馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

お魚屋さん

Привет!

今朝から細かい雪が降っていて、地面の茶色くなった雪をうっすらと白く覆っていきました。風景としてはとてもきれいなのですが、この新しい雪は氷におおわれている地面も隠してしまいます。なので日中私も一度綺麗に滑ってしりもちをつきましたし、歩道には何人もの滑った跡が残っていました。打ちどころによっては骨折もするので、本当に気を付けたいと思います。

さて、先日タクシーの運転手さんとおいしい魚がないと盛り上がったばかりですが、スーパーでも魚が置いているときもあります。ただ、種類が少ないのです。鮭しかないときもあります。先日、お友達から家の近くの魚屋さんで鰤が手に入ると聞き、早速行ってみることにしました。そもそもこの国に魚屋さんがあったなんて驚きです。やはり内陸国なので、魚より野菜より、肉を食べると聞いていました。

魚屋さんに向かうことにした日は、偶然にも吹雪の日。魚屋さんの位置はおおよその目印しか聞いていなかったので、迷いに迷いました。同じところを行ったり来たり、でも往復するたびに自分の足跡が消えていくことに少し恐怖を覚えます。吹きつける雪に耐えられず、目の前にあったお肉屋さんに入りました。売っているものが正反対のお店で「お魚屋さんはどこですか」と聞くことには少し罪悪感を覚えましたが、店員さんのほうから「どうしたんですか!?」と悲鳴にも似た声をかけられました。それほど私の姿はボロボロだったようです。「あの…魚を買いたくて…」私はお肉屋さんで何を言っているんだ。「あ、魚屋さんならこの道をまっすぐに行ったところにありますよ!上に「魚屋」って書いてあるからちゃんと見ながら歩いてね!この道ですよ。ところで肉を買いませんか」と店員さんは道を教えてくれたり商品を勧めてきたりしながら店の外まで見送ってくれました。ありがとう…あなたのご好意を無駄にしないようにちゃんと魚を買って帰ります。

お肉屋さんに言われた通り上の看板を見ながら歩き続けました。すると、先ほど何度も前を通ったはずのところに突然看板が現れたのです(おそらく吹雪で視界が狭まっていただけ)。 その時は写真を撮る余裕がなかったので、後日撮った写真です。入り口は一見ビール屋さんでした。よく見れば入り口の横に魚の写真と共に「私のお魚ちゃん(Рыбка мая)」という店名が書いてありました。お店を見つけただけで嬉しくて泣きそうになりながら、ビール屋さんの奥にある魚屋さんへと進みます。 魚屋さんの入り口。ロシア語とカザフ語で「魚」と書いてあります。文字の上にある金魚が何とも言えない表情をしていますね。それにしても、この入り口からうかがえる中の様子が、私の知っている魚屋さんとは少し異なります。中に入ってみると、スーパーにある冷凍食品コーナーのようなクーラーボックスが壁に沿って5つ並べられており、計りが乗ったレジらしきテーブルをはさんで、ケーキ屋さんのようなショーケースが置かれていました。クーラーボックスを上から覗き込むと、凍った魚がこっちを見上げています。ちょっとびっくりして後ずさりそうになった私に、店員さんが「何が欲しいですか?」と聞いてくれました。

とりあえず目についたサンマ(Сайра)とブリ(Лакедра)があるか聞いてみると、ありますよ、と言って凍ったサンマを選ばせてくれます。日本で見るものより少し小ぶりでしたが、3匹買っても180テンゲ(60円)と非常に安価でした。では次にブリを、と店員さんが呼ぶほうへ行ってみると、彼女はクーラーボックスから丸々のブリを出してきました。「これでいい?」と店員さん。「え?これブリなんですか?」と切り身しか見たことがなかった私。「そもそもこれどうやって捌くんですか?」ときくと、魚のお腹のあたりにナイフを入れるジェスチャーをしながら「シャッてここを切って、内臓を出せばいいのよ」と言われました。気が付くとそのブリをビニール袋に入れて持って帰るために包んでくれています。いまさら要らないと言い出せず、店員さんがそんな簡単そうに言うなら、ととりあえず買ってみました。一匹で2700テンゲ(900円)ほど。安くはない買い物です。

私の指の先から肘までの長さがあるブリはかちんこちんに凍っており、それとこれまた凍った小ぶりのサンマ3匹、そしてブリ大根にしようとスーパーで買ってきた大根を持って帰途につきながら、ちゃんと食べられるか分からないけれどとりあえず魚も大根も棍棒にできるので武器は手に入ったな、などと考えていました。 家について改めてブリを眺めながら途方に暮れます。思わず実家に電話してしまいました。母のアドバイスに従い、とりあえずその日はサンマの塩焼きにし、家に帰ってきた旦那に冷蔵庫で解凍中のブリを見せました。たじろぐかと思いましたが、彼は子供のころに出刃包丁を持って釣った魚を捌いていたらしく「週末にブリパーティーするか」と言ってくれました。なんと頼もしい。しかし「うちって出刃包丁あったっけ?」と聞かれたので家にある包丁を全部見せると少し困った顔をしていました。 週末お友達を二人家に呼んで、ブリを捌く旦那をみんなで見守ります。写真は三枚におろして粗を鍋にするために食べやすく切っているところ。三枚におろしたほうは照り焼きにしてくれました。捌いている間は「もうしばらくしたくない」とぼやいていた旦那ですが、食べ終わるころには「楽しかったから一か月に一回くらいならしてもいい」と言ってくれました。また我が家の食卓に魚が並ぶ日が来るかはわかりませんが、少し我が家の食卓が豊かになりました。 Пока!