馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

サマルカンドペーパー

Привет!

楽しかったサマルカンドでの一日も次が最終目的地です。一番初めに訪れたアムール・ティムール廟で聞いたサマルカンドペーパーの工房へ連れて行ってもらいました。

普段サマルカンド市内のタクシーは一回一人3000スム(30円くらい)です。かなり近場であれば1000スムと書いてありますが、その辺りは運転手さんとの交渉次第です。さて、ウルグベク天文台の前でタクシーを拾い、ニギナさんが運転手さんと交渉してくれました。「少し遠いので一人5000スムだそうです。まけてくれませんでした!」とおっしゃっているので、どれくらい遠いのかなあと呑気の考えていると、どんどん市街地から離れていきます。一歩市内から出るとのどかな住宅地なのですが、悪路も悪路、交通量も少ないわけではなく「これ地元の人以外運転できないだろうな」というところを20分近く走ってくれました。これは5000スム要求するわ。

というわけで、サマルカンドペーパーのコニギル・メロス工房に到着しました。

工房の脇には小川が流れており、たくさん白樺も生えていて全く違う国に来たような感覚になります。

そもそもサマルカンドペーパーとは、というところからお話ししますね。世界史を勉強した人は「タラス河畔の戦い」や「製紙法」という用語を聞いたことがあるのではないでしょうか。タラス河畔の戦いという、唐(現在の中国)とアッバース朝(イスラム帝国)が中央アジアの覇権を巡って争った戦争で、唐が負けたことにより中央アジアのイスラム化が広まりました。そして中国人の捕虜の中の製紙職人がいたことにより、ここサマルカンドに紙の作り方が伝わることになった戦いでもあります。

しかし当時、中国で文字を書くときに使われていたのは筆。対してイスラム世界では木の棒や羽根のような先の尖ったものが使われていました。そうすると中国のやり方で作られた紙を使うと破れてしまいます。そこで試行錯誤して独自の技術が発展し、完成したのがこのサマルカンドペーパーだそうです。ティムール廟のように壁の模様で使われたり、水を弾いたり、破れにくかったりとかなり強い紙です。

しかし19世紀には西洋の製紙技術が入って来たことによってこの技術はどんどん消えてしまい、最後の工房が営業を終えてしまいました。今回私たちが訪れたのは1998年にUNESCOの支援のもとにかつての技術を再興して作られた工房です。

私たちが訪れた時も、何人かの人が働いていました。 まず、写真のような釜で桑の枝を煮ます。そして柔らかくなって来たところで、一つずつ、人の手で硬い皮から柔らかい薄皮を剥がしていきます。

お姉さんはナイフを使ってどんどん剥がしていました。あまりにも速いので簡単そうに見えましたが、実際やってみたら手を怪我しそうです。

この薄皮をもう一度煮て、繊維をもっと柔らかくします。 そして次に工房横の小川と水車の出番です。

この建物へ伸びている木の棒が、水車が回るたびに上下して、建物の中で杵の役割をし、よく煮た薄皮の繊維をほぐすのです。

よくほぐれたら、水に溶かします(水を大量に使うので、小川があるのですね)。何か色をつける場合はこの時に。自然由来(果物や野菜など)の色だそうです。そして和紙制作のように、木枠ですきます。 十分水分を落とし、右側の作業台の上で重石を乗せて平らにし、壁や窓に貼り付けて乾燥させます。 乾いた紙を持つお兄さん。お兄さんの左横の板に、まだ乾いていない紙が貼り付けられています。

乾いてもまだでこぼこしているので、動物の角や石、貝殻などを使って一生懸命紙の表面を擦ります。 この作業は私たちもやらせてもらいました。かなり力を入れて擦らなければなりませんが、すでに擦ったところは目に見えてすべすべになるのでやりがいがあってものすごく楽しかったです。

これで完成。左がサマルカンドペーパー、右がコピー用紙です。サマルカンドペーパーはにじまないので、プリンターで印刷もできます。

工房の横にはお土産やさんもあって、本当にさまざまな紙製品が置かれています。ここで定番のノートやポストカードだけではなく、お財布やカードケースなどの小物や紙で作った人形、そしてなんと服まで売られていました!水でダメにならないので、洗濯もできるそうです。

服以外はそこまで単価も高くないので、お土産をたくさん購入。ついでにここで見学料も払いました。おみやげものやさんを出ると、なんとお茶とお菓子まで用意してあります。 景色もいいので、本当にいい気分になります。

ガイドのニギナさんは工房の人と親しく話していたので「お知り合いですか」と聞くと「昔ここでバイトしていたんです」とのこと。いい縁ですね。

さあ、市内へ帰ります。

Пока!

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