうやって直すのかな。戦いは長引きそうです。

Пока!