モスクワ奮闘記

2016年7月末にモスクワに引っ越してきました。

絵画を「読む」

Привет!

機会があったので去年のブログを読み返していたのですが、なんと今の時期にはもうセントラルヒーティングが付いており、コートも解禁されて10月から手袋を解禁しようかな、と書いていました。まだトレンチコートで出歩き、セントラルヒーティングがつく気配もなく、10月に入ったらコートを解禁しようと思っているので、去年に比べると暖かいようです。慣れただけかと思っていました。いや、朝晩の冷えは冗談じゃないくらいなんですが。セントラルヒーティングは8度以下の日が5日続いたらつけるそうなのですが、今の所iPhoneの天気予報によると最高気温が8度の日が4日続いたかと思うと次の日に11度まで上がるようで、なかなか条件が揃わないのですが、いつつけるつもりなのでしょうか。政府の判断基準が最高気温ではなく、1日の平均気温であることを心から願っています。

最近、学校では「モスクワとサンクトペテルブルクの観光案内」というテーマで色々な文法を復習しているのですが、これまで色々と見てきて覚えた単語が沢山あって助かっています。それぞれの町の歴史だけではなく、色々な観光名所についての文章も読んでいると、美術館について書かれたものが多いのです。そこで先生が私たちに尋ねました。「ロシア人の芸術家だけの美術館に行ったことはある?モスクワのトレチャコフ美術館とか、サンクトペテルブルクのロシア美術館とか。どうだった?」この問いに対するフランス人Jさんの答えはこうでした。「トレチャコフにある絵はほとんどが暗くて(色遣いも情景も)あまり好きではなかったけれど、ロシア人の精神や人生に対する姿勢がとてもよくわかって面白かった」。この意見に私はある程度賛成でしたが、同時に「背景にあるお話を知っているともっと面白く見られるよ。暗い色調に隠された細かいところまで見てみると色んなことが見えてくるよ」と付け足しました。

そうやって楽しめるようになったのは、弟が母から預かって、ある本を持ってきてくれたからです。 光文社新書の「名画で読み解く ロマノフ家12の物語」。作者は「怖い絵」シリーズを書いている中野京子さんです。私は「怖い絵」シリーズは読んでおらず、この本も持ってきてもらうまで知らなかったのですが、ロシアにいるなら是非読んでおいて、と渡されてページをめくってみました。

中野さん自身がドイツ文学者ということもあり、ドイツ(当時はプロイセン)とロシアの関わりから始まります。なんと帝政ロシアを300年に渡って存続させ、そして終わらせたロマノフ家はプロイセンから出てきていたのです。そのことに衝撃を受けた後は、もうページをめくる手が止まりませんでした。一度行った博物館であれば弟を一人で行かせ、待っている間のカフェで読みふけります。その結果、3日で読み終わりました。

何と言っても中野さんの紡ぐ文体が私に合っていたこともあり、内容がすぐに入ってくるのです。ロマノフ王朝がどんな風に引き継がれていったか、繰り返される暗殺と策略、絡み合う思惑、そしてそんな中で形成された代々の皇帝の人格までもが分かりやすく書き出されています。

この本を読んだ後でトレチャコフ美術館に弟と訪れた時は、退屈だと思っていた肖像画の部屋でさえもみんな昔からの知り合いのようで親近感が湧きますし、本に出てきた絵画が展示されているところでは感動したあと隅々まで見てしまいました。そうなるとJさんが言っていた「暗い絵」も背景にこんなドラマがあるからこの表情なのか、ということがわかり、興味深くみることができます。

「怖い絵」のインタビューで作者の中野さんはこう言っておられました。「絵画、とりわけ19世紀以前までの絵は「見て感じる」より「読む」のが先と言われます。一枚の絵には、その時代特有の常識や文化、長い歴史が絡み、注文主の思惑や画家の計算、さらには意図的に隠されたシンボルに満ち満ちています。現代の目や感性だけではどうにもならない部分が多すぎるのです」確かに、パッと見て気に入った絵は、美術館を回っても3、4枚です。それ以外は素通りしてしまいがちな私にとって、この感性で見るのではなく「読む」という方法は新しく感じました。

ロシアに近々来る予定の方、行く予定はないけれど興味はあるという方、ロシアに興味はないけれど絵画が好きな方、ただある王家の興亡について知りたいという方、色々な方にオススメの一冊です。個人的に最も驚いたのは詩人プーシキンのおじいさんがエチオピアの黒人だったということでした。どうしてエチオピアからはるばるロシアまで来ることになったかのかは、本編でどうぞ。

ちなみにフランスのブルボン家、オーストラリアのハプスブルク家についての本も書かれているそうです。機会があったら読みたくなりました。世界史は高校生の頃から好きでしたが、テスト用に覚えなくていい今、以前よりもっと興味が湧いて来ました。

Пока!

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