馬耳風風 (ばじ カザフう)

2016年7月末〜 2018年8月 モスクワ/2018年10月〜 カザフスタンのアスタナ

敬語について

Привет!

昨日地下鉄に乗っていると、おばあちゃんと若い男の子が言い争いをしていました。聞いていると、席を譲らなかったとかそういう話のようなのですが、周りの人も男女関わらず男の子を責め始めました。そのうち、男の子がその中の一人の男性を突き飛ばし、あわや暴力事件になるかと思いましたが、周りの人が当事者二人を羽交い締めにしてなんとかその場は収まりました。文字通り「一触即発」の現場です。次の駅で男の子は降りて行き、周りの人は皆また他人に戻りましたが、私はその男の子を責めているときの一体感に驚いていました。全員が口を揃えて「彼女は『年長者』なのだからいうことは聞くべきだ」という言い方をしていたのです。前から感じていましたが、小さい子供はとことん可愛がり、お年寄りは尊敬する、という文化が日本より強い気がします。

先日、漫画『テルマエロマエ』の作者であるヤマザキマリさんのコラムを読みました(こちらはその続きです)。詳しくは読んでもらうのが一番なのですが、テレビで流れている外国人インタビューの吹き替えがあまりにもフレンドリーすぎないか、というお話です。記事内では英語とイタリア語について書かれていますが、先述したようなお年寄りを敬う文化のあるロシアでも、敬語は存在します。 ロシア語では他のヨーロッパ言語によくあるように、主語によって動詞の形が変わります(表は「働く」という動詞の活用です)。私(я)、君(ты)、彼・彼女(он・она)、私達(мы)、君達(вы)、彼ら(они)の六種類なのですが、面白いのが「君(ты)」を複数形にすると、つまり「君達(вы)」にすると、丁寧な表現である「あなた」になるのです。相手が一人でも「вы」とそれに伴う動詞の形を使うと敬語を使うことになります。

日本のテレビを見て育ってきたからか、少しロシア語が分かり始めた頃は周りの人が話す内容は脳内で「〜なんだよ!」「〜してね!」という陽気な語尾で訳されていました。なかなかイメージとして敬語が出てこないのです。私がそう思ってしまった原因はおそらく2つあります。1つ目は、先ほども書いたように「相手のことを言う」時にしか丁寧に言っているかどうかがわからないのです。日本語ほど「謙譲語」がはっきりしていないので、自分のことを話す時に相手が言った言葉が「〜が大好きです」なのか「〜が大好きなんだ」なのかがわからない。すると親しみやすい方にしてしまったのかな、と思います。

2つ目はただの勉強不足なのですが、相手が話していることをパッと理解しようとすると、重要な単語だけを拾ってしまいます。主に名詞と動詞の語幹だけで何が言いたいのかある程度予想はつきます。そして脳内で文章として整理する時には単語の間を埋める言葉(助詞や助動詞ですね)は思わず普段使っているものになってしまったのではないか、と思われます。

このことに気がつき、きちんと相手の語尾まで聞き取る余裕が出てきてからはこのブログに書くときもきちんと敬語かそうでないかを使い分けるようにしています。ここで、よく読んでくださっている方は気づいたかもしれません。…それにしてはフレンドリーな表現を使っていることが多くない?

そうなんです。なぜか店員さんと話すと50パーセントくらいの確率で「君(ты)」を使われます。私はちゃんと「あなた(вы)」を使っているのに。これは子供を可愛がる、というもう1つの文化に触れているのかもしれません。そんなに子供に見えますか。この間トイレの修理に来てくれた業者さんが「あなた」を使った時には少し感動しそうになりました。

語学学校では先生に対しても「君」でいいよ、と言われています。新しい先生になった時も「あなた」で話しかけると「そんな年寄りじゃないからやめて」と言われました(大学など年配の先生が多いところでは「あなた」にしないといけないそうです)。おかげさまで私は「君」の方を使い慣れてしまい、お店や初対面の人に思わず使ってしまいそうになります。慌てて「今ロシア語勉強中で…!」と言い訳して、なんとか笑って許してもらっていますが、この言い訳はいつまで有効なのでしょうか。

かつてレストランで、横に座った人たちが「あの人、まだ会って2日目なのに君(ты)を使ってきたの」と誰かのことを話しているのを聞いてしまったことがあるので充分気をつけたいと思います。

Пока!

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