馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

グレイテスト・ショーマン

Привет!

天気がいい!ということは気温が低い!というわけでモスクワ川が凍り始めました。今年は砕氷クルーズできるかな?

さて、映画初めをしてきました。今年1本目は「グレイテスト・ショーマン(величайший шоумен)」です。今回はロシア語も直訳。 もともと、日本版の予告編を弟に勧められて見た時から見たくてたまりませんでした。年末にバス停でポスターを見かけて、モスクワでの公開日を知ります。公開が始まってから2週間もしないうちに上映館が急激に減ることがそろそろわかってきたので、タイミングと勢いで見にいきました。

まずは予告編をどうぞ(日本語です)。

あらすじは、貧しい家出身のバーナムが「ショービジネス」という概念を生み出し、周りに支えられながら「誰もが輝ける場所」としてエンターテイメントを作り上げて行く、という実話に基づいたものです。言ってしまえば王道でした。

結論から言うと、めちゃくちゃ良かったです!今のところ今年一番と言えます(※今年一本目)。ミュージカルとヒュー・ジャックマンが好きなので見る前から安心感はあったのですが、もう本当に見て良かったです。去年の映画初めもララランドでミュージカルだったのですが、私は「グレイテスト〜」の方が曲もテンポも好きでした。とりあえず今はサントラが欲しいです。

そして何より中学生の時に「ハイスクール・ミュージカル」にハマって友達と完璧にコピーできるくらいになっていた私からすると、ザック・エフロンが完全復活していたのが本当に嬉しくてたまりませんでした。彼は本当にミュージカルで映えます。ヒューとザックの掛け合いの歌があるのですが、とりあえず目と耳が幸せでした。この映画はカメラワークがおしゃれで、何度も「そう映すのか…!」と唸りました。一度は泣かされもします。

いつものように歌のシーンだけ原曲(英語)で、下にロシア語の字幕が出る形式でした。2Dで420p(840円)。お値段以上の価値がある映画です。そして相変わらずエンドロールになった瞬間に出口に急ぐ人々。今回は後少しで終わる、という時にスタッフが「もう終わったかな?」と入り口のドアを開けて、光が入ってきました。どうなってんねん。でもこれだけネットで新作映画もすぐに見られる国でも劇場内は満席だったので、希望はまだあるな、と安心しました。

ここからは少し真面目な話。

いつも言葉の壁を感じないように映画を鑑賞する数日前からかなり下調べをするのですが、今回は突然見に行くことを決めたので1時間前にちょっと調べただけでした。しかも日本公開前なので、情報が少ない…ですが、実話ということは本人の情報は残っているはず、と思い調べるとヒットしました。読んでいくにつれて、不安が押し寄せてきます。というのも、実際には「フリーク・ショー」として奇形の人や珍しい人種の人たちを見世物にしていたのです。しかも宣伝は上手かったのですが、炎上商法で色々なところから訴えられている、なかなか酷い人でした。

そもそも私は馬鹿にした笑いをあまり好みません。できれば周りにいる人たちが馬鹿にして笑ったり、反対に笑われたりして欲しくないなと思っています。もしこの映画がリアリティを追求して作られていたら、最後まで耐えられるか不安だったのです。しかも予告編ではショーの出演者の中にアジア系もいました。今のところモスクワで「アジア系だから」と不当な目にあったことはあまりありませんが(一度だけ酔っ払いに絡まれたことはあります)、今マイノリティであることは事実です。感情移入したら辛いだろうな、と思ったのです。

見ながら思ったのは主人公バーナムはかなり美化された描かれ方をしている、ということでした。そこには賛否両論があるようですが、私としてはかなり救われました。バーナムが「ユニークな人々」を募集して集まった人に対等に接する姿、そして出演者たちの「笑われるから隠れているのではなくそのままの自分を見てもらうこと」を選び、それを貫く姿を見ていると勇気が湧いてきました。ショーを見にきた観客は怖がることはあっても一度も笑いません。出演者たちのパフォーマンスに感動はします。体の特徴は宣伝には使われましたが、ショーで見せるのは、歌やダンス、アクロバットなどそれぞれの得意分野です。そういう意味では時間が足りずに出演者一人一人を掘り下げることはしなかったのが残念でしたが、仕方がない気もします。

劇中である人がバーナムに言います。「君はショーで、人間にはさまざまな色、大きさ、能力を持った人がいることを見せた」と。映画の中の彼のショーは多様性を見せるだけで、それを取り立てて観客に強調していなかったことにとても好感が持てました。

一度バーナムが盲目になっている時にショーの出演者みんなで歌う「this is me」(予告編に使われている曲です)。それぞれの表情から、彼らが覚悟と信念をもって出演していることが伺えました。自分が一度決めた道を突き進む。辛い時には休んだり挫けるかもしれないけど、信念は変えずに持ち続ける人たちがどれほど輝くかを見た気がします。私も自分で決めた今の道で、覚悟と信念を持って生きたい、と思いました。

それにしても今ほど「差別」に敏感な世の中で、よくこの映画を作れたな、と感心しました。今だからこそ作ったのかもしれませんが。そしてこの映画はロシアでも日本でも作れなかったでしょう。良い意味でも悪い意味でも民族がアメリカほど混じり合っていないのです。マジョリティだった日本での生活から一転、モスクワで暮らして1年半、その間学校でいろんな国の人と会って思うのは、持って生まれた見た目にその人の価値はないということ。たしかに歴史的に色々な国で色々な差別がありました。しかし、今の世の中「〜な人たちを差別するためにこれをしよう」もダメですが、反対に「これをしたら〜な人たちが差別だと感じるかもしれない」と気を使いすぎるのも違う気がしました。見た目にとらわれずに生きていける世の中になれば良いですね。

ストーリーにひねりはないので旦那は「ララランド」の方が好きだったそうですが、私は勇気をもらって幸せでした。水分不足で痛む頭を抱えながらも、映画館をでる時は満面の笑顔だったと思います。良い映画初めでした。

Пока!

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