馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

発言力

Привет!

ついに携帯の天気予報上では表示されている気温が全て氷点下になりました。さっきも20分ほど外を歩いていただけで、ポケットに入れていた携帯の充電は30パーセントも減っており、帽子をかぶり忘れた頭は痛くなってきました。去年よりも暖かいからといって防寒具を出すのが遅れたようです。

今日は、最近授業に行くたびに考えていることを。この前偶然にもマンツーマン授業になったとき、先生に言われたのです。「いつもより話しているよね」と。そりゃ普通に考えれば生徒が五人いる場合とマンツーマンでは単純計算で話している量は5倍になるはずです。当たり前やん、と言おうとしてハッとしました。いつも、ほとんど話していないのではないか?

もちろんロシア語力のこともあります。単純に周りの人より単語を知らないので、話す量も減ります。他の人の発言の中で知らない単語があればその都度質問するようにしていますが、やはり一回で覚えきれません(自分の努力不足)。ヨーロッパ言語が母国語の人は語尾が違うだけで同じような単語だったりするので、いいなあと思ったりもします。

しかし、先生が言ったのはそういう意味ではありませんでした。映画や演劇の話題の時は一生懸命話そうとしていたのに、他のクラスメイトと政治や宗教の話になると聞き役に回っているではないか、ということだったのです。

別に興味がないわけではありません。他の国の政治体制や宗教の話は知らないことばかりで面白く、ついつい聞いてしまいます。そして話を振られたら答えますが、周りの人を満足させられるほど知識がなく、ちゃんと答えられないのです。 これはロシアで語学学校に通い始めた時からの課題でした。ああ、成長していない…。

時々「早期の英語教育」や「暗記科目の廃止」などの話題を聞くたびに、複雑な心境になります。私も学生時代は英語が好きで、暗記科目が嫌いだったのですが、今は「言語は手段」だということを痛感しています。もちろん言葉を知らなければ込み入った話はできません。でも、その学んだ言葉で何を話すのか?というときに、知識がものを言うのだと思います。「暗記しなくても調べればいいではないか」と思っていましたが、今学校で突然「日本はどう?」と話を振られてから調べても、だれも待ってくれないことに気がつきました。最低限自分の国のことはパッと答えられるようになってから引っ越してくるんだった、と少し後悔しながら今日本のことについて調べています。学校教育で理想的なのは、まず知識を教えて、すぐに覚えた知識を使って生徒が議論をするようなカリキュラムではないかという気がします。どちらかに偏るのではなく、バランスが大事なのではないでしょうか。

バランスといえば…。

今、クラスにイタリア人のRさんがいます。彼は自分の意見をまっすぐ言い、あまり人の意見を聞かないのですが、彼の言い方があまりにも断定的なので少し周りの人は困っていました。「女性はこうだ」「中国人はああだ」「ユダヤ人はこうだ」、その一方でイタリアがどれほど素晴らしい国か私たちに教えてくれます。そんな中、この月曜日から彼より少し年上のイタリア人がもう一人うちのクラスに来ました。彼ははじめの方は静観していましたが、今日ついにかなり激しい言い合いになってしまいました。そして休み時間にその年上のイタリア人は私たちに言います。「彼があんな言い方をすると、イタリア人の印象が悪くなってしまう」と。彼は授業中にRさんにはっきり「肌の色が違っていようが、性別が違っていようが、信じているものが違っていようが、みんな同じ人間だ。どこにでもいい人はいるし悪い人もいる。君が言う良いイタリア人だって戦争になれば人を殺したし、イスラム教徒がみんな怖いわけではない」と言いました。

その彼の言葉を聞きながら、確かにRさんの言うことも分かるけれど、もっとバランスよくいろいろなことに目を向けて知らなければならない、と思っていました。私が意見を振られたときに怖くなるのはここです。自分の意見はあるけれど、もしかしたら他の日本人はそうは思っていないかもしれない。無責任に日本へのイメージをつけてしまうかもしれない。そう思うと発言に躊躇してしまうのですが、これも私の知識不足が原因だと気がつきました。

また、彼の言葉を聞いて思い出した好きな本があります。 梨木香歩さんの「村田エフェンディ滞在土録」です。 明治時代、トルコで研究に励んだ日本人の学者の話なのですが、イギリス人の家政婦やドイツ人、ギリシャ人の学者、トルコ人といった、人種や宗教が異なる人たちとの生活が描かれています。彼らそれぞれが他の人に敬意を持って接しているのが伝わってきて、こうありたいものだ、と思わせてくれます。

今日の宿題は好きな本についてのエッセイなので、今一度この本を読み直してエッセイを書いて、明日みんなの前で自分の考えを発表しようと思います。

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