馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

メデウでスケート

Привет!

計算を間違えて、年内にアルマトイの旅行記が終わらないという事実に気が付きました。ということで、もう年の瀬ですね。クリスマスからの一週間はいつも記憶がなく、気がつけば31日だったりします。

さて、アルマトイ二日目の目玉はメデウでした! ちょっとブレていてすみません。このフォトスポットの横に、例の本物の鷹を肩に乗せて写真を撮ってくれる人がおり、変に写真を撮っているとお金を取られそうだったからです。

メデウとは、アルマトイ市内から30分ほど車で山の方に行けば着くところで、ここにはスケートリンクがあります。タクシーで市内から10分も走るとともう、美しい山並みの中にいることに気がつきました。本当に山が近くていい街だな。

このスケートリンクの少し下にはスキー場へ行くためのゴンドラがあります。でも今回は装備もないしスキーはパスかな。ということで、とりあえず気軽に楽しめるスケートをすることにしました。 標高1691メートルに作られたこのスケートリンクは世界でも有数の高地にあり、空気抵抗が少ないためスピードスケートの世界記録が多数生まれたそうです。なのでリンクの壁にスピードスケートの絵が描かれているんですね。リンクへの入場料は1800テンゲ(600円)です。入り口のチケット売り場の料金表にレンタル靴の値段も書かれていたので、入場券とレンタルをお願いすると「中で借りるときに支払いもしてください」とのこと。…じゃあここに書かなくてもいいのに。

ファンタがスポンサーについているようで、なんと入り口のところで無料のファンタをもらえました。そのファンタを配っているゲートをくぐると、素晴らしい景色が目に飛び込んできます。 こんな絶景の中でスケートができるなんて!さっそくスケート靴を借りに行きます。リンクから見ると半地下になっているところに「レンタル」の文字を見つけ、たくさんの人でごった返す中をお支払いカウンターに向かって進みました。するとそこの人に「返却の時にお支払いください」といわれたのです。後払いシステム!時間制だったので延長したときに正しく請求できるからかもしれません。ただ、ここで何より驚いたのは自分の靴を預ける場所の位置でした。貸出カウンターで「脱いだ靴を預かってもらえる場所ってありますか?」と聞くと「ガルデロープが上にあるよ」とのこと。上? なんとここは二階に自分の靴を預けるので、預けた後はスケート靴で階段を上り下りするというリスクがあるのです。必死に手すりにしがみつきながら、何とか転ばずに靴を預けて回収することができました。これは確実に設計ミス…。その件のガルデロープにはお客さんが預けた靴以外にも多くのコートがかかっていました。え、みんな標高1700メートル(富士山でいうと2合目と3合目の間あたり)のスケートリンクでコート着ないの?

実際、リンク上には着ぐるみを着た人が多く(フリース生地の、つなぎのような形状のもの)、ピカチュウやトトロなど日本のキャラクターも見かけました。それでも寒いと思うなあ。なかにはタンクトップで滑っている人までいます。リンクの真ん中にはステージが組まれ、DJがフロアを沸かしていました。スケートをしながらクラブにいる気分です。周りに若い人が多いのも納得でした。2時間もスケート靴を借りましたが、久しぶりだったので体力が持たず、一時間弱でやめることに。でも氷の質も高く、リンク周りにはたくさんのカフェがお店を出しているのでスケート靴のまま食事もできますし、とてもいい環境でした。

さて、ここまで来たのにこれだけで帰ってしまっては勿体ないと思いました。旅の友である『地球の歩き方』によれば「リンク裏にはダムがあり、長い階段を上り詰めるとさらに美しい山あいの自然が見られる」とのこと。それは行ってみるしかない!ということでDJの音楽を聴きながらリンク裏へ回ります。 階段へと続く長い緩やかな坂道の傍には小川が流れており、どこか日本の温泉街を思い出します。

その坂道をいくら進んでも階段が見えてきません。もともと疲れたからスケートをやめたのに、これではあまり意味がありません。 ここまで上がってきました。奥に見えているのがスケートリンクです。

すると突然目の前に階段が現れました。木々に隠れていたようです。下から見上げると、階段がどこまで続いているのか分かりません。また運が悪いことに霧が立ち込めてきました。階段のスタート地点にはロシア語とカザフ語と英語で書かれた看板が立っています。そこには「自分の健康状態がいいことを確認してください。靴はしっかりしていますか?」という文から始まる注意事項と禁止事項がずらっと書かれていました。え、そんな危ないところなの? さあ、のぼりはじめましょう。記録のために旦那と二人で数え始めます。300段くらいまで声に出して数えたところで息が切れてきました。早くも降りたくなってきましたが、ここまで来たので「美しい山あいの自然」が見たいです。 野生のリスもいました。500段あたりで、何とも間の悪いことに雪が降ってきました。急速に積もっていきます。私たちだけなら不安で引き返していたかもしれませんが、前後にも何人か一緒に上っていたので言葉は交わさなくてもどことなく一体感が生まれてきました。600段付近では簡易のカフェがあり、暖かいお茶やシャシリク(バーベキュー)なども注文できますが、何かを食べる気にはなりませんでした。いや、そもそも何段あるんだろう。

10段ごとにちょっと休憩しながら、なんとかてっぺんにつきました!二人の結論は838段だったのですが、先ほどスタート地点にあった看板の写真を見返していると842段だと書いてあるのを発見しました。やっぱり数え間違えたか。さあ、絶景が目の前に― 雪が降っていたのです。標高にして1750m、雲の中にたどり着くことは想像できたはずでした。必死で上は見ていませんでしたが。みんなはここで記念撮影をしていましたが、背景が真っ白なだけだと思ったので私たちはとっていません。そしてここにきて帰りが怖くなりました。ずっと私たちの上を並行してゴンドラが通っていたので階段の先に乗り場があって帰りはゴンドラで帰って来られるのではないかという淡い希望があったのです。写真で見てわかるようにゴンドラは私たちの頭上を悠々と通り過ぎていきました。ということは、今上ってきた階段を降りるしかないのか…。しかも、今は雪が積もっています。一部の段は凍っていました。足を滑らすと確実にけがをします。

一段一段の幅も違えば高さも違うこの階段を安全に降りるために、手すりにしがみつきながら一段ずつ足を運びました。スケートリンクでもここでも手すりにしがみついてばっかりです。 登りよりもはるかに緊張しながら、なんとか降りてこられました。階段前の広場では乗馬体験ができるのか、なぜか馬が立っていたので山を背景に写真を撮らせてもらいました。かっこよかったです。

無事にスケートリンクまで戻ってきました。市内までバスで行こうと思いましたが、満員だったのでタクシーアプリを起動してみます。こんな山奥にタクシーは待っていないか…と思いながら呼んでみると、一台だけヒットするではありませんか。その車に乗せてもらい、市内まで行ってもらいます。運転手さんは「じつは子供たちが今スケートで遊んでいるんです。あなたたちも滑りました?あのリンク良いですよね」と話してくれます。タクシーというか家族を送り迎えするお父さんだったの…!それより、市内までは30分かかります。往復で1時間。大丈夫なのかな…と心配していると、案の定途中で電話がかかってきました。「あなた今どこ!?」と聞こうとしなくても聞こえてきます。ああ、ごめんなさい…いや、私たちは悪くないけれど。無事目的地で降ろしてもらい、彼が家族に怒られないよう祈りながら別れました。

Пока!